複数の店や事業のロゴをどうそろえるか|共通にする所と分ける所
本業のほかに飲食店を始めた、2つ目の事業を立ち上げた、グループに会社が増えた。事業が増えると、「新しい事業にも今のロゴを使うか、別のロゴを作るか」を決める場面が来ます。ここをその場の判断で決めていくと、事業ごとに見た目も名前の付け方もばらばらになり、同じ会社だと伝わらないか、反対に、分けたかった事業まで同じ会社の顔に見えてしまいます。
この記事では、複数の店や事業を持つ会社が、ロゴや屋号を共通にするか分けるかを決める考え方と、共通にする所・分ける所の整理の仕方をまとめます。ロゴの種類や組み方の基本はロゴの種類とロゴの縦型と横型で説明しています。
そろえ方の3つの型
複数の事業の見た目のそろえ方は、大きく3つの型に分けられます。
| 型 | 見え方 | 向いている場合 | 気をつけること |
|---|---|---|---|
| A. 同じロゴにする | どの事業も会社のロゴで出る | お客様が重なる、会社の信用が選ばれる理由になる | 1つの事業の評判がほかに響く |
| B. 共通の印に事業名を添える | 会社の印の横や下に、事業名や店名を組む | 事業ごとに違いは出したいが、同じ会社だと伝えたい | 事業名の組み方の決まりが要る |
| C. 別々のロゴにする | 事業ごとに独自のロゴ。会社名は小さく添える | お客様・価格帯・雰囲気がまったく違う | ロゴの数だけ作る費用と管理の手間がかかる |
たとえば、工務店がリフォームの部門を持つ場合は、お客様が重なり、本業の信用がそのまま選ばれる理由になるので、AかBが向いています。一方、同じ会社が建築とは関係のないカフェを開くなら、カフェのお客様に工務店の印を見せる理由は薄いので、Cにして、店の名刺や店のホームページの会社概要に運営会社の名前を載せる形が向いています。
3つの型は、会社の中で混ぜても構いません。本業に近い事業はB、離れた事業はC、というように、事業ごとに選びます。
決めるための5つの問い
どの型にするかは、次の5つを順に考えると決めやすくなります。
- お客様は重なっているか:同じお客様が複数の事業を使うなら、同じ会社だと分かるほうが便利です
- 会社の名前は選ばれる理由になっているか:「あの会社がやっているなら安心」と言われる事業なら、会社の印を前に出します
- 価格帯や雰囲気は近いか:高級な事業と手頃な事業を同じ見た目にすると、どちらの印象もあいまいになります
- 評判を切り離したい事業はあるか:新しく試す事業や、うまくいかなければ畳むかもしれない事業は、分けておくと本業への影響を抑えられます
- 将来、事業を分ける・譲る可能性はあるか:別会社にする、ほかの会社に譲る見込みがある事業は、はじめから独自のロゴにしておくと切り分けやすくなります
1と2が「はい」ならAかB、3〜5のどれかが「はい」ならCを考えます。
共通にする所と分ける所
型を決めたら、何を共通にして、何を事業ごとに分けるかを表にします。Cの型で、ロゴを別々にする場合でも、共通にできる所は意外に多くあります。
| 要素 | 共通にすると良い | 事業ごとに分けてよい |
|---|---|---|
| ロゴ・印 | AとBの型 | Cの型 |
| 色 | 会社の色を1色だけ全事業に残す | 事業ごとの差し色 |
| 書体 | 本文や書類に使う書体 | 見出しやロゴまわりの書体 |
| 余白とロゴの置き方 | 名刺・書類・資料の型 | 店頭の販促物 |
| 名刺・封筒・請求書 | 形式と会社情報の書き方 | 事業名・店名の入れ方 |
| ホームページ | 会社のサイトに事業の一覧を置く | 事業ごとのサイトや予約のページ |
| 写真の雰囲気 | 明るさや撮り方の決まり | 写すもの |
請求書や契約書のように、取引の相手に出す書類は、事業にかかわらず会社としての形式をそろえておくと、受け取る側が迷いません。色や書体の決め方はコーポレートカラーの決め方と会社の書体の決め方で説明しています。
屋号と事業名の付け方
ロゴの前に、名前の付け方も決めておきます。
- 会社名+事業名:「〇〇建設 リフォーム部」のように、会社名を頭に付ける。AとBの型に合う
