ロゴの著作権は誰のものか|制作会社との契約で確認すること
外部のデザイナーや制作会社に頼んで作ったロゴは、代金を払えば当然自社のもの。そう思われがちですが、著作権の扱いは契約で決めない限り、自動的には移りません。のちにロゴを少し直したい、別の会社に看板を頼みたい、商標登録したい、という場面で初めて問題になります。
この記事では、依頼して作ったロゴの著作権が誰のものになるのかを著作権法の条文に沿って整理し、契約書で確かめておくべきことを一覧にします。契約の条文は一般的な考え方の説明です。個別の契約の判断は弁護士に相談してください。
何もしなければ、著作権は作った人に残る
著作権法では、著作物を創作した人を「著作者」と呼び(第2条)、著作者は著作者人格権と著作権を持ちます(第17条)。これらは登録などの手続きをしなくても、作った時点で自動的に生まれます。
つまり、外部のデザイナーが作ったロゴの著作者は、原則としてそのデザイナーです。社員が仕事として作り、会社の名義で公表するものは会社が著作者になる決まり(第15条、職務著作)がありますが、外注したロゴには通常あてはまりません。
なお、ロゴがそもそも著作権法の保護を受ける「著作物」(思想または感情を創作的に表現したもの)にあたるかどうかは、個別に判断されます。文字を少し整えただけのロゴでは認められにくい場合もあります。だからこそ、著作物にあたるかどうかに関係なく、契約で使い方と権利の扱いをはっきりさせておくことが大切です。
契約で決める3つのこと
1. 著作権の譲渡
著作権は、全部でも一部でも譲渡できます(第61条第1項)。ロゴを自社で自由に使い続けるなら、全部の譲渡を受けるのが基本です。いつ移るのか(代金の支払い完了時など)も書いておきます。
2. 第27条・第28条の権利を明記する
ここが見落とされやすい点です。第61条第2項は、譲渡の契約で第27条(翻訳・翻案などの権利)と第28条(二次的著作物の利用に関する権利)が譲渡の対象として特に書かれていないと、これらは譲渡した側に残ると推定する、と定めています。
ロゴでいえば、形を少し変えて新しい版を作る、ロゴをもとに別の図案を作るといった使い方に関わります。「著作権を譲渡する」とだけ書かれた契約では、この部分が相手に残っていると推定されるおそれがあります。**「著作権(著作権法第27条及び第28条に規定する権利を含む)を譲渡する」**のように書かれているかを確かめてください。
3. 著作者人格権を行使しないこと
著作者人格権は、公表するかどうかを決める権利、名前を表示するかどうかを決める権利、意に反して改変されない権利(同一性保持権、第20条)などを指します。これは著作者だけのもので、譲渡できません(第59条)。
そのため契約では、「著作者人格権を行使しない」と約束してもらう形をとるのが一般的です。これが無いと、ロゴの色を変えた、縦横の比率を変えたといった改変について、理屈のうえでは著作者の同意が要る状態が残ります。
権利の状態ごとに、できること・できないこと
| 契約の状態 | 自社で使う | 別の会社に看板や印刷を頼む | 形を手直しする | 商標登録の出願 |
|---|---|---|---|---|
| 譲渡の定めが無い(利用の許しだけ) | 許された範囲で可 | 範囲によっては確認が要る | 著作者の同意が要る | 揉めごとの種になりやすい |
| 「著作権を譲渡」とだけ書いてある | 可 | 可 | 第27条・第28条が残ると推定され、不安が残る | 可能だが確認が望ましい |
| 第27条・第28条を含めて譲渡+人格権の不行使 | 可 | 可 | 可 | 進めやすい |
譲渡ではなく「利用許諾」の契約もある
制作会社によっては、著作権は自社に残したまま、お客様に使うことを許す「利用許諾」の形をとることがあります。これ自体が悪いわけではありませんが、許された範囲の外では使えません。利用許諾の契約なら、少なくとも次の点が書かれているかを確かめます。
- 使える媒体(印刷物・ホームページ・看板・商品など)と地域、期間
- 他の会社に印刷や制作を頼むときに、データを渡してよいか
- 形や色を変えてよいか
