ホームページのアクセシビリティ|合理的配慮の義務化とサイトでやること
「2024年4月からホームページのアクセシビリティ対応が義務になった」という話を聞いて、自社のサイトも直さなければいけないのか気になっている担当者は多いと思います。アクセシビリティとは、高齢の人や障害のある人を含め、誰もが情報を得たり操作したりできることを指します。
結論からいうと、2024年4月1日に義務になったのは、障害のある人から求めがあったときに個別に対応する「合理的配慮の提供」です。ホームページを前もって使いやすく整えることは「環境の整備」に当たり、努力義務という位置づけです。ただ、サイトが使いにくいと個別の対応が増えるので、作り直しの機会に整えておく意味は大きいといえます。
この記事では、障害者差別解消法の改正の中身、合理的配慮と環境の整備の違い、規格である JIS X 8341-3:2016 の考え方、まず確かめるチェック項目、作り直しで制作会社に伝えることを、内閣府・デジタル庁・総務省・W3C の公表資料(2026年10月時点で公開されているもの)にそって説明します。この記事は一般的な説明で、個別の判断は弁護士などの専門家や、内閣府・お住まいの自治体の相談窓口に確かめてください。
2024年4月1日の改正で変わったこと
障害者差別解消法(障害を理由とする差別の解消の推進に関する法律)は、令和3年6月4日に公布された改正法(令和3年法律第56号)で改められ、2024年(令和6年)4月1日に施行されました。
いちばん大きな変更は、事業者による合理的配慮の提供が、努力義務から義務に改められたことです(8条2項)。条文は、事業者は、障害者から社会的障壁の除去を必要としている旨の意思の表明があった場合に、その実施に伴う負担が過重でないときは、必要かつ合理的な配慮をしなければならない、という形になりました。
対象になる「事業者」について、内閣府の基本方針(令和5年3月14日閣議決定)は、営利・非営利、個人・法人の別を問わず、同種の行為を反復継続する意思をもって行う者だと説明しています。個人事業者や、社会福祉法人・特定非営利活動法人も含まれ、対面かオンラインかというサービスの形も問わないとしています。「中小企業だから対象外」ということはありません。
サイトの改良は「環境の整備」にあたる
基本方針は、合理的配慮と環境の整備を次のように分けています。
| 区分 | 内容 | 法的な位置づけ |
|---|---|---|
| 合理的配慮の提供 | 特定の障害者から求めがあったときに、個別の状況に応じて行う対応 | 義務(負担が過重でない範囲) |
| 環境の整備 | 不特定多数の障害者を対象に、前もって行う改善。施設のバリアフリー化や、情報アクセシビリティの向上など | 努力義務 |
基本方針には、ホームページにかかわる例がそのまま載っています。オンラインの申し込みに使うウェブサイトが利用しづらく、手続きの支援を求められたときに、電話や電子メールで対応するのが合理的配慮の提供で、その後、不便を感じることがないようにウェブサイトを改良するのが環境の整備だ、という例です。
つまり、今すぐ求められているのは、サイトが使えない人から申し出があったときに、ほかの方法で応じられる体制です。そのうえで、サイトそのものを使いやすくしておけば、その都度の個別対応が減ります。基本方針も、環境の整備は中・長期的なコストの削減・効率化にもつながると述べています。
JIS X 8341-3:2016 と適合レベル
サイトのアクセシビリティの物差しとして日本で使われているのが、日本産業規格 JIS X 8341-3:2016(高齢者・障害者等配慮設計指針 第3部:ウェブコンテンツ)です。平成28年3月22日に改正されたもので、国際規格 ISO/IEC 40500:2012 と一致しており、その中身は W3C(ウェブの標準を作る団体)の WCAG 2.0 そのものです。
達成基準は、A・AA・AAA の3つのレベルに分かれています。A がもっとも基本的なもので、AA は A に加えて満たすもの、AAA はさらに高い水準です。W3C は WCAG 2.0(2008年12月)の後に 2.1(2018年6月)と 2.2(2023年10月)を公表していて、2.2 に適合するコンテンツは 2.1 と 2.0 にも適合すると説明しています。
公的機関は、総務省の「みんなの公共サイト運用ガイドライン」にもとづき、JIS X 8341-3:2016 の適合レベル AA への準拠を目標にしています。たとえば総務省自身のウェブアクセシビリティ方針(2026年10月時点)も、AA の基準を満たすことを掲げています。民間の会社に法律で決まったレベルはありませんが、作り直しのときに目安を決めるなら、AA を基準に考えるのが一般的です。
「準拠」「一部準拠」のような対応の度合いの書き方は、ウェブアクセシビリティ基盤委員会(JIS の原案を作った団体)のガイドラインで決められています。「準拠」と書くには、規格の試験の方法にそって確かめた結果が必要になるので、試験をしていない段階で「JIS 準拠」とうたうのは避けます。
まず確かめるチェック項目
