ホームページ制作のよくあるトラブルと契約前の防ぎ方
ホームページの制作で起きるトラブルの多くは、どちらかが悪意を持っていたからではなく、最初に決めておくべきことが決まっていなかったために起きます。「そこまでは頼んでいない」「そこまで含まれていると思っていた」という食い違いが、納期の遅れや追加料金、データの受け渡しのもめごとになって表に出てきます。
この記事では、ホームページの制作でよくあるトラブルを7つの型に分け、それぞれの原因と、契約の前にできる防ぎ方をまとめます。すでにもめかけている場合の進め方と、事業者の契約で知っておきたい法律の線引きも説明します。制作会社と連絡が取れなくなった場合や、リースの契約をやめたい場合の手続きは別の記事で扱っているので、ここでは起きる前に防ぐことを中心にします。
よくあるトラブルと原因の一覧
| トラブルの型 | よくある形 | 主な原因 | 契約前の防ぎ方 |
|---|---|---|---|
| 納期の遅れ | 公開日が何度も延びる | 原稿の提出の遅れ、確認の返事の遅れ、作業の範囲の膨らみ | 双方の締め切りを日程表にする |
| 追加料金 | 終盤に想定外の請求が来る | 範囲が「一式」で決まっていない | 追加は事前に見積もり、書面で承諾してから |
| 仕上がりの食い違い | イメージと違うが、修正の回数が残っていない | 方向性を決める前にデザインに入った | 参考サイトと言葉で方向性を合意する |
| データと著作権 | データを渡してもらえない、別の会社で直せない | 著作権の扱いを決めていない | 27条・28条を含む譲渡、人格権の不行使 |
| 名義 | ドメインやサーバーが制作会社の名義 | 手続きを任せきりにした | 自社の名義で契約する |
| 公開後の不具合 | 直すのに費用を求められる | 不具合の範囲と期間を決めていない | 無料で直す期間と範囲を決める |
| 途中でやめる | 払った代金が戻らない、途中のデータがもらえない | 中止の精算を決めていない | 段階ごとの精算とデータの扱いを決める |
どの型も、「契約の前に、書面で決めておく」ことで多くは防げます。以下、起きやすい順に説明します。
納期の遅れ
納期の遅れは、制作会社の作業の遅れだけで起きるとは限りません。たとえば、原稿を自社で書く約束だったのに本業が忙しく出せない、デザインの確認を社内で回すうちに2週間たってしまう、といった発注する側の遅れもよくある原因です。
防ぎ方は、双方の締め切りを1枚の日程表にすることです。
- 制作会社の作業(デザイン案の提出、組み立て、公開)の日付
- 自社の作業(原稿、写真、確認の返事)の日付
- 自社の作業が遅れたときに、公開日がどう動くか
公開日に理由がある場合(開業日、展示会、新しい事業の開始など)は、それも伝えておきます。間に合わなくなりそうなときに、先に公開するページを絞るといった相談がしやすくなります。期間の目安はホームページの制作期間の目安で説明しています。
追加料金
「ページを1枚足してほしい」「この写真も差し替えてほしい」と、制作の途中で頼みごとが増えるのは自然なことです。問題は、金額を決めないまま作業が進み、終わってから請求が届くことです。
契約書か見積書に、次のことが書かれているかを確かめます。
- 見積もりに含まれる作業の一覧(ページ数、修正の回数、原稿・撮影の有無)
- 範囲の外の作業は、事前に見積もりを出し、発注する側が書面で承諾してから行うこと
- 修正の回数を超えたときの料金
途中で頼みごとをしたときは、「これは追加になりますか。追加ならいくらですか」とその場で聞き、答えをメールで残します。この一往復が、終盤のもめごとをほとんど防ぎます。
仕上がりの食い違い
デザインが上がってきてから「思っていたのと違う」と感じるのは、多くの場合、デザインに入る前に方向性を言葉で合意していないことが原因です。好みの話でやり直しを重ねると、修正の回数を使い切ってしまいます。
- 参考にしたいサイトを2〜3つ挙げ、どこがよいと思ったかを言葉で伝える
- 誰に見てほしいサイトか、何をしてほしいか(問い合わせ、来店、応募など)を先に合意する
- 最終的に決める人を、最初の打ち合わせから入れる
データと著作権、名義
制作が終わって何年かたち、別の会社に直してもらおうとしたときに表に出るのがこの型です。
著作権法では、デザインや文章の著作権は、何も決めなければ作った側に残ります。譲渡の契約でも、第27条(翻案などの権利)と第28条(二次的著作物の利用の権利)が特に書かれていないと、これらは譲渡した側に残ると推定されます(第61条第2項)。また、作った人の同一性保持権(第20条)などの著作者人格権は譲渡できないため、「行使しない」と取り決める形がよく使われます。
