ブランディングの依頼で起きやすい行き違い|見た目だけ変わって終わる頼み方
ブランディングを頼んで、新しいロゴもできた。なのに、お客様の反応も社内の空気も前と変わらない。あるいは、届いた案を見て「思っていたのと違う」と感じたまま修正を重ね、最後はどれでもよくなってしまった。ブランディングの依頼では、こうした行き違いがよく起きます。
多くの場合、原因は依頼先の腕ではなく、頼み方にあります。この記事では、よくある行き違いを8つに分け、起きる理由と、頼む前にできる防ぎ方をまとめます。依頼先を選ぶときの見方はブランディング会社の選び方で説明しています。
よくある行き違いの一覧
| 行き違い | 起きる理由 | 頼む前の防ぎ方 |
|---|---|---|
| 1. 見た目だけ変わって終わる | 変える理由が言葉になっていない | 変える理由を1文にする |
| 2. 案が好みの話になる | 選ぶ物差しが無い | コンセプトに言葉で合意してから案を見る |
| 3. 決まったことが覆る | 決める人が後から加わる | 決める人を最初から打ち合わせに入れる |
| 4. 思っていた範囲と違う | 成果物を一覧にしていない | 作る物と作業を表にしてもらう |
| 5. 案を増やしても決まらない | 案の数で安心しようとする | 少ない案を育てる進め方にする |
| 6. 社内に広がらない | 使い方の決まりと説明が無い | ガイドラインと社内向けの説明を範囲に入れる |
| 7. あとで自由に使えない | データと権利を確かめていない | 納品データと著作権の譲渡を契約に書く |
| 8. 費用が想定を超える | 修正と作り直しの境目があいまい | 追加の費用の条件を先に決める |
以下、それぞれを詳しく見ていきます。
1. 見た目だけ変わって終わる
いちばん多い行き違いです。「古く見えるから」「なんとなく今っぽくしたい」という理由で始めると、ロゴや色は新しくなっても、お客様に伝わる中身は変わりません。
防ぐには、頼む前に「なぜ変えるのか」を1文にします。たとえば「価格ではなく、相談のしやすさで選ばれる会社だと伝えたい」のように、誰に何を伝えたいかが入った文です。この1文があると、制作側は形の前に中身を考えられ、できたものを社員が説明するときの言葉にもなります。言葉にする手順はブランドコンセプトの作り方で説明しています。
2. 案が好みの話になる
デザイン案が届いたとき、社内で「青のほうが好き」「丸い形が良い」と話し始めると、決め手が無くなります。人によって好みが違うので、意見が割れたときにまとめられません。
ロゴの案を見る前に、コンセプトの言葉の段階で合意しておきます。そうすれば、案を見るときの問いは「どれが好きか」ではなく「どれがこの言葉をいちばん表しているか」になります。
3. 決まったことが覆る
打ち合わせに出ていなかった役員や家族が、最後の段階で案を見て「これは違う」と言い、それまでに決めたことがやり直しになる。期間と費用をいちばん失う行き違いです。
最後に決める人は、ヒアリングとコンセプトの合意の場に必ず出てもらいます。出られない場合は、合意した内容を文書で見てもらい、その段階で了承をもらっておきます。
4. 思っていた範囲と違う
「ブランディングを頼んだのだから、名刺もホームページも作ってもらえると思っていた」「調査もしてくれると思っていた」。こうした思い違いは、成果物が「一式」としか書かれていないときに起きます。
作る物と作業を表にしてもらい、契約の前に照らし合わせます。確かめる項目は、ブランディング会社の選び方の「契約の前に確かめること」の節に表でまとめています。
5. 案を増やしても決まらない
「もっと案を出してほしい」と頼み続けると、案が増えるほど選ぶ基準がぶれ、決まらなくなります。案の数が多いことは、良いロゴができることを意味しません。
