ロゴを依頼する前に決めること|伝える情報とヒアリングシートの例

/ Lapisデザインラボ

ロゴの打ち合わせでよく起きるのは、「かっこよく」「親しみやすく」といった形容詞だけが行き交い、候補が出てから初めて「思っていたのと違う」となることです。デザイナーは頭の中を読めません。伝えるべきなのは完成図ではなく、ロゴが背負う事業の中身と、使われる場面です。

この記事では、ロゴを頼む前に社内で決めておくこと、デザイナーに伝える情報、そのまま使えるヒアリングシートの例をまとめます。見た目の好みをどう言葉にするか、参考のロゴをどう見せるかも扱います。依頼から納品までの全体の流れはロゴ制作の流れと期間で説明しているので、ここでは「依頼する前」に絞ります。

依頼の前に社内で決めておく3つのこと

デザイナーに会う前に、社内で答えを出しておきたいことが3つあります。ここが決まっていないと、打ち合わせのたびに議論が振り出しに戻ります。

1. 誰が最終的に決めるか

最も大事なのに、いちばん後回しにされるのがこれです。社長が決めるのか、共同経営者の合意が要るのか、家族経営で親の意見を聞くのか。候補を選ぶ場面と、修正の指示を出す場面に、決める人が必ず立ち会えるようにします。担当者が進めた案を最後に決裁者がひっくり返すと、修正の回数と日程の両方を失います。

2. ロゴに入れる名前の表記

正式な社名なのか、屋号なのか、略称なのか。「株式会社」を入れるか。漢字・ひらがな・英字のどれで見せるか。英字なら大文字か小文字か。これは意外と社内で割れます。名前の表記が途中で変わると、文字の組み方から作り直しになるので、先に決めておきます。

3. どこで使うか

名刺・看板・ホームページ・制服・車両・商品パッケージ・スタンプ・SNS のアイコンなど、使う場面を書き出します。小さな印鑑の大きさで使うなら細い線は潰れますし、横長の看板が主なら横に長い組み方が合います。使う場面は、形を決める一番の手がかりです。

デザイナーに伝える情報

社内で決めたことに加えて、次の情報を伝えます。形の注文よりも、事業の説明に時間を使うのがこつです。

伝える情報具体的に書くことなぜ要るか
事業の内容何を、誰に、どう提供しているか。一文で言うと何の会社かロゴが表すものの中心になる
お客様年齢層、地域、法人か個人か、どんな場面で選ばれるか好まれる雰囲気が変わる
競合よく比べられる会社・お店を2〜3社似すぎを避け、違いを出す
強み・大事にしていること選ばれる理由、創業の経緯、名前の由来形の意味づけの材料になる
避けたい印象安っぽく見られたくない、堅すぎるのは困る、など候補を絞り込む基準になる
使う場面上で書き出した一覧形・線の太さ・縦横の比率を決める
決まっている色や書体既存の看板の色、社内で使い続けたい書体残すものを最初に共有する
日程開業日・看板の発注日・名刺が要る日逆算して進め方を決める

名前の由来や創業のいきさつは、「こんな話をしても仕方がない」と思われがちですが、形の意味づけとして使えることが多い情報です。遠慮せずに伝えてください。

イメージの伝え方:形容詞を「比べる言葉」に置き換える

「信頼感」「温かみ」といった言葉は、人によって思い浮かべる形がまったく違います。伝わりやすくするには、2つの言葉のあいだのどこかで答える方法が役に立ちます。

どちら寄りか←→
印象堅実・きちんと親しみ・気軽
時代感伝統・老舗らしさ新しさ・今らしさ
表情落ち着いた・静か元気・動きがある
価格の印象手の届きやすさ上質・特別感
線細く繊細太く力強い

それぞれ5段階の「3より左」「かなり右」のように答えるだけで、デザイナーが受け取る情報はずっと具体的になります。社内の数人で別々に答えてもらい、ずれた項目を話し合うと、社内の認識合わせにもなります。

参考のロゴは「どこが好きか」を添えて

好きなロゴや、逆に避けたいロゴを見せるのは有効です。ただし、画像を渡すだけでは「これと同じものを作ってほしい」と受け取られかねません。色が好き、線の細さが好き、文字の丸みが好きのように、好きな部分を言葉で添えます。

形をそのまま真似たロゴは、他社の権利とぶつかるおそれがあります。商標は、同じか似た商標を同じか似た商品・サービスに使うと、先に登録した他社の権利の侵害にあたる可能性があると特許庁も説明しています。参考はあくまで方向を伝えるためのものと考えてください。候補が固まったら、特許庁のJ-PlatPatで似た登録が無いか調べる流れも、あわせて確認しておくと安心です。登録を考える場合の進め方はロゴの商標登録は必要かにまとめています。

ヒアリングシートの例

そのまま社内で埋めて、デザイナーに渡せる形にしました。全部を埋める必要はありません。空欄が多い項目は、打ち合わせで聞いてもらえば大丈夫です。

  1. 会社名・屋号、ロゴに入れる表記(漢字・かな・英字、法人の種類を入れるか)
  2. 事業を一文で言うと何か
  3. 主なお客様(誰が、どんな場面で選ぶか)
  4. よく比べられる会社・お店(2〜3社)
  5. 選ばれている理由、ほかと違うところ
  6. 名前の由来、創業のいきさつ、大事にしている言葉
  7. 上の表の5項目の答え(どちら寄りか)
  8. 好きなロゴ・避けたいロゴと、その理由
  9. 使う場面の一覧(大きい順・よく使う順)
  10. 残したい色・書体、変えたくないもの
  11. 決める人と、打ち合わせに出る人
  12. 必要な日(開業日、看板・名刺の発注日)

依頼するときに確かめておくこと

情報の準備とあわせて、依頼の条件も最初に確かめておきます。後から揉めやすいのは次の4点です。

  • 候補の数と修正の回数:何案出てきて、何回まで直せるか。回数を超えたときの扱い
  • 受け取るデータ:どの形式のファイルを、カラーと白黒の両方で受け取れるか(形式の違いはロゴのデータ形式を参照)
  • 著作権の扱い:代金の支払い後に譲渡されるか、自由に使えるか(ロゴの著作権は誰のものかを参照)
  • 費用に含まれる範囲:名刺やガイドまで含むのか、ロゴだけか(考え方はロゴデザインの費用は何で決まるかを参照)

準備で差が出るのは「最初の打ち合わせ」

ヒアリングシートを埋める作業は、デザイナーのためだけのものではありません。事業を一文で言う、競合との違いを書く、という作業そのものが、会社の考え方を言葉にする機会になります。ここで出てきた言葉は、ロゴだけでなく、名刺の肩書きやホームページの見出しにもそのまま使えます。

Lapisデザインラボでは、ヒアリングと市場・競合の調査で「何を伝える会社か」を言葉にしてから形にしています。進め方と含まれるものはサービスと料金でご覧いただけます。

よくある質問

ロゴのイメージがまったく浮かんでいなくても依頼できますか。

できます。形のイメージよりも、事業の内容・お客様・競合・大事にしている考え方を伝えるほうが、デザイナーにとって役に立ちます。見た目の好みは、候補を見てから「近い・遠い」で答えれば十分です。

参考にしたいロゴがある場合、見せてもよいですか。

見せてかまいません。ただし「このロゴのどこが好きか(色・線の太さ・文字の雰囲気など)」を言葉で添えてください。形をそのまま真似ることは頼まないようにします。似すぎたロゴは、他社の商標とぶつかるおそれがあるためです。

社内の誰が打ち合わせに出るべきですか。

最終的に決める人が、最初の打ち合わせと候補の選定には必ず出るのが理想です。担当者だけで進めて最後に決裁者が覆すと、修正の回数を使い切ってしまうことがあります。

参考にした資料

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