WCAG 2.0(JIS X 8341-3:2016)の達成基準のうち、会社のサイトでよく問題になるものを並べました。カッコ内は達成基準の番号とレベルです。
| 確かめること | 見るポイント |
|---|---|
| 画像の代替テキスト(1.1.1・A) | 意味のある画像に、内容を伝える説明の文が付いているか。文字を画像にしていないか |
| 動画の字幕(1.2.2・A) | 音声のある動画に字幕があるか |
| 見出しと構造(1.3.1・A) | 見た目だけでなく、見出しや表、リストとして正しく作られているか |
| 色だけに頼らない(1.4.1・A) | 「赤い項目は必須」のように、色だけで情報を伝えていないか |
| 文字のコントラスト(1.4.3・AA) | 文字と背景のコントラスト比が 4.5:1 以上か。大きな文字は 3:1 以上 |
| 拡大(1.4.4・AA) | 200%に拡大しても読め、操作できるか |
| キーボード操作(2.1.1・A) | マウスを使わず、キーボードだけで全部の操作ができるか |
| ページのタイトル(2.4.2・A) | ページごとに内容が分かるタイトルが付いているか |
| リンクの文言(2.4.4・A) | 「こちら」だけでなく、行き先が分かる文言になっているか |
| フォーカスの見え方(2.4.7・AA) | キーボードで移動したとき、今どこにいるかが見えるか |
| 入力欄の説明(3.3.2・A) | フォームの入力欄に、何を入れるかの説明(ラベル)があるか |
| 入力の誤りの伝え方(3.3.1・A) | 誤りがあったとき、どこがどう違うかを文字で知らせているか |
コントラストは、ブランドの色を決めるときから効いてきます。薄い灰色の文字や、写真の上に白い文字を重ねたデザインは、4.5:1 を下回りやすいので、コーポレートカラーを決める段階で文字に使える組み合わせを確かめておくと、後で直す手間が減ります。
担当者でもできる確かめ方として、マウスを置いて Tab キーだけでページを進めてみる、ブラウザで200%に拡大してみる、コントラストを測るツールで文字色と背景色を確かめる、スマートフォンの読み上げ機能でページを聞いてみる、といった方法があります。正式に「準拠」をうたうなら、規格の附属書にある試験の方法にそって、ページ単位で試験をします。
作り直しのときに制作会社へ伝えること
作り直しの機会に整えるなら、最初の依頼の段階で次のことを伝えておくと、見積もりと仕上がりの食い違いを防げます。
- 目標にするレベル(例:JIS X 8341-3:2016 の AA を目安にする)
- 対象にするページの範囲(全ページか、トップや問い合わせなど主なページか)
- 試験をするかどうか、するなら誰がどの方法でするか
- 公開した後に、更新する担当者が守ること(画像を載せるときの代替テキストなど)
- サイトに「ウェブアクセシビリティ方針」のページを置くかどうか
方針のページを置く場合は、総務省などの公的機関の方針が参考になります。項目の例としては、対象とする範囲、目標とする適合レベルと対応度、例外とするページ、試験の結果、問い合わせの窓口があります。そのまま写すのではなく、自社で実際にしていることに合わせて書きます。
あわせて、サイトが使えない人のために、電話・メール・フォームなど複数の連絡の手段を案内しておくことも大切です。合理的配慮の申し出の入口になるからです。
作り直しの進め方はホームページのリニューアルの進め方、フォームの作り方は問い合わせフォームの項目の決め方、色の決め方はコーポレートカラーの決め方、依頼の資料のまとめ方はホームページの提案依頼書(RFP)もあわせてご覧ください。Lapisデザインラボでのホームページの制作の内容は、料金プランにまとめています。
よくある質問
2024年4月から、中小企業のホームページもアクセシビリティ対応が義務になったのですか。
2024年4月1日に義務になったのは、障害のある人から求めがあったときに、負担が重すぎない範囲で個別に対応する「合理的配慮の提供」です。会社の規模や個人・法人を問わず対象になります。ホームページを前もって使いやすく整えることは「環境の整備」に当たり、内閣府の基本方針では事業者の努力義務と整理されています。
JIS X 8341-3:2016 に対応するとは、どういうことですか。
JIS X 8341-3:2016 は、ウェブコンテンツのアクセシビリティの日本産業規格で、国際規格 ISO/IEC 40500:2012(W3C の WCAG 2.0 と同じ内容)と一致しています。達成基準は A・AA・AAA の3つのレベルに分かれていて、公的機関は AA への準拠を目標にしています。民間の会社のサイトでも、AA を目安にすることが多くなっています。
アクセシビリティは、まずどこから確かめればよいですか。
画像の代替テキスト、見出しの構造、文字と背景のコントラスト、キーボードだけで操作できるか、フォームの入力欄の説明、動画の字幕の6つから見ると、多くのサイトでよく見つかる問題を押さえられます。マウスを使わずに Tab キーでページを進めてみる、画面を200%に拡大してみる、といった確認は担当者でもできます。