方向の違う案を少数出してもらい、その中から1つを選んで育てる進め方のほうが、まとまりのある形になります。案の数の考え方はロゴの提案は何案が普通かで説明しています。
6. 社内に広がらない
新しいロゴができても、社員が古い名刺のテンプレートを使い続ける、営業資料が前のまま、店頭のPOPは各自の手作り。これでは、お客様が目にする見た目はそろいません。
ロゴと一緒に、使い方の決まり(ガイドライン)と、よく使う書類のテンプレートを範囲に入れておきます。社員に向けて、変えた理由と使い方を説明する場を設けると、決まりが守られやすくなります(ブランドガイドラインとは)。
7. あとで自由に使えない
ロゴを少し直したい、看板用に組み方を変えたい、と思ったときに、元のデータが手元に無い、作った側の了解が要る、ということがあります。
著作権法第61条第2項は、著作権を譲渡する契約で、翻案などの権利(第27条・第28条の権利)が特に書かれていないときは、譲渡した側に残ると推定すると定めています。契約書には、著作権の譲渡と、この2つの権利を含むこと、著作者人格権を行使しないことを書いてもらいます。受け取るデータの形式も契約に入れます(ロゴの著作権は誰のものか)。
8. 費用が想定を超える
修正の回数を超えた、途中で方向を変えた、作る物を足した。こうした追加は、条件を決めていないと、請求のときに初めて分かります。
修正は何回まで含むか、どこからが作り直しになるか、追加は見積もりを了承してから始めるか、を契約の前に決めておきます。費用の内訳の見方はブランディングを外注したときの費用相場にまとめています。
思っていたのと違う案が届いたとき
頼み方を整えていても、届いた案がしっくりこないことはあります。そのときは、次の順で伝えると、やり取りが早く進みます。
- コンセプトの言葉に照らす:合意した言葉のどの部分が、案から感じられないかを伝える
- 好き嫌いと伝わり方を分ける:「色が好みでない」と「この色では堅実さが伝わらない」は別の話として伝える
- 良い所も伝える:残したい所が分かると、制作側は次の案で何を変えればよいかが分かる
- 社内の意見はまとめて返す:窓口の人が意見を集め、矛盾を整理して1つの返事にする
伝え方の具体例はデザイン案への修正の伝え方で、良い例と困る例を並べて説明しています。
依頼の前に社内で確かめるチェックリスト
- 変える理由を、誰に何を伝えたいかが入った1文にした
- 最後に決める人を決め、最初の打ち合わせに出てもらう
- 社内の窓口の人を決めた
- 案への返事の期限を決めた
- 作る物と作業を一覧にしてもらう
- 納品データの形式と著作権の扱いを契約に入れる
- 修正の回数と、追加の費用の条件を確かめる
- できたものを社内に広げる段取り(ガイドライン・説明の場)を決めた
ブランディングを見直す場合の進め方は、リブランディングの進め方で説明しています。Lapisデザインラボの進め方と取引条件は、サービスと料金に載せています。
よくある質問
ブランディングを頼んで、見た目だけ変わって終わるのはなぜですか。
何のために変えるのか、誰に何を伝えたいのかが言葉になっていないまま、ロゴや色から作り始めることが多いためです。言葉の段階で合意してから形を作り、できたものを名刺や店頭、社員の説明のしかたまで広げる段取りを、頼む前に決めておくと防げます。
届いたデザイン案が思っていたのと違うときは、どう伝えればよいですか。
「なんとなく違う」ではなく、最初に合意したコンセプトの言葉に照らして、どこが合っていないかを伝えます。好き嫌いの話と、伝えたいことが伝わるかの話を分け、社内の意見は窓口の人がまとめて1つの返事にします。
ブランディングを外注して後悔しないために、頼む前に何をすればよいですか。
変える理由を1文にする、決める人を決めて最初から打ち合わせに出てもらう、作る範囲と受け取るデータ・権利を一覧にする、できた後に誰が何を変えるかを決める、の4つです。依頼先の選び方より先に、この社内の準備が結果を左右します。