制作会社のコンペの進め方|提案を比べる採点表と結果の伝え方
ホームページの制作会社を選ぶとき、何社かに同じ依頼をして提案を出してもらい、比べて1社を選ぶ方法があります。これをコンペ(コンペティションの略。提案の比べ合い)と呼びます。提案の中身まで比べられるので、見積もりの金額だけで選ぶよりも、自社に合う会社を見つけやすくなります。
一方で、進め方を決めずに始めると、各社に伝えた条件がばらばらになったり、提案の場の印象で決まってしまったりして、何を比べたