会社の沿革の書き方|載せる出来事と年表の形
沿革は、会社がいつ始まり、どのような節目を経て今に至ったかを、年表の形で示すものです。取引先が初めて会社を調べるとき、求職者が応募を考えるとき、金融機関や行政の担当者が会社を確かめるときに、会社概要とあわせて読まれます。
ただ、いざ書こうとすると「どの出来事まで載せるか」「和暦と西暦のどちらにするか」「歴史が浅いと寂しく見えないか」と迷うところが多いページでもあります。
この記事では、沿革に載せる出来事の選び方、年表の形の使い分け、1行の書き方の決まり、和暦と西暦のそろえ方を、仮の会社を置いた例とともに説明します。会社概要のページ全体の項目と並べ方はホームページの会社概要の書き方で扱っているので、ここでは沿革そのものを詳しく見ていきます。
沿革をどこに載せるか
沿革を載せる場所は、主に次の3つです。場所によって、書く量と詳しさを変えます。
| 載せる場所 | 読む人 | 書き方の目安 |
|---|---|---|
| ホームページの会社概要の中 | 取引先、初めて調べる人 | 節目だけを5〜10行ほど。年月と出来事の表 |
| ホームページの独立した沿革のページ | 会社をよく知りたい人、求職者 | 時代で区切り、写真や短い説明を添えてもよい |
| 会社案内(印刷物)・採用パンフレット | 商談の相手、応募を考える人 | 紙面に合わせて要点だけ。ホームページと内容をそろえる |
出来事が10行を超えるくらいになったら、会社概要の中では主な節目だけを残し、全体は独立した沿革のページに移すと読みやすくなります。
載せる出来事の選び方
沿革に載せるのは、会社の形か、仕事の中身が変わった節目です。
| 区分 | 出来事の例 |
|---|---|
| 載せる | 創業、会社の設立・法人化、社名の変更、本店の移転、新しい事業の開始、許認可の取得、支店・工場・店舗の開設、代表者の交代、合併や分社 |
| 迷ったら載せる | 公的な認定や登録、主な設備の導入、事業からの撤退(今の事業の範囲を正しく伝えるため) |
| 載せるなら確認が要る | 取引先や納入先の名前(相手の了承を取る)、賞の受賞(正式な名前と年を確かめる) |
| 載せない | 社内の行事、小さな改装、売上の推移、人の入れ替わり(代表者を除く) |
「創業」と「設立」は分けて書きます。個人で始めた年が創業、会社として登記した年月が設立です。株式会社は、本店の所在地で設立の登記をすることによって成立するとされています(会社法第49条)。設立の年月は、登記事項証明書で確かめておくと間違いがありません。
年表の形の使い分け
沿革の形には、主に3つあります。
| 形 | 向いている場合 | 注意すること |
|---|---|---|
| 年月と出来事の2列の表 | 会社概要の中、出来事が少ない会社 | 1行に1件。説明は書きすぎない |
| 年ごとの見出しの下に出来事を並べる | 同じ年に出来事が重なる会社 | 年の見出しがない年は飛ばしてよい |
| 時代で区切る(創業期・拡大期など) | 歴史が長い会社の独立したページ | 区切りの名前は短く。各時代に1〜2文の説明を添える |
ホームページでは、2列の表がもっとも読みやすく、スマートフォンでも崩れにくい形です。時代で区切る形は、写真や当時の様子を添えたい会社案内や、周年の記念のページに向いています。
1行の書き方の決まり
沿革は、1行ずつの書き方をそろえるだけで、ぐっと読みやすくなります。
- 1行に1件:「本店を移転し、同時に工場を開設」のように2件をつなげない
- 主語は書かない:「当社は」を省き、出来事だけを書く
- 語尾をそろえる:「〜を開始」「〜を開設」のように名詞で終えるか、「〜を開始する」で終えるかを統一する
- 当時の名前で書く:社名や事業所の名前は、その時点の名前で書く(「〇〇商店として創業」)
- 所在地は市区町村まで:番地まで書く必要はない
- 年月の形をそろえる:「2015年4月」と「2015.4」を混ぜない
良い例と良くない例を比べます。
- 良い例:「2018年10月 本店を京都市〇〇区に移転」
- 良くない例:「2018年秋頃 手狭になったため、念願だった新社屋へ移転しました!」
良くない例は、時期があいまいで、理由と感想が混ざっています。移転の理由や思いを伝えたいときは、沿革ではなく代表あいさつで語るほうが向いています(代表挨拶の書き方)。
和暦と西暦のそろえ方
和暦と西暦は、どちらを使っても構いません。大事なのは、1つの沿革の中で統一することと、会社案内・ホームページ・採用の資料のあいだでもそろえることです。
| 書き方 | 向いている場合 | 例 |
|---|---|---|
| 西暦だけ | ホームページ。年数の差が計算しやすく、海外の取引先にも伝わる | 2019年5月 |