- 共通の言葉+店名:店ごとに名前は違っても、頭や終わりに共通の言葉を置く。Bの型に合う
- 独自の名前:会社名と関係のない名前にする。Cの型に合う
名前を決める前に、似た名前が商標として登録されていないかを調べます。名前の付け方と商標の調べ方は店名・商品名のネーミングを頼むときにまとめています。
商標をどう考えるか
ロゴの数が増えるほど、商標として守るものも増えます。特許庁の説明では、商標の権利はマークと、そのマークを使う商品・サービスの組み合わせで1つの権利になり、出願のときに使う商品・サービスと、その区分(第1類〜第45類)を書きます。
事業が違えば、指定する区分も違ってきます。たとえば、建築の工事と飲食店の提供は別の区分です。特許庁に納める料金は、出願料が「3,400円+区分数×8,600円」、10年分の登録料が「区分数×32,900円」で、区分の数で決まります(産業財産権関係料金一覧で確かめた額。弁理士に頼む場合は手数料が別にかかります)。
- Aの型:1つのロゴで、全事業の区分をまとめて出願できる
- Bの型:共通の印を守っておけば、事業名の部分は事業ごとに考えられる
- Cの型:ロゴごとに、その事業の区分で出願を考える
全部を一度に出願できないときは、売上の大きい事業や、名前をまねされると困る事業から順に考えます。登録が要るかどうかの判断はロゴの商標登録は必要かで説明しています。
進め方
- 今の事業とそのロゴ・名前・販促物を一覧にする
- 事業ごとに、5つの問いに答えて型を選ぶ
- 共通にする所と分ける所の表を作る
- 決まりを文書にする(ブランドガイドラインとは)
- 名刺・書類など、取引に使うものから順に切り替える
すでに事業ごとにばらばらのロゴがある場合も、いきなり全部を作り直す必要はありません。まず書体と書類の形式をそろえ、ロゴの見直しは次の作り直しの時期に合わせる、という順番でも、見た目のまとまりはかなり出てきます。
決まりを守ってもらう工夫
事業ごとに担当者が違うと、それぞれが自分の事業の販促物を作り、少しずつ決まりから外れていきます。共通の決まりを守ってもらうには、次のような工夫が効きます。
- ロゴのデータと書類のテンプレートを、全事業の担当者が使う共有の場所に置く
- 新しい事業や店を始めるときは、名前とロゴを決める前に、決まりを持つ担当者に相談する流れにする
- 年に一度、全事業の名刺・チラシ・ホームページを並べて、ずれていないかを確かめる
よくある迷いと失敗
- 新しい事業のたびにロゴを作る:作るたびに雰囲気が違い、会社としてのまとまりが無くなる。共通の決まりを先に作ってから足す
- 何でも同じロゴにする:雰囲気の違う事業まで同じ見た目にして、どちらの印象もぼやける
- 会社名をどこにも書かない:Cの型でも、名刺や会社概要には運営会社を書いておく。取引の相手が不安にならない
- 事業名を自由に組む:Bの型で、事業名の大きさや位置を毎回変えてしまう。組み方の見本を作っておく
Lapisデザインラボの制作のプランと進め方は、サービスと料金に載せています。
よくある質問
複数の事業を持つ会社は、ロゴを1つにそろえるべきですか。
お客様が重なっていて、どの事業でも会社の信用を前に出したいなら、1つのロゴか共通の印にそろえると効果が出やすくなります。お客様や価格帯がまったく違う事業や、評判を切り離したい事業は、別々のロゴにして、会社名は小さく添える形が向いています。
店ごとに屋号が違う場合、見た目はどこまでそろえればよいですか。
ロゴや色は店ごとに分けても、書体、余白の取り方、名刺や書類の形式、会社情報の書き方はそろえておくと、同じ会社の店だと伝わり、作る手間も減ります。どこを共通にするかを1枚の表にして、全店で使う決まりにします。
事業ごとに別のロゴを作ると、商標の登録はどうなりますか。
商標の権利は、マークと、それを使う商品・サービスの組み合わせで決まります。事業ごとにロゴを分けると、ロゴの数だけ出願を考えることになり、事業が違えば指定する区分も変わります。特許庁の料金は区分の数で決まるため、どのロゴをどの区分で守るかを先に整理します。