ブランドストーリーの書き方|創業の経緯をサイトと販促物に載せる
ホームページの「私たちについて」や、パンフレットの最初のページに、店や会社が始まったいきさつを載せたいと考える経営者は多いと思います。けれども書いてみると、年表のような事実の羅列になったり、思いばかりが先に立って何があったのかが伝わらなかったりします。
ブランドストーリーは、店や会社がどう始まり、何につまずき、なぜ今のやり方になったのかを、出来事の流れで伝える紹介文です。読んだ人が「だからこの店はこうなのか」と納得できると、商品やサービスの説明も受け取ってもらいやすくなります。
この記事では、創業のいきさつや思いを読まれる文章にまとめる手順を、材料を集める質問、組み立ての型、仮の店での例、事実の確かめ方、ホームページや販促物での使い分けの順に説明します。代表挨拶の書き方はホームページの代表挨拶の書き方で、年表の形の沿革は会社の沿革の書き方で扱っているので、ここでは物語の形の紹介文に絞ります。
代表挨拶・沿革との違い
同じ「会社の歩み」を扱っても、3つの文章は役割が違います。先に分けておくと、内容が重ならず、どれも読みやすくなります。
| 文章 | 重心 | 語り手 | 形 |
|---|---|---|---|
| 沿革 | いつ、何があったか | 会社(主語は書かない) | 年月と出来事の表 |
| 代表挨拶 | 代表の人柄と考え、約束 | 代表(一人称) | 400〜800字ほどの手紙のような文 |
| ブランドストーリー | なぜ今のやり方になったか | 店や会社(三人称でも一人称でもよい) | 出来事の流れを追う読み物 |
沿革に「念願の新社屋へ」と思いを書き込んだり、代表挨拶に会社の歴史をすべて書いたりすると、どちらも読みにくくなります。思いと出来事のつながりは、ブランドストーリーに任せます。
材料を集める質問
書き始める前に、創業者や古くからいる社員に話を聞き、材料を集めます。次の質問をそのまま使えます。
| 場面 | 質問 |
|---|---|
| 始まる前 | この仕事を始める前、何をしていましたか。そこで何が気になっていましたか |
| きっかけ | 始めようと決めた日や出来事を覚えていますか |
| 最初のころ | 最初のお客様は誰でしたか。最初に困ったことは何でしたか |
| つまずき | やめようと思ったことはありますか。何が苦しかったですか |
| 転機 | 今のやり方に変わったきっかけは何ですか。何を変え、何を残しましたか |
| 今 | 今、いちばん手間をかけていることは何ですか。それはなぜですか |
| これから | 10年後、どんな店や会社だと言われたいですか |
話を聞くときは、録音して書き起こすと、話し手の言い回しが残ります。「あのとき、こう言われた」という具体的な会話や、季節、場所、物の名前が出てきたら、必ず控えておきます。物語の手触りは、そうした細部から生まれます。
組み立ての型:5つの場面
集めた材料は、次の5つの場面に並べると、物語の筋が通ります。
| 場面 | 書くこと | 長い版での目安 |
|---|---|---|
| 1. 始まる前 | 何が気になっていたか、誰が困っていたか | 150〜250字 |
| 2. きっかけ | 始めると決めた出来事 | 150〜200字 |
| 3. つまずき | うまくいかなかったこと、迷ったこと | 150〜250字 |
| 4. 転機と今のやり方 | 何を変え、何を残したか。それが今の約束につながる | 200〜300字 |
| 5. これから | 読む人と、これからどう関わりたいか | 100〜150字 |
いちばん大切なのは、3と4のつながりです。つまずきを経て今のやり方に変わった、という流れがあると、今の商品やサービスに理由が生まれます。うまくいった話だけを並べると、宣伝の文章に見えてしまいます。
ブランドストーリーの例
ここでは、仮の店を置いて、5つの場面に沿った例を作ります。説明のための架空の例なので、自社の出来事に置き換えて読んでください。
たとえば、駅から少し離れた場所にある小さな洋菓子店のような店では
店主は、ホテルの厨房で長くお菓子を作っていました。宴会のたびに何百個ものケーキを仕上げながら、食べる人の顔を一度も見ないことが、ずっと気になっていたといいます。(始まる前)
ある日、近所の子どもの誕生日に頼まれてケーキを焼き、手渡したときに「また作って」と言われたことが、店を開くきっかけになりました。(きっかけ)
開店してしばらくは、ホテルと同じように種類を増やしましたが、売れ残りが多く、作る人の手も足りませんでした。(つまずき)
そこで種類を半分に減らし、その分、注文を受けてから仕上げる誕生日ケーキに手をかけることにしました。名前を入れるプレートの文字は、今も店主が一枚ずつ書いています。(転機と今のやり方)
これからも、食べる人の顔が浮かぶお菓子を、町の記念日のそばで作り続けたいと考えています。(これから)
この例では、「種類を半分に減らした」というつまずきからの決断が、「誕生日ケーキに手をかける」という今の約束の理由になっています。読んだ人は、品数が少ないことを欠点ではなく、店のやり方として受け取れます。
書くときの注意
美談に寄せすぎない
