ホームページ制作の契約書で確かめること|著作権・検収・解約
制作会社から契約書が届いた。けれども、条文が多く、どこを見ればよいのか分からない。見積もりの金額と納期だけ確かめて署名してしまい、後から「データを渡してもらえない」「別の会社に直してもらえない」と困るケースは少なくありません。
ホームページの制作の契約でもめやすいのは、作業の範囲、検収、著作権、名義、途中でやめるときの扱いです。この記事では、契約書で確かめることを項目ごとに説明します。法律の条文は e-Gov 法令検索で確かめた内容にもとづいていますが、個別の契約の判断は、必要に応じて弁護士などの専門家に相談してください。
契約書で確かめることの一覧
| 項目 | 確かめること |
|---|---|
| 作業の範囲 | ページ数、原稿や撮影を含むか、修正の回数、対応する機器 |
| 費用と支払い | 総額、支払いの時期と割合、追加の費用の決め方 |
| 納期 | 公開の日、遅れたときの扱い、発注する側の作業が遅れたときの扱い |
| 検収 | 期間、みなしの受け取り、不具合の直し方 |
| 著作権 | 誰に属するか、27条・28条の権利、著作者人格権、実績としての掲載 |
| 素材の権利 | 写真、書体、イラストの使用の条件 |
| 名義 | ドメイン、サーバー、各種のアカウント |
| 不具合の扱い | 公開の後、いつまで、何を直してもらえるか |
| 途中でやめるとき | それまでの作業の費用、データの扱い |
| 秘密と個人情報 | 預けた情報の扱い |
作業の範囲
もめごとのいちばん多い原因が、「どこまでが契約の範囲か」の食い違いです。契約書や、契約書に付いている仕様書・見積書で、次のことが決まっているかを確かめます。
- ページの数と、それぞれのページの中身
- 原稿の作成、撮影、画像の作成を含むか
- デザインの案の数と、修正の回数の上限
- スマートフォンへの対応、確かめるブラウザ
- 問い合わせフォームなどの機能
- 公開の作業(サーバーとドメインの設定)を含むか
「一式」とだけ書かれている場合は、何が含まれるかを書面でもらいます。範囲が決まっていないと、「それは追加の作業です」と言われたときに反論できません。
費用と支払い
- 総額と内訳:見積もりと契約書の金額が同じか
- 支払いの時期:着手のときに一部、公開の後に残り、などの割合
- 追加の費用の決め方:範囲の外の作業が出たとき、事前に見積もりを出してから進めるか
追加の作業を、見積もりを出さずに進めてから請求する、という形は避けます。「追加の作業は、事前に書面で見積もりを出し、発注する側が承諾してから行う」と書かれていると安心です。
納期
納期は、制作会社の都合だけで遅れるとは限りません。原稿や写真の提出が遅れたときに納期がどうなるかも決めておきます。発注する側の作業の締め切りが書かれている契約なら、社内の段取りに組み込みます。
検収
検収は、納品されたものが契約で決めた内容のとおりにできているかを確かめ、受け取ることを認める手続きです。
- 検収の期間:納品から何日以内に確かめるか
- みなしの受け取り:期間内に連絡しなかったとき、受け取ったものとみなすか
- 不具合があったとき:直してもらってから、もう一度確かめる流れか
検収が、支払いの時期や、著作権の移転の時期の基準になっていることも多くあります。期間内に、全ページと問い合わせフォームを確かめられるよう、社内の担当と日程を先に決めておきます。
著作権
ホームページのデザイン、文章、画像には著作権があります。何も決めなければ、作った側(制作会社や、その依頼を受けたデザイナー)に著作権が残ります。
| 確かめること | 見るところ |
|---|---|
| 著作権を誰に移すか | 発注する側に譲渡するか、制作会社に残して使うことを認める形か |
| 27条・28条の権利 | 譲渡の対象に特に書かれているか |
| 著作者人格権 | 行使しないと決めているか |
| 移す時期 | 検収のときか、支払いが済んだときか |
| 実績としての掲載 | 制作会社が自社の事例として載せてよいか |
著作権法61条2項では、著作権を譲渡する契約で、27条(翻訳・翻案などの権利)と28条(二次的著作物の利用に関する権利)が譲渡の目的として特に書かれていないときは、これらの権利は譲渡した側に残ると推定されます。後から別の会社にデザインを直してもらう可能性があるなら、「著作権(著作権法第27条及び第28条の権利を含む)を譲渡する」と書かれているかを確かめます。
