ブランドガイドラインとは|中小企業が決めておくべき項目と例
名刺は落ち着いた紺色なのに、ウェブサイトは明るい水色、チラシはまた別の青――。制作物を発注する相手が変わるたびに色や書体が少しずつずれていく、ということは中小企業でよく起こります。原因の多くは、ロゴや色の「正しい使い方」が、発注する本人の頭の中にしかないことです。
ブランドガイドラインは、ロゴ・色・書体の使い方をまとめた文書で、この「頭の中にしかないルール」を誰でも参照できる形にするものです。この記事では、何を書けばよいか、どの項目が誰の役に立つのかを、中小企業が実務で使える範囲でまとめます。
ブランドガイドラインとは何か
ブランドガイドラインは、会社のロゴ・色・書体・写真のトーンなど、見た目に関わる要素の使い方を1つの文書にまとめたものです。似た言葉に「ロゴレギュレーション」がありますが、こちらはロゴの使い方(最小サイズ、余白、禁止事項)だけを指すことが多く、ブランドガイドラインはそれを含む、より広い範囲のルールを指します。
作る目的は、主に次の3つです。
- 見た目のばらつきを防ぐ:名刺・チラシ・ウェブサイトを別々の業者に頼んでも、同じ会社に見えるようにする
- 引き継ぎをしやすくする:担当者が変わっても、色や書体の値を探し直さずに済む
- 外部の制作者に説明する手間を減らす:新しく依頼する制作会社やデザイナーに、都度口頭で説明しなくてよくなる
ブランドガイドラインに書く項目
中小企業が決めておくべき主な項目は次のとおりです。
| 項目 | 内容 | 決めておくと助かる場面 |
|---|---|---|
| ロゴの使用規定 | 最小サイズ、余白(クリアスペース)、禁止事項 | 印刷物やウェブサイトでロゴが小さくつぶれたり、変形されたりするのを防ぐ |
| コーポレートカラー | RGB・CMYK・HEXの数値 | 印刷物とウェブサイトで色味がずれるのを防ぐ |
| 書体(フォント) | 和文・欧文それぞれの指定書体 | 制作者が変わっても文字の印象が変わらない |
| 写真・イラストのトーン | 明るさ、色味、人物の有無など | 素材写真を選ぶときの基準になる |
| 文章のトーン | 敬体か常体か、言葉遣いの方向性 | 誰が書いてもチラシやSNSの文章の印象がそろう |
| 展開例 | 名刺・封筒・のぼりなどへの当てはめ方 | 新しい印刷物を作るときに迷わない |
すべてを一度に完璧にそろえる必要はありません。まずはロゴとコーポレートカラーの2項目だけでも文書にしておくと、効果の大半を得られます。
ロゴの使用規定で決めること
ロゴは、使う場面によって縮小されたり、背景の色が変わったりします。そこで、次のような最低限のルールを決めておきます。
- 最小サイズ:これより小さくすると文字や形がつぶれる、という下限の大きさ
- 余白(クリアスペース):ロゴの周囲に、他の文字や図を置かない範囲
- 禁止事項:縦横の比率を変える、色を変える、影や縁取りを付ける、回転させる、といった避けたい使い方
ロゴ制作の打ち合わせでこれらの意図(なぜその余白が必要か、なぜこの色でなければならないか)を聞いておくと、ガイドラインに落とし込みやすくなります。ロゴ制作の進め方自体はロゴ制作の流れと期間の記事で詳しく扱っています。
色の指定で決めること
コーポレートカラーは、1つの色名や見た目だけでなく、RGB・CMYK・HEXの3種類の数値で記録しておきます。理由は、画面(ウェブサイトやSNS)と印刷物では発色の仕組みが違うためです。
- RGB / HEX:画面表示用。ウェブサイトやパワーポイントの資料で使う
- CMYK:印刷用。名刺やチラシなど、紙に印刷する制作物で使う
数値を記録せずに「この色」とだけ伝えると、制作者や印刷会社によって微妙に色味が変わってしまいます。メインカラーだけでなく、文字用の濃い色、背景用の薄い色など、よく使う組み合わせも一緒に記録しておくと実務で使いやすくなります。
書体の指定で決めること
書体は、和文(日本語)と欧文(英数字)をそれぞれ指定します。特に次の点を決めておくと、制作物ごとのばらつきを防げます。
- 見出し用と本文用で書体を分けるか、同じにするか
- ウェブサイトで使うウェブフォントと、印刷物で使う書体を揃えるか