苦労や感動を大きく書きすぎると、読む人は身構えます。出来事は淡々と書き、気持ちを表す言葉は1場面に1つ程度にとどめます。
読む人の話につなげる
最後の場面は、店や会社の決意だけで終わらせず、読む人にとって何が変わるのかにつなげます。「だから、こういう方に来てほしい」「こういう相談なら任せてほしい」と書くと、次の行動に移りやすくなります。
人の名前と写真は了解を取る
最初のお客様や、創業を手伝った人の名前、昔の写真を載せるときは、本人や家族の了解を取ります。古い写真に写っている人や、撮った人の扱いも確かめます。写真を載せるときの同意の取り方はスタッフやお客様の写真をサイトに載せるときで説明しています。
事実の確かめ方と景品表示法
ブランドストーリーは読み物ですが、ホームページやパンフレットに載せれば、店や会社の広告の一部として読まれます。消費者庁の Q&A では、景品表示法の「表示」は、事業者が顧客を誘引する手段として自社の商品やサービスについて行う広告などで、チラシ、パンフレット、インターネットによるものなどが例として挙げられています。
景品表示法は、品質などの内容を実際のものより著しく優良であると示す表示(優良誤認)を禁じています。由来や製法の説明が、商品の良さを示す根拠として書かれていれば、この考え方が関わり得ます。たとえば、次のような書き方は事実と合っているかを必ず確かめます。
- 「創業〇年」「〇代続く」:年数と代の数を、登記や古い資料で確かめる
- 「創業当時から変わらない製法」:途中で変えたことがないか
- 「すべて手作り」「地元の素材だけ」:一部でも例外がないか
- 「〇〇の名店で修業」:経歴として確かめられるか
消費者庁は、表示の裏付けとなる合理的な根拠を示す資料の提出を求めることができ、出せなければ不当な表示とみなされる仕組みもあります。物語の中の事実は、確かめた資料を一緒に保管しておきます。言い伝えで確かめられない由来は、書かないか、「〜と伝えられています」のように確かめていないことが分かる書き方にします。
載せる場所と長さの使い分け
最初に長い版を書き、そこから削って短い版を作ると、どの場所でも話の筋がそろいます。
| 載せる場所 | 長さの目安 | 残す場面 |
|---|---|---|
| ホームページの専用のページ | 800〜1,200字 | 5つの場面すべて。写真を2〜3枚添える |
| ホームページのトップ | 100〜150字+専用のページへのリンク | きっかけと今のやり方 |
| 会社案内・パンフレットの1ページ | 400字ほど | きっかけ、つまずき、今のやり方 |
| 名刺の裏・ショップカード | 60〜100字 | 今のやり方の一文 |
| 商品のタグや包装の中の紙 | 100〜200字 | その商品にまつわる場面だけ |
ホームページでは、トップに短い版を置き、「私たちについて」などの専用のページへつなげる形が読みやすくなります。専用のページは、見出しを場面ごとに付けると、スマートフォンでも途中から読み進められます。ホームページの原稿全体の準備はホームページの原稿の書き方とテンプレートにまとめています。
書き上げたら確かめること
- 5つの場面がそろい、つまずきと今のやり方がつながっている
- 出来事が具体的で、別の店の名前に差し替えると通じなくなる
- 年数・由来・製法など事実の部分を、資料で確かめた
- 名前や写真を載せる人の了解を取った
- 代表挨拶や沿革と、同じ文がそのまま重なっていない
- 長い版から削った短い版を、載せる場所ごとに用意した
- 最後の段落が、読む人にとって何が変わるかにつながっている
ストーリーの中の一文を、キャッチコピーの材料にすることもできます。短い言葉の作り方は会社のキャッチコピーの作り方を参考にしてください。
Lapisデザインラボの「ブランド一式(ウェブページつき)」のプランでは、ヒアリングをもとにコピーライターが掲載する文章を書き、ウェブページの形にするところまでお受けしています。内容はサービスと料金をご覧ください。
よくある質問
ブランドストーリーと代表挨拶は、何が違いますか。
代表挨拶は、代表が一人称で、考えや約束を読む人に語りかける文章です。ブランドストーリーは、店や会社がどう始まり、何につまずき、なぜ今のやり方になったのかを、出来事の流れで伝える紹介文です。同じ出来事を使ってもかまいませんが、代表挨拶は「人と考え」、ブランドストーリーは「出来事の流れ」に重心を置くと書き分けられます。
ブランドストーリーは、どのくらいの長さにすればよいですか。
載せる場所で変えます。ホームページの専用のページなら800〜1,200字ほど、パンフレットの1ページなら400字ほど、名刺の裏やショップカードなら100字ほどが目安です。最初に長い版を書き、そこから削って短い版を作ると、どの版でも話の筋がそろいます。
ブランドストーリーに、少し脚色を加えてもよいですか。
出来事そのものを作ったり、年数や由来を事実と違えたりするのは避けます。景品表示法では、品質などを実際のものより著しく優良であると示す表示が禁じられており、由来や製法の説明も、商品やサービスの広告として読まれれば対象になり得ます。言葉の選び方や順番を整えるのはかまいませんが、事実は資料で確かめられる範囲にとどめます。