ホームページ制作を途中でやめるとき|キャンセル料と作りかけの扱い
ホームページの制作を頼んだものの、事業の方針が変わった、予算が組めなくなった、制作会社との進め方が合わない。そうした理由で、途中でやめるかどうか迷うことがあります。迷っているときに知りたいのは、いまやめたら、いくら払うことになるのかと、作りかけのデザインや預けた原稿はどうなるのかの2つでしょう。
この記事では、途中でやめるときの精算が何で決まるかを、進み具合ごとの考え方、キャンセル料の条項の読み方、着手金の扱いに分けて説明します。あわせて、作りかけのデザインと預けた素材の扱い、制作会社の側に原因があるとき、やめると決めた後の手順と連絡の文面の例をまとめました。
契約を結ぶ前に、解約の条項として何を決めておくかはホームページ制作の契約書で確かめることで扱っています。ここでは、すでに制作が始まっている場合を前提にします。
途中でやめるときの基本の考え方
ホームページの制作の契約は、多くの場合、民法の「請負」(仕事を完成させることを約束し、その結果に代金を払う契約)に当たります。民法には、途中でやめるときに関わる定めが2つあります。
- 注文した側は、いつでもやめられる:仕事が完成する前であれば、注文者は損害を賠償して、いつでも契約を解除できる(第641条)
- できた部分には、割合に応じた代金が要る:完成の前に解除された場合でも、すでにできた部分を分けて受け取ることで注文者が利益を受けるときは、その部分を完成とみなし、受ける利益の割合に応じて代金を請求できる(第634条)
つまり、やめること自体はできますが、それまでの作業の分と、制作会社が受けた損の分は払うのが基本です。契約書に精算の定めがあれば、まずその定めに沿って話を進めます。
払う額は「どこまで進んだか」で決まる
精算の額は、やめた時点の進み具合で大きく変わります。段階ごとの考え方の目安をまとめました。割合や金額は契約によって違うので、実際の額は契約書と精算の明細で確かめます。
| やめた時点 | 終わっている作業 | 精算の考え方 | 受け取れることが多いもの |
|---|---|---|---|
| 契約の直後 | ほぼ無い | 着手金の扱いの定めによる | 特に無い |
| ヒアリング・構成の途中 | 聞き取り、ページの構成案 | かかった作業の分 | 構成案、聞き取りのまとめ |
| デザインの途中 | トップページなどのデザイン案 | デザインの段階までの分 | デザイン案の画像(使える範囲は別に決める) |
| 組み立ての途中 | デザインの確定、ページの組み立て | 組み立ての進み具合までの分 | 確定したデザイン、組み立て途中のデータ |
| 公開の直前 | ほぼすべての作業 | 全額に近い額になりやすい | 完成に近いデータ一式 |
段階が進むほど払う額は増え、やめても手元に残るものは「使える形」に近づきます。迷っているなら、次の段階に進む前に決めるのが、損をいちばん小さくする方法です。
キャンセル料の条項の読み方
契約書には、途中でやめたときの扱いが、次のような形で書かれていることが多くあります。
| 条項の形 | 書かれ方の例 | 確かめること |
|---|---|---|
| 段階ごとの定額 | デザインの確定の後は、代金の一定の割合を払う | どの時点で、どの段階に入ったとみなすか |
| 作業の割合 | それまでの作業の分を、作業時間などで計算して払う | 計算の単価と、作業の記録を見せてもらえるか |
| 着手金を返さない | 着手の後のキャンセルでは、払った代金は返さない | 着手金のほかに払う額があるか |
| 全額 | 理由を問わず、代金の全額を払う | 未着手の作業の分まで含まれているか |
民法では、契約で決めた違約金は、損害の賠償の額をあらかじめ決めたものと推定されます(第420条)。条項に書かれた額が、実際の作業や損と比べて大きく外れていると感じるときは、計算の根拠を書面で聞き、話し合いの材料にします。
着手金は返ってくるか
着手金(作業を始める前に払う代金の一部)が返るかどうかは、契約の定めで決まります。
- それまでの作業の費用に充てる定め:作業が少なければ、差額が返ることがある
- 着手の後は返さない定め:やめた時点にかかわらず返らない
- 定めが無い:それまでの作業の分と、制作会社の損の分を差し引いて話し合う
着手金の割合や支払いの時期の決め方は制作費の支払い条件で説明しています。
作りかけのデザインとデータはどうなるか
途中でやめるときに見落としやすいのが、作りかけのものの扱いです。