- 太字・細字をどの場面で使い分けるか
書体はライセンスによって商用利用の範囲が異なるため、ガイドラインには書体名と合わせて、どのライセンスで使用できるかも記録しておくと、後から別の制作者が同じ書体を使うときに確認しやすくなります。
中小企業にとって必要なレベル
大企業のブランドガイドラインは数十ページに及ぶこともありますが、従業員数名〜数十名程度の会社であれば、そこまでの分量は不要です。目安は次のとおりです。
- 簡易版(A4数枚):ロゴの使用規定とコーポレートカラーの数値だけをまとめたもの。まずはここから始める
- 標準版:簡易版に書体の指定、写真・文章のトーンを加えたもの。名刺・チラシ・ウェブサイトを複数の業者に発注する会社に向く
- 展開版:標準版に、封筒・のぼり・車両ラッピングなど、具体的な制作物への当てはめ例を加えたもの。展開する制作物の種類が多い会社に向く
いきなり展開版を目指す必要はなく、必要になった項目から足していく形で問題ありません。
いつ作るか
最も作りやすいタイミングは、ロゴが完成した直後です。ロゴを手がけた制作者が、色の値や使い方の意図を最もよく分かっているためです。すでにロゴがあり、ガイドラインだけが無い場合は、名刺・封筒・ウェブサイトなど既存の制作物を洗い出し、実際に使われている色や書体を確認するところから始めます。
社名やロゴを長く使っていく予定であれば、このタイミングで商標登録の要否も検討します。すでに似た商標が登録されていないかは、特許庁のデータベース(J-PlatPat)で確認できます。
良い例・悪い例
- 良くない例:「メインカラーは青」とだけ伝え、具体的な数値を残さない
- 良い例:「メインカラー:HEX #1A3C6E/CMYK C90 M60 Y10 K30」のように数値で記録する
- 良くない例:ロゴの余白や最小サイズを決めず、担当者の感覚で毎回サイズを調整する
- 良い例:最小サイズと余白を文書に残し、新しい制作物でもそのまま参照できるようにする
つまずきやすい点
- 文書を作って終わり、社内で共有されない:制作物を発注するときに毎回参照する運用にする
- 色の数値を記録し忘れる:ロゴ制作の完了時に、RGB・CMYK・HEXの3種類をまとめて受け取っておく
- 項目を増やしすぎて更新されなくなる:まずはロゴとコーポレートカラーの2項目から始め、必要に応じて足す
- 外部の制作者に渡さない:新しい業者に発注するときは、打ち合わせの初期段階でガイドラインを共有する
まとめ
- ブランドガイドラインは、ロゴ・色・書体の使い方をまとめ、制作物の見た目のばらつきを防ぐ文書
- 最低限、ロゴの使用規定とコーポレートカラーの数値(RGB・CMYK・HEX)から始めるとよい
- 色は画面用(RGB・HEX)と印刷用(CMYK)の両方を記録する
- 中小企業には簡易版(A4数枚)で十分な場合が多く、必要な項目から足していけばよい
- 作りやすいタイミングはロゴが完成した直後
名刺やチラシを複数の制作物として揃えていく際は、ブランドガイドラインがあると発注のたびに色や書体を説明する手間が省けます。Lapisデザインラボでは、ロゴ制作とあわせたブランドガイドラインの作成も承っています。詳しくはプランと料金をご覧ください。
色・書体・写真の記事
よくある質問
ブランドガイドラインとロゴレギュレーションは同じものですか。
ロゴレギュレーションは、ロゴの使い方(最小サイズや余白、禁止事項)だけをまとめたものです。ブランドガイドラインは、それに加えて色・書体・写真の選び方など、見た目全体のルールを含む、より広い範囲の文書を指します。
小さな会社でもブランドガイドラインは必要ですか。
1人や数人の会社であれば、A4数枚の簡易版で十分です。ロゴの使用ルールとコーポレートカラーのRGB・CMYK・HEX値だけでも文書にしておくと、名刺やチラシ、ウェブサイトを別々の業者に頼んだときに見た目がばらつくのを防げます。
ブランドガイドラインはいつ作ればよいですか。
ロゴが完成したタイミングが最も作りやすい時期です。ロゴのデザインを決めた制作者が、使い方の意図や色の値を最もよく分かっているためです。後から作る場合は、既存の印刷物やウェブサイトを見比べて、実際に使われている色や書体を洗い出すところから始めます。