また、著作者人格権(20条の同一性保持権など)は、作った人に属し、譲渡できません。そのため、「著作者人格権を行使しない」と定める形がよく使われます。これが無いと、デザインを変えるときに作った人の意に反するとして問題になるおそれがあります。
著作権の考え方は、ロゴについて説明したロゴの著作権は誰のものかも参考になります。
素材の権利
写真素材、書体、イラストなど、制作会社が用意した素材には、それぞれ使用の条件があります。
- 素材の使用の条件を、発注する側が引き継げるか
- 制作会社との契約が終わった後も、同じ素材を使い続けられるか
- 印刷物など、ホームページ以外でも使えるか
写真素材の条件は素材写真の使い方と注意点で、書体はフォントのライセンスで注意することで説明しています。
ドメインとサーバーの名義
ドメイン、サーバー、Googleビジネスプロフィール、アクセス解析などのアカウントを、誰の名義で持つかを契約書に書いておきます。制作会社の名義のままだと、制作会社を変えるとき、連絡が取れなくなったときに、ホームページもメールも移せなくなるおそれがあります。考え方はドメインは誰の名義にするべきかで説明しています。
不具合の扱い
公開の後に不具合が見つかったとき、直してもらえるかどうかは契約で決まります。
民法では、請負(仕事を完成させることを約束し、その結果に報酬を払う契約。632条)の目的物が契約の内容に合わないとき、注文者は、その不適合を知った時から1年以内に請負人に通知しないと、直してもらうことの請求、報酬の減額の請求、損害賠償の請求、契約の解除ができなくなると定められています(637条)。契約書では、これとは違う期間や範囲が決められていることも多いので、次のことを確かめます。
- 公開の後、いつまで無料で直してもらえるか
- 何を「不具合」とするか(契約の内容と違う所か、ブラウザの版の変更による崩れも含むか)
- 連絡の方法と、直すまでの日数
途中でやめるとき
事情が変わり、制作を途中でやめることもあります。民法では、請負人が仕事を完成させる前であれば、注文者は損害を賠償していつでも契約を解除できると定められています(641条)。契約書では、次のことを確かめます。
- 途中でやめるとき、それまでの作業の費用をどう計算するか
- 途中までのデザインや原稿を受け取れるか
- 預けた写真や原稿を返してもらえるか
契約の前に制作会社へ聞くこと
- 作業の範囲を書いた仕様書や見積書は、契約書の一部になるか
- 追加の作業は、事前に見積もりを出してから進めるか
- 著作権は、27条・28条の権利を含めて移るか。著作者人格権は行使しないか
- ドメイン、サーバー、各種のアカウントは、発注する側の名義にできるか
- 公開の後、いつまで、何を無料で直してもらえるか
- 途中でやめるときの費用の計算の仕方
答えは口頭ではなく、契約書か、メールなどの書面で残します。
Lapisデザインラボの著作権の扱いはお取引の条件とよくある質問に、ドメインとアカウントの名義の扱いは月額サービスの条件に載せています。
よくある質問
ホームページの著作権は、契約書にどう書いてあればよいですか。
完成したデザインや文章を、自社で使い続け、後から別の会社に直してもらうこともあるなら、著作権を発注する側に移す(譲渡する)と書かれているかを確かめます。著作権法61条2項では、譲渡の契約で27条(翻訳・翻案などの権利)と28条(二次的著作物の利用の権利)が特に書かれていないと、これらの権利は譲渡した側に残ると推定されます。「著作権(著作権法第27条及び第28条の権利を含む)」のように書かれているかを見ます。
検収とは何ですか。契約書のどこを見ればよいですか。
納品されたものが、契約で決めた内容のとおりにできているかを発注する側が確かめ、受け取ることを認める手続きです。契約書では、検収の期間(納品から何日以内か)、期間内に連絡しなかったときに受け取ったものとみなすか、不具合が見つかったときの直し方を確かめます。検収が支払いや著作権の移転の時期の基準になっていることも多くあります。
公開した後に不具合が見つかったら、直してもらえますか。
契約の内容によります。民法では、請負の仕事の目的物が契約の内容に合わないとき、注文者はその不適合を知った時から1年以内に請負人に通知しなければ、直してもらうことの請求などができなくなると定められています(637条)。契約書でこれと違う期間や範囲が決められていることも多いので、公開の後、いつまで、どんな不具合を無料で直してもらえるかを確かめます。