ドメインとサーバーの名義も同じで、制作会社の名義のままだと、乗り換えや連絡が取れなくなったときに困ります。条項の読み方はホームページ制作の契約書で確かめることで詳しく説明しています。
公開後の不具合
公開した後に、スマートフォンで表示が崩れる、フォームが届かない、といった不具合が見つかることがあります。無料で直してもらえるかは、契約で決まります。
民法では、請負の仕事の結果が契約の内容に合わないとき、注文者は直してもらうこと(追完)などを求められますが、その不適合を知った時から1年以内に請負人に通知しないと、これらの請求ができなくなると定められています(第637条)。契約書では、これと違う期間や範囲を決めていることが多いので、次のことを契約の前に確かめます。
- 公開の後、いつまで無料で直してもらえるか
- 何を不具合とするか(契約の内容と違う所か、ブラウザの更新による崩れも含むか)
- 連絡の方法と、直すまでの日数
不具合を減らすには、受け取る前の確かめ(検収)が大事です。確かめ方はホームページの検収で確かめることにまとめています。
途中でやめるとき
事情が変わって、制作を途中でやめることもあります。民法では、注文者は仕事が完成する前であれば、損害を賠償していつでも契約を解除できるとされています(第641条)。契約書では、やめたときに、それまでの作業の費用をどう精算するか、途中までのデザインや原稿を受け取れるか、前払いした代金がどう扱われるかを確かめておきます。
事業者の契約で知っておきたい法律の線引き
- クーリング・オフは使えないことが多い:特定商取引法の第26条は、営業のために、または営業として結ぶ契約を、訪問販売などの規定の対象から外しています。会社やお店のホームページの制作の契約は多くの場合これに当たるので、「後でやめればよい」と考えずに署名の前に確かめます。長期のリースの契約についてはホームページのリース契約をやめたいときで説明しています
- フリーランスに頼むとき:2024年11月1日に施行されたフリーランス・事業者間取引適正化等法では、発注する事業者に、業務の内容や報酬の額、支払期日などを書面やメールで明示することが求められます。1か月以上の業務を頼む場合は、フリーランスの側に理由が無いのに、費用を負担せずに内容を変えさせたり、受け取った後にやり直させたりすることも禁じられています
- 下請法の改正:下請法は2026年1月1日に「中小受託取引適正化法(取適法)」に変わりました。公正取引委員会のよくある質問では、自社のホームページの制作を外に頼むことは通常は対象にならないとされていますが、自社が制作の仕事を請け負っていて、その一部を外に出す場合などは対象になることがあります
もめかけたときの進め方
すでに話がこじれかけている場合は、感情的なやり取りを避け、次の順で進めます。
- 記録を集める:見積書、契約書、仕様書、やり取りのメール、打ち合わせのメモ
- 何が食い違っているかを1行で書く:「追加の2ページの料金」「公開日の遅れ」など、争点を絞る
- 契約の文言と照らす:その作業が範囲の内か外か、誰の締め切りが遅れたか
- 書面で要点を伝える:自社の理解と、望む解決(新しい公開日、内訳の説明など)を、期限を添えてメールで送る
- 専門家に相談する:話し合いで進まないときは、記録一式を持って弁護士に相談する
相手と連絡が取れなくなった場合の動き方は制作会社と連絡が取れないときで説明しています。
Lapisデザインラボでは、作業の範囲、修正の回数、支払いの時期、著作権の扱いを、取引条件としてサービスと料金に先に載せています。
よくある質問
ホームページの制作が納期に遅れています。どうすればよいですか。
まず、遅れの原因が制作会社の側か、原稿や写真の提出など自社の側かを、やり取りの記録で確かめます。そのうえで、残っている作業と新しい公開日を書面で出してもらいます。公開日に理由がある場合(開業日など)は、先に公開するページを絞る相談も有効です。
見積もりに無い追加料金を請求されました。払わなければいけませんか。
契約書や見積書で作業の範囲がどう決まっていたか、追加の作業を頼んだ記録があるかで変わります。範囲の外の作業を頼み、金額にも合意していれば払うのが原則ですが、金額の合意が無いまま進められた場合は、内訳の説明を求めて話し合います。事前に見積もりを出してから進めるという取り決めを契約に入れておくのが、いちばんの予防です。
公開後に不具合が見つかったら、無料で直してもらえますか。
契約の内容によります。民法では、請負の仕事の結果が契約の内容に合わないとき、注文者はその不適合を知った時から1年以内に通知しないと、直してもらうことの請求などができなくなると定められています(第637条)。契約書でこれと違う期間や範囲が決められていることも多いので、契約前に確かめます。