ブランディングのヒアリングで聞かれること|準備しておく資料
ブランディングを制作会社に頼むと、最初に「ヒアリング」と呼ばれる打ち合わせがあります。ヒアリングは、制作する側が会社やお店のことを知るための聞き取りです。何を聞かれるのか分からないまま臨むと、その場で考えた答えばかりになり、あとで「本当はそうではなかった」と話が戻ることがあります。
この記事では、ブランディングの最初のヒアリングで聞かれることを8つの分野に分け、質問の例をヒアリングシートの形でまとめます。あわせて、前もって用意しておく資料、出席する人の決め方、答えに詰まったときの考え方、終わった後に確かめることを説明します。ロゴだけを頼むときの伝え方はロゴを依頼する前に決めることで扱っているので、ここではロゴ・名刺・販促物・ホームページなどをまとめて頼む、ブランド全体のヒアリングに絞ります。
ヒアリングで聞かれる8つの分野
ブランド全体のヒアリングでは、見た目の好みより先に、事業の中身と、今の状態を詳しく聞かれます。
| 分野 | 制作側が知りたいこと | なぜ聞くか |
|---|---|---|
| 1. 事業 | 何を、誰に、どう提供しているか | ブランドが表すものの中心になる |
| 2. お客様 | どんな人が、どんな場面で選ぶか | 言葉と見た目の方向が決まる |
| 3. 強みと選ばれる理由 | ほかではなく自社が選ばれる理由 | 約束の根拠になる |
| 4. 競合 | よく比べられる相手、似せたくない相手 | 違いを出すための材料 |
| 5. 今の制作物 | ロゴ、名刺、サイト、看板などの現状と困りごと | 何を残し、何を作るかが決まる |
| 6. これから | 伸ばしたい事業、数年後の姿 | 先を見越した形にする |
| 7. 頼む理由 | なぜ今、ブランディングをするのか | ゴールと優先順位が決まる |
| 8. 条件 | 予算、期日、決める人、社内の体制 | 進め方と範囲が決まる |
7の「なぜ今頼むのか」は、意外と答えに詰まる質問です。採用を強くしたい、値上げに見合う見た目にしたい、代替わりや移転の節目に合わせたい、など、きっかけを一文で言えるようにしておきます。
ヒアリングシートの例
制作会社によっては、打ち合わせの前にヒアリングシートを送ってきます。送られてこない場合も、次の質問に前もって答えておくと、当日の話が深まります。全部を埋める必要はなく、空欄は当日に話せば大丈夫です。
事業とお客様
- 事業を一文で言うと、何をしている会社・店ですか
- 売上や仕事の量で、大きい順に主な商品・サービスを3つ挙げてください
- 主なお客様はどんな人・会社ですか。どこで自社を知りますか
- お客様が自社に頼む決め手は何ですか。言われてうれしかった言葉はありますか
- 反対に、断られた理由や、離れていったお客様の理由で思い当たることはありますか
強みと競合
- ほかの会社・店と比べて、自社にしかできないことは何ですか
- よく比べられる相手を2〜3挙げてください
- 似せたくない相手、印象が重なると困る相手はいますか
今の制作物
- 今のロゴ・名刺・ホームページ・看板で困っていることは何ですか
- 変えたくないもの(屋号、色、マークなど)はありますか。その理由は何ですか
- 今の制作物は、いつ、どこが作りましたか。元のデータは手元にありますか
これからと条件
- 3〜5年後、どんな会社・店だと言われたいですか
- 今回ブランディングをしようと思ったきっかけは何ですか
- 新しく作りたいもの、作り直したいものを挙げてください
- 予算の上限と、使い始めたい時期を教えてください
- 最終的に決めるのは誰ですか
見た目の好みは、最後に「好きな会社やお店の雰囲気」「こうはなりたくない雰囲気」を挙げる程度で十分です。好みを伝えるときの言葉の選び方は参考サイトの選び方と伝え方が参考になります。
前もって用意しておく資料
ヒアリングの前に、次の資料を集めておきます。実物があると、口で説明するよりずっと早く伝わります。
| 資料 | 何に使われるか | 用意の仕方 |
|---|---|---|
| 今の名刺・封筒・会社案内・チラシ | 今の見た目と言葉の確認 | 実物を1部ずつ |
| 今のロゴのデータ | 残す部分の確認、作り直しの元 | 元のデータ(印刷用の形式)があれば一緒に |
| 看板・車両・店内の写真 | 使われている場面の確認 | スマートフォンで撮った写真で十分 |
| 商品・サービスの一覧と価格表 | 事業の中身と価格の位置の確認 | 今使っているもの |
