社名変更で作り直すものの一覧|名刺・看板・サイトの順番
社名や屋号を変えると、名刺・封筒・請求書・ホームページ・看板・制服など、社名が入っているものをすべて作り直すことになります。数が多いので「何から手を付けるか」で迷いがちですが、実務で大事なのは量よりも順番です。新しい社名を名乗り始める日に何がそろっていなければならず、何は後からでよいのかを分けておくと、作り直しは落ち着いて進められます。
この記事では、社名変更・屋号変更のときに作り直すものを、新しい社名に変わる日に間に合わせるもの・1か月ほどの間に替えるもの・次の作り替えに合わせるものの3つに分けて一覧にし、変わる日から逆算した進め方をまとめます。あわせて、ロゴを作り直すかどうかの判断と、旧社名を併記する期間の決め方も説明します。
なお、作り直しにかかる費用の洗い出し表と支払いの順番はロゴを作り直すときの費用と差し替えの段取りに、ホームページの中で直す場所の細かな一覧は移転・社名変更のときにホームページで直すところにまとめています。ここでは、その手前の「全体をどの順で切り替えるか」に絞ります。
社名変更は「変わる日」から逆算する
株式会社の場合、商号(会社の名前)は定款に書かれているため、社名を変えるには株主総会の決議で定款を変更します(会社法第466条。決議の要件は同法第309条第2項)。商号は登記事項なので、変更が生じたら2週間以内に本店の所在地で変更の登記をします(同法第915条)。申請書の様式と記載例は、法務局のサイトに「株式会社変更登記申請書(商号の変更)」として載っています。手続きの細かな進め方は、司法書士や管轄の法務局で確かめてください。
デザインの準備で押さえておきたいのは、新しい社名に変わる日(効力が生じる日)がはっきり決まるという点です。その日から、取引先に渡す名刺や請求書は新しい社名であるべきです。そこで、作り直しはこの日を起点に逆算して組み立てます。
| 時期の目安 | 進めること |
|---|---|
| 3〜4か月前 | 新しい社名の候補を絞り、商標とドメインを確かめる。同じ本店の所在地に同じ商号が登記されていないかも確かめる |
| 2〜3か月前 | ロゴ(少なくとも文字の部分)を決める。色と書体の決まりもあわせて整える |
| 2か月前 | 作り直すものを洗い出し、看板・制服・車両など時間のかかるものの見積もりを取る |
| 1か月前 | 名刺・封筒・書類のひな形を作り、ホームページの差し替えを準備する(公開はまだしない) |
| 2〜3週間前 | 取引先・お客様へのお知らせを送る |
| 変わる日 | 名刺・書類・ホームページ・メールの署名を一斉に切り替える |
| 変わった後 | 看板・車両・制服などを順に替え、在庫を使い切ったものから切り替える |
商業登記法第27条では、他人がすでに登記した商号と同じで、本店の所在地も同じ場合には登記できないとされています。商標は、特許庁が所管する独立行政法人工業所有権情報・研修館(INPIT)の特許情報プラットフォーム(J-PlatPat)で調べられます。新しい名前の決め方そのものは店名・商品名のネーミングを頼むときで扱っています。
作り直すものの一覧と、間に合わせる時期
社名が入っているものを、変わる日との関係で3つに分けます。
| 分類 | 作り直すもの | この時期にする理由 |
|---|---|---|
| 変わる日までに | 名刺、請求書・見積書・納品書のひな形、契約書や申込書のひな形、ホームページの社名とロゴ、メールの署名、社名入りのゴム印・印鑑 | 取引の書類と人に渡すものは、変わる日から新しい社名で出すため |
| 変わる日までに | 問い合わせフォームの自動返信、電話の応答の文言、Googleマップの店舗情報、SNS のプロフィール | 初めての人が社名を確かめる場所で、食い違いが起きやすいため |
| 1か月ほどの間に | 看板・袖看板・ガラスのシート、会社案内・パンフレット、求人票・採用のページ、封筒 | 製作や手続きに時間がかかる。外から見えるので長く放っておかない |
| 次の作り替えに合わせて | 制服・名札、車両の表示、ノベルティ、商品のラベル、社内の書類 | 費用が大きいか、在庫がある。期間を決めて順に替える |
封筒は在庫を使い切ってから替えたくなりますが、請求書を入れる封筒の社名と中の書類の社名が違うと受け取った側が戸惑います。旧社名の封筒を使う期間を決め、その間は書類の側に新旧の両方を載せるなどの工夫が要ります。
なぜ「名刺と書類 → サイト → 看板」の順なのか
順番の考え方は、相手が社名を確かめる場面に近いものから替えることです。
- 名刺と書類:取引先は、名刺と請求書で社名を確かめ、支払いや登録の情報を直します。ここが遅れると、振り込みや契約の名義の食い違いにつながります
- ホームページとメールの署名:お知らせを受け取った人が、次に確かめに来る場所です。変わる日の前に作っておき、当日に公開します
