スタッフやお客様の写真をサイトに載せるとき|肖像権と同意の取り方
会社やお店のホームページで、働いている人の顔が見えると、訪れた人に安心感を持ってもらいやすくなります。スタッフ紹介のページ、代表の挨拶、店内のにぎわいの写真などがその例です。ただ、人が写った写真を載せるときは、写っている人の権利に気を配る必要があります。
この記事では、スタッフやお客様が写った写真をサイトに載せるときに関わる3つの決まり(肖像権、個人情報保護法、写真の著作権)、スタッフとお客様それぞれの同意の取り方、同意書に入れる項目の例、退職したときや「消してほしい」と言われたときの扱いを、最高裁の判例と、個人情報保護委員会・文化庁の資料(2026年10月時点で公開されているもの)にそって説明します。
この記事は一般的な説明で、個別の判断は弁護士などの専門家や、個人情報保護委員会の相談窓口などに確かめてください。
人物の写真に関わる3つの決まり
| 決まり | 中身 | サイトに載せるときに関わること |
|---|---|---|
| 肖像権 | みだりに自分の容ぼうを撮影されたり、公開されたりしない権利 | 写っている人の同意があるか |
| 個人情報保護法 | 本人を判別できる写真は個人情報にあたる | 利用目的を通知・公表しているか |
| 著作権 | 写真は撮影した人の著作物になる | 撮った人から使う許可を得ているか |
肖像権は、法律の条文で定められた権利ではなく、判例で確立された権利です。文化庁の著作権テキストは、自己の氏名や肖像をみだりに他人に公開されない権利で、プライバシー権の一種とされていると説明しています。最高裁は平成17年11月10日の判決で、人はみだりに自己の容ぼう・姿態を撮影されないことについて、法律上保護されるべき人格的利益を持つとしました。承諾のない撮影が違法になるかは、撮られた人の社会的地位や活動の内容、撮影の場所・目的・態様・必要性などを総合して、社会生活上がまんすべき限度を超えるかで判断するとしています。
個人情報保護法について、個人情報保護委員会のQ&A(Q7-11)は、本人を判別できる写真の画像は一般に個人情報にあたるとしています。社内の行事の写真を社内に展示する例では、本人の同意がなくても第三者提供の制限(27条1項)に反するおそれはないとしつつ、利用目的の通知か公表は必要(21条1項)としています。そのうえで、プライバシーの権利や肖像権の侵害にあたる場合もあるため、不特定多数への提供では自主的に本人の同意を得るなどの取り組みが望ましいとしています。誰でも見られるホームページに載せるなら、同意を得ておくのが基本と考えておきます。
写真の著作権は、写っている人ではなく、撮影した人にあります。社員がスマートフォンで撮った写真、知人のカメラマンが撮った写真、取引先が撮ったイベントの写真を載せるときは、撮った人から使う許可を得ているかも確かめます。
スタッフの写真を載せるとき
社員やアルバイトの写真も、本人の同意を得てから載せます。雇用の関係にあると、「載せたくない」と言いにくい立場にあることも考えて、断ってもかまわないことを伝えたうえで意思を確かめます。
- 載せる場所(スタッフ紹介、採用のページ、ブログ、SNS、パンフレットなど)を具体的に伝える
- 顔と名前をいっしょに出すのか、名前は出さないのかを分けて確かめる
- 顔を出したくない人には、後ろ姿や手元の写真、イラストで代える方法も用意する
- 撮影の前に同意を得て、撮った写真を本人に見せてから載せる
就業規則や雇用の契約に一般的な定めがあっても、どの写真を、どこに、いつまで載せるかは、個別に伝えて同意を得るほうが行き違いを防げます。
お客様の写真を載せるとき
店内のようすやイベントの写真に、お客様が写り込むことがあります。顔が分かる形で写っている人がいる写真は、その人の許可を得てから載せます。
- 撮影の前に、撮る目的と、載せる場所・期間を説明する
- 載せてよいかを本人に確かめ、書面かメールで同意を残す
- 子どもが写る場合は、保護者の同意を得る