| お客様からの手紙・メール・問い合わせの文面 | 選ばれる理由の材料 | 個人が分かる部分は隠す |
| 競合の資料やサイトの一覧 | 違いの出し方の確認 | 名前とアドレスの一覧 |
| 沿革・創業のいきさつのメモ | 考え方や由来の材料 | 箇条書きでよい |
| 経営理念・社内の決まりごと | 言葉の土台 | あれば |
売上の数字や取引先の名前など、外に出したくない情報を渡すときは、秘密保持の約束を先に交わしておくと安心です。確かめる条項は制作会社と秘密保持契約(NDA)を結ぶときで説明しています。
社名や屋号、商品名を新しくする予定があるなら、それもヒアリングで伝えます。特許庁は、商標登録を受けないまま使っている名前でも、先に他社が同じような商標の登録を受けていれば、その商標権の侵害にあたる可能性があると説明しています。名前が変わるかどうかで作業の順番が変わるので、早めに共有しておきます。
当日の進め方と、出席する人
ヒアリングは、おおむね次のように進みます。
- 事前のシートの確認:書いた答えを読みながら、理由や具体的な場面を聞かれる
- 今の制作物を見る:実物を並べ、困っていること、残したいものを話す
- これからの話:数年後の姿と、今回のゴールを確かめる
- 条件の確認:予算、期日、決める人、次の打ち合わせの日程
出席するのは、最終的に決める人と、お客様と接している社員の2〜3人が目安です。決める人が出席しないまま進むと、後から方向が覆り、修正の回数と日程を失います。制作会社によっては、社員やお客様に別に話を聞く場を設けることもあります。
答え方のこつ
- 形容詞より出来事で答える:「信頼される会社です」より「10年続けて頼んでくれている取引先が3社ある」のほうが材料になる
- 分からないことは分からないと言う:その場で作った答えは、あとで覆りやすい
- 社内の意見の違いも伝える:意見が割れていること自体が、整理が必要な点として役に立つ
- お客様の言葉はそのまま伝える:言い回しを整えずに伝えると、後で文章に生かせる
- 予算は上限を正直に伝える:範囲の提案が現実的になる
ヒアリングの後に確かめること
打ち合わせが終わったら、話した内容がどう受け取られたかを確かめます。
- 制作会社から、ヒアリングのまとめ(議事録や要点の文書)が届いたか
- まとめに、自社の言葉と違う言い換えや、言っていないことが入っていないか
- 次の段階(調査、コンセプトの提案など)の内容と日程が示されたか
- 宿題になったことと、その期限
まとめの段階でずれを直しておけば、デザインの案が出てから「そういう意味ではなかった」となるのを防げます。依頼先を選ぶ段階の比べ方はブランディング会社の選び方で、見積もりに含まれる作業はブランディングを外注したときの費用相場で説明しています。
頼む前の準備のチェックリスト
- なぜ今頼むのかを一文で言える
- ヒアリングシートの質問に、分かる範囲で答えた
- 今の名刺・会社案内・ロゴのデータ・看板の写真をそろえた
- お客様に言われた言葉や、届いた手紙・メールを集めた
- よく比べられる相手と、似せたくない相手を挙げた
- 変えたくないものと、その理由を書いた
- 予算の上限と、使い始めたい時期を決めた
- 決める人が出席できる日に打ち合わせを入れた
- 外に出したくない資料は、秘密保持の約束を確かめてから渡す
Lapisデザインラボのブランドづくりは、ヒアリングと市場・競合の調査から始めます。プランごとの進め方と成果物はサービスと料金に載せています。
よくある質問
ブランディングのヒアリングには、どのくらい時間がかかりますか。
依頼先と範囲によって違いますが、最初の打ち合わせは1〜2時間ほどで、必要に応じて2回目や、社員・お客様への聞き取りが加わります。前もってヒアリングシートを埋めて渡しておくと、当日は答えの理由を深める話に時間を使えます。
ヒアリングで答えられない質問があったら、どうすればよいですか。
その場で無理に答えを作らず、「分からない」「社内で意見が割れている」と正直に伝えます。分からないこと自体が、整理が必要な点として役に立ちます。持ち帰って社員やお客様に聞き、次の打ち合わせまでに答えれば十分です。
ヒアリングには、誰が出席すればよいですか。
最終的に決める人は必ず出席します。そのうえで、お客様と接している社員を一人入れると、現場で言われている言葉や困りごとが出てきます。人数が多すぎると話が散らかるので、2〜3人が目安です。