- 看板:外から見えるので早く替えたいところですが、製作と取り付けに時間がかかり、自治体によっては屋外広告物の許可や届け出が要ります。変わる日に間に合わない場合は、「旧社名」を添えた仮の表示で補う方法もあります
- 制服・車両・在庫のあるもの:費用が大きいものは、次の作り替えの時期に合わせて順に替えます
逆に、看板や車両を先に替えてしまい、名刺や書類が旧社名のままという順番は、外から見える社名と取引の書類の社名が食い違う期間を長くしてしまいます。
ロゴは作り直すか:屋号変更のときも同じ考え方
社名や屋号を変えるとき、ロゴをどこまで作り直すかは、今のロゴの形で決まります。
| 今のロゴの形 | 作り直しの範囲 | 考えること |
|---|---|---|
| 社名の文字だけでできている(ロゴタイプ) | 作り直し | 書体や色を引き継ぐと、前の印象を残せる |
| シンボルマークと社名の文字の組み合わせ | 文字の部分だけ差し替えも可 | マークを残せば、覚えてもらっている目印を引き継げる |
| マークが旧社名の頭文字や意味から作られている | 全体の作り直しを検討 | 新しい社名とマークの意味がずれないか |
| 社名を変える理由が事業の転換 | 全体の作り直しを検討 | 新しい方針を伝えるために変えるのか |
屋号(個人事業の店や事務所の名前)を変える場合も、ロゴの考え方は同じです。手続きの面では、個人の商人は商号を登記することが「できる」とされていて(商法第11条第2項)、登記していない屋号には商号の変更登記はありません。登記している場合は変更の手続きが要るので、窓口で確かめてください。ロゴを変えるかどうか迷うときの判断の目安は、ロゴを変えるべきタイミングにまとめています。
旧社名を併記する期間を先に決める
社名を変えてしばらくは、取引先やお客様が新しい社名で検索したり、電話口で名乗られて戸惑ったりします。そこで、名刺・ホームページ・看板に旧社名を添える期間を設けておくと、こうした戸惑いを減らせます。
- 良い例:「株式会社〇〇(旧社名:△△商事株式会社)」と、新しい社名を主にして旧社名を小さく添える
- 良くない例:新旧の社名を同じ大きさで並べ、どちらが今の社名か分からない
- 良くない例:期間を決めずに併記を続け、数年たっても「旧社名」が残っている
併記の期間に決まった長さはありません。次の名刺の刷り直しまで、次の決算期まで、のように終わりの時期を最初に決め、その時期が来たら名刺・サイト・看板の併記をまとめて外します。
取引先へのお知らせには、次の項目を入れると問い合わせが減ります。
- 新しい社名と、変わる日
- 変わらないもの(住所・電話番号・代表者・取引の条件・振込先の口座番号など)と、変わるもの(口座の名義、メールアドレスなど)
- 請求書や契約書の名義をいつから新しい社名にしてほしいか
- 問い合わせの窓口
切り替えの前のチェックリスト
- 新しい社名に変わる日が決まり、社内のだれもが知っている
- 商標・ドメイン・同じ所在地の同じ商号を確かめた
- ロゴの作り直しの範囲(全体か、文字だけか)を決めた
- 作り直すものを「変わる日までに・1か月ほどの間に・次の作り替えに合わせて」の3つに分けた
- 名刺と書類のひな形が、変わる日の前に手元にそろう
- ホームページの差し替えを準備し、変わる日に公開する段取りがある
- 看板の製作と、必要な許可や届け出の時期を確かめた
- 旧社名を併記する期間の終わりを決めた
- 取引先へのお知らせに、変わらないものと変わるものを書いた
まとめ
- 社名変更の作り直しは、新しい社名に変わる日から逆算して組み立てる
- 名刺・書類・ホームページ・メールの署名は変わる日までに、看板は1か月ほどの間に、制服や車両は次の作り替えに合わせて替える
- ロゴは、社名の文字だけのロゴなら作り直し、マークがあれば文字だけの差し替えも選べる
- 旧社名の併記は、終わりの時期を最初に決めておく
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よくある質問
社名変更のとき、名刺や看板はいつまでに作り直せばよいですか。
名刺や請求書などの書類は、新しい社名に変わる日(効力が生じる日)から使えるように用意しておくのが安全です。看板や車両のように製作に時間がかかるものは、変わる日に間に合わなければ、期間を決めて順に替えていく形でも構いません。
屋号を変えたら、ロゴも作り直す必要がありますか。
ロゴに屋号の文字が入っているなら、少なくとも文字の部分は作り直しになります。シンボルマークと文字を組み合わせたロゴなら、マークを残して文字だけ差し替える方法もあり、覚えてもらっている目印を引き継げます。
旧社名はいつまで併記すればよいですか。
決まった期間はありません。取引先やお客様が新しい社名を覚えるまでの間として、たとえば次の名刺の刷り直しまで、次の決算期までのように、終わりの時期を先に決めておくと、併記が残り続けるのを防げます。