- 許可が取れない人が写っている写真は、顔が分からない写真に差し替えるか、ぼかしを入れる
個人情報保護委員会のガイドライン(通則編)は、同意したことで生じる結果を本人が判断できないような場合は、親権者や法定代理人などから同意を得る必要があるとしています。イベントで撮影するときは、受付や会場の掲示で「撮影した写真をホームページに載せることがある」と知らせ、写りたくない人の申し出を受ける方法も合わせて用意しておきます。
同意の取り方と、同意書の項目の例
ガイドラインは、同意の取り方の例として、口頭での意思表示、書面(電子のものを含む)の受け取り、メールの受信などを挙げています。後で確かめられるように、書面かメールで残しておくのが実務では安心です。同意書に入れる項目の例は次のとおりです。そのまま使える書式ではないので、自社の使い方に合わせて書き、迷うところは専門家に確かめてください。
- 写真を使う目的(会社やサービスの紹介など)
- 載せる場所(ホームページのどのページか、SNS、印刷物など)
- 名前や役職をいっしょに出すかどうか
- 載せる期間の目安
- 退職したときや、同意を取り下げたいときの扱いと連絡先
- 取り下げの後、消すまでの目安の期間
- すでに配った印刷物や、ほかの人が保存したものは回収できないこと
- 同意した日付と本人の署名(未成年なら保護者の署名)
退職したとき、消してほしいと言われたとき
スタッフが退職したときに写真をどうするかは、トラブルになりやすいところです。同意を得るときに、退職したら差し替えるのか、本人の了承があれば残すのかを決めておきます。
消してほしいという申し出を受けたら、サイトの写真を差し替えるだけでなく、同じ写真を使っているほかのページ、ブログの記事、SNSの投稿、求人サイトに出している写真も洗い出します。サイトを公開している側で消しても、検索の画像の結果にしばらく残ることがあるので、本人には、こちらで消せる範囲とそうでない範囲を正直に伝えます。
スタッフの写真を差し替えやすいように、サイトの作りとしては、1人の写真だけを外してもレイアウトが崩れない形にしておくと、更新の手間が減ります。
公開前のチェック
- 写っている人全員の同意があり、記録が残っているか
- 載せる場所と期間を、本人に伝えた範囲で使っているか
- 子どもが写る写真は、保護者の同意があるか
- 撮影した人から、写真を使う許可を得ているか
- プライバシーポリシーなどで、写真の利用目的を示しているか
- 退職や取り下げのときの手順を決めているか
撮影の準備はプロのカメラマンに撮影を頼むときの準備、人物の写った素材写真を使うときは素材写真の使い方と注意点、利用目的の示し方はプライバシーポリシーの書き方、文章の権利はホームページの文章の著作権もあわせてご覧ください。ホームページの制作の内容は、料金プランにまとめています。
よくある質問
社員の写真をホームページに載せるのに、同意は必要ですか。
社員であっても、本人の同意を得てから載せるのが基本です。肖像権は判例で認められた権利で、最高裁は、人はみだりに自己の容ぼう等を撮影されない人格的利益を持つと判断しています。個人情報保護委員会も、本人を判別できる写真は個人情報にあたるとし、不特定多数に見せるときは自主的に同意を得る取り組みが望ましいとしています。
退職した社員から、写真を消してほしいと言われたらどうすればよいですか。
前もって決めておいた手順にそって、サイトの写真を差し替えるのが基本です。同意を得るときに、退職したときや同意を取り下げたいときに消すこと、消すまでの目安の期間、すでに配った印刷物は回収できないことを書面で伝えておくと、話がこじれにくくなります。
お店のお客様が写った写真を載せたいときは、どうすればよいですか。
顔が分かる形で写っている人がいる写真は、その人から掲載の許可を得てから載せます。誰に、どこに、いつまで載せるかを説明して、書面かメールで同意を残します。子どもが写る場合は、保護者の同意を得ます。許可が取れないときは、顔が分からない写真に差し替えるか、ぼかしを入れます。