- 商標登録の出願をしてよいか
- 制作会社との取引が終わったあとも使い続けられるか
長く使うロゴで、将来の用途が読み切れないなら、譲渡の形のほうが扱いやすくなります。
よくある場面ごとの考え方
知り合いのデザイナーに無償で作ってもらった
お金を払っていなくても、考え方は同じです。作った人が著作者で、譲渡の約束が無ければ著作権は作った人に残ります。関係が良いうちに、簡単な書面で譲渡と人格権の不行使を確かめておくと、後で気まずい思いをせずに済みます。関係が悪くなってからでは頼みにくくなります。
社員がロゴを作った
社員が会社の指示で仕事として作り、会社の名義で公表するロゴは、契約や就業規則に別の定めが無い限り、会社が著作者になります(第15条)。ただし、社員が私的に作ったものを持ち込んだ場合や、業務委託の人が作った場合はあてはまりません。誰がどの立場で作ったのかを記録しておきます。
デザイナーが自分の実績として公開したい
制作者が作品を実績として紹介すること自体は、よくあることです。困るのは、公表前の新商品のロゴが先に出てしまう場合です。公開してよい時期や範囲に希望があるなら、契約の段階で伝えて書いておきます。
採用しなかった候補案が、別の会社のロゴに使われていた
採用しなかった案の権利は、制作者に残るのが一般的です。自社の業界の近くで使われると困る事情があるなら、あらかじめ相談しておきます。
契約書の確認リスト
ロゴ制作の契約書(または発注書・利用規約)を受け取ったら、次の点を読みます。
- 著作権を譲渡するのか、**使うことを許す(利用許諾)**だけなのか
- 譲渡に第27条・第28条の権利を含むと書かれているか
- 著作権が移る時期(納品時か、代金の支払い完了時か)
- 著作者人格権を行使しないと書かれているか
- 採用しなかった候補案の扱い(制作者に残るのが一般的。流用されたくない事情があれば相談する)
- 制作者が制作実績として紹介してよいか(公表の時期や範囲を決めたい場合は書く)
- 第三者の権利(他社のロゴ・書体・素材)を侵害していないことの保証と、問題が起きたときの扱い
- 使われている書体や素材のライセンスの扱い(書体はフォントのライセンスを参照)
- 受け取るデータの形式(ロゴのデータ形式を参照)
格安のロゴ作成サービスやクラウドソーシングでは、規約で権利の扱いが決まっていることが多いので、申し込む前に規約のこの部分を読んでおきます(注意点は安いロゴで起きることにまとめています)。
すでに作ったロゴの権利があいまいなとき
昔作ったロゴで、契約書が見つからない、譲渡の定めが無かったという場合は、次の順に進めます。
- 制作したデザイナーや会社に連絡がつくなら、改めて譲渡の書面(覚書)を交わす
- 連絡がつかない場合や、条件で合意できない場合は、弁護士に相談する
- ロゴの作り直しや商標の出願を考えているなら、その前に権利を整理する(出願はロゴの商標登録は必要かを参照)
Lapisデザインラボでは、採用いただいたロゴ・デザインの著作権(第27条・第28条の権利を含みます)を代金のお支払い完了をもって譲渡し、著作者人格権は行使しないことを取引の条件としてサービスと料金のページに載せています。
よくある質問
代金を払ったのだから、ロゴの著作権は自動的にこちらのものになりますか。
なりません。代金の支払いと著作権の移転は別の話で、著作権を移すには譲渡の約束が必要です。契約書に譲渡の定めが無いと、著作権はデザイナーや制作会社に残ったままと考えるのが基本です。
「著作権を譲渡する」とだけ書いてあれば十分ですか。
十分とは言えません。著作権法第61条第2項により、第27条(翻案など)と第28条(二次的著作物の利用)の権利が譲渡の対象として特に書かれていないと、それらは譲渡した側に残ると推定されます。ロゴを後から手直しする可能性を考えると、これらの権利を含むことを明記しておくのが安全です。
著作者人格権とは何ですか。譲ってもらえますか。
著作者の名誉や思い入れを守る権利で、公表・氏名の表示・改変に関わる権利が含まれます。著作権法第59条で譲渡できないと定められているため、契約では「行使しない」と約束してもらう形をとるのが一般的です。