| 和暦だけ | 官公庁への提出書類に合わせたい会社案内 | 令和元年5月 |
| 西暦に和暦を添える | 和暦に慣れた読み手が多いが、ホームページでも分かりやすくしたい | 2019年(令和元年)5月 |
和暦で書くときに気をつけたいのが、元号が変わった年です。元号を令和に改める政令は、平成31年4月30日の翌日から施行されています。つまり2019年は、4月までが平成31年、5月からが令和元年です。同じ2019年の出来事でも、月によって元号が変わるので、和暦だけで書く場合は月まで確かめてから書きます。
沿革の例
ここでは、地域で設備の工事を手がける会社を仮に置いて、沿革の例を作ってみます。社名や地名は架空のものです。
| 年月 | 出来事 |
|---|---|
| 1987年4月 | 〇〇市で〇〇設備として創業。住宅の給排水の工事を開始 |
| 1995年6月 | 株式会社〇〇設備を設立 |
| 2003年9月 | 建設業の許可を取得 |
| 2011年4月 | 空調設備の工事を開始 |
| 2016年10月 | 本店を〇〇市△△町に移転 |
| 2020年4月 | 〇〇市に営業所を開設 |
| 2024年7月 | 代表取締役に〇〇 〇〇が就任 |
この例では、創業と設立を分け、事業の広がり(給排水から空調へ)と、会社の形の変化(法人化・移転・営業所・代表の交代)だけを並べています。読み手は、これだけで「どのくらい続いていて、今は何をしている会社か」をつかめます。
歴史が長い会社と短い会社の見せ方
歴史が長い会社は、出来事をすべて並べると長くなりすぎます。会社概要の中には主な節目を5〜10行ほど載せ、全体は独立したページで時代ごとに区切って見せます。創業のころの写真や、当時の看板・商品の写真があれば、時代の区切りごとに1枚ずつ添えると、歴史の重みが伝わります。周年の節目に合わせて沿革のページを整える場合は、周年記念ロゴの作り方と使う期間もあわせて参考にしてください。
設立して間もない会社は、無理に出来事を増やす必要はありません。会社概要に設立の年月だけを載せ、会社の歩みや始めたきっかけは代表あいさつで語る形で十分です。創業の前に個人で同じ仕事をしていた期間があるなら、「〇〇年から個人で〇〇の仕事を始め、〇〇年に法人化」と書くと、経験の長さが正しく伝わります。
古くしないための更新の手順
沿革は、一度作ると更新を忘れやすいページです。次のように決めておくと、古いまま残るのを防げます。
- 更新する担当を決める:会社概要と同じ担当にする
- 更新するきっかけを決める:代表者の交代、移転、拠点の開設、許認可の取得、社名の変更があったとき
- 年に1回は見直す:決算のあとなど、時期を決めて会社概要とあわせて確かめる
- 根拠の書類と照らす:登記事項証明書、許可証、届け出の控えで、年月と名前を確かめる
- ほかの資料にも反映する:会社案内、採用のページ、提案書のひな形の沿革も直す
公開前のチェックリスト
- 創業と設立を分けて書いた
- 会社の形か仕事の中身が変わった節目だけに絞った
- 1行に1件で、語尾と年月の形がそろっている
- 和暦と西暦のどちらかに統一し、元号が変わった年の月を確かめた
- 社名や事業所の名前は、その時点の名前で書いた
- 取引先の名前や受賞を載せる場合は、了承と正式な名前を確かめた
- 会社案内・採用の資料の沿革と内容がそろっている
まとめ
- 沿革には、会社の形か仕事の中身が変わった節目を、1行に1件で載せる
- ホームページでは年月と出来事の2列の表が読みやすい
- 和暦と西暦はどちらでもよいが、統一する。元号が変わった年は月まで確かめる
- 歴史が短いうちは、会社概要の設立の年月と代表あいさつで足りる
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よくある質問
沿革は和暦と西暦のどちらで書けばよいですか。
どちらでも構いませんが、1つの沿革の中では統一します。ホームページは西暦を主にすると、年数の差が計算しやすく、海外の取引先にも伝わります。官公庁との取引が多いなど和暦に慣れた読み手が多い場合は、西暦に和暦を括弧で添える形もあります。
沿革にはどんな出来事を載せればよいですか。
創業・設立、社名の変更、本店の移転、事業の開始、許認可の取得、拠点の開設、代表者の交代など、会社の形や仕事の中身が変わった節目を載せます。社内の行事や小さな出来事は載せず、1件を1行で言い表せるものに絞ります。
設立して間もない会社でも沿革は必要ですか。
必ず要るものではありません。項目が少ないうちは、会社概要に設立の年月だけを載せ、会社の歩みは代表あいさつの中で語る形でも十分です。出来事が増えてきたら、沿革として独立させます。