作りかけのデザイン。デザイン案などの著作権は、譲り受ける約束が無ければ、作った側に残るのが原則です。契約によっては、著作権の譲渡や使ってよい範囲が「納品と支払いが終わったとき」に効力を生じると定められていて、その場合は途中でやめると条件を満たしません。データを受け取れても、そのまま公開したり、ほかの会社で仕上げたりしてよいとは限らないので、受け渡しと使ってよい範囲を書面で取り決めます。
預けた原稿・写真・ロゴ。自社で用意して渡したものは、自社のものです。返してもらう、または制作会社の側で消してもらうことを、やめるときの連絡に書き添えます。
ドメインとサーバー。制作会社の名義で取っている場合は、名義を移すか、解約するかを決めます。新しいドメインで、まだ公開していなければ影響は小さいですが、今のサイトのドメインを移している途中なら、サイトとメールが止まらないように段取りを確かめます(ドメインとサーバーは誰の名義にすべきか)。
アカウント。制作のために作った管理画面や外部のサービスのアカウントは、名義と、残すか消すかを一覧にして確かめます。
制作会社の側に原因があるとき
納期を大きく過ぎても進まない、連絡が取れない、といった制作会社の側の事情でやめる場合は、考え方が変わります。民法では、相手が約束を果たさないときは、相当の期間を決めて果たすよう求め、その期間内に果たされなければ契約を解除できるとされています(第541条)。
この場合は、まず「いつまでに、何を」を書面で求め、その記録を残します。払った代金の扱いは、それまでにできた部分と、自社が受けた損を踏まえた話し合いになります。連絡そのものが取れなくなったときの動き方は制作会社と連絡が取れないときで説明しています。
やめる前に考えたい3つの選択肢
完全にやめる前に、次の形も考えられます。
- いったん止める:予算や時期の都合なら、保留の期限を決めて止める。再開のときの扱いを先に確かめる
- 範囲を縮める:ページや機能を減らして、まず小さく公開する
- ほかの会社に引き継ぐ:進め方が合わない場合。途中のデータの受け渡しと権利の取り決めが前提になる(制作会社を乗り換えるときの手順)
やめると決めたときの手順
- 契約書を読む:解約の条項、着手金、著作権、預けた素材の扱いの定めを確かめる
- 作業を止めてもらう:やめる意思を書面かメールで伝え、その日から先の作業を止めてもらう
- 精算の明細をもらう:終わった作業と、その金額の根拠を書面で出してもらう
- 受け取るものを一覧にする:途中のデータ、預けた素材、アカウント、ドメイン
- 合意を書面に残す:払う額、受け取るもの、使ってよい範囲を、双方で確かめた形で残す
連絡の文面の例
〇〇の制作について、社内の事情により、本日をもって依頼を取りやめたく、ご連絡しました。本日以降の作業は止めていただけますでしょうか。契約書の第〇条に沿って、これまでの作業の精算の額と、その内訳をお知らせください。あわせて、こちらからお渡しした原稿・写真の返却と、途中までのデータの受け渡しが可能かどうかを教えてください。
理由をくわしく書く必要はありませんが、感情的な言葉は避け、何をしてほしいかを具体的に書きます。
まとめ
- 途中でやめることはできるが、それまでの作業の分と、制作会社の損の分は払うのが基本
- 払う額は進み具合と契約の条項で決まる。迷うなら次の段階に進む前に決める
- 着手金が返るかどうかは、契約の定めで決まる
- 作りかけのデザインは、受け取っても使えるとは限らない。受け渡しと使ってよい範囲を書面で決める
- やめると決めたら、作業を止め、精算の明細と受け取るものの一覧を書面でもらう
Lapisデザインラボの取引の条件(着手した後のキャンセルの扱いを含みます)はお取引の条件にまとめています。
よくある質問
ホームページの制作を途中でやめることはできますか。
できます。民法では、仕事が完成する前であれば、注文した側は損害を賠償していつでも契約を解除できるとされています。ただし、それまでの作業の費用や、キャンセル料の条項に沿った支払いは求められるのが一般的です。まず契約書の解約の条項を読み、精算の額を書面で出してもらいます。
払った着手金は返ってきますか。
契約の定めと、やめた時点の進み具合によります。着手金をそれまでの作業の費用に充てる定めなら、作業が少なければ差額が返ることもありますが、「着手の後は返さない」とする定めもよくあります。返るかどうかは、契約書の条項と精算の明細で確かめます。
途中までのデザインをもらって、ほかの会社で仕上げてもらえますか。
データを受け取れても、そのまま使ってよいとは限りません。途中のデザインの著作権は、譲り受ける約束が無ければ作った側に残るのが原則です。ほかの会社で使いたいときは、データの受け渡しと、使ってよい範囲を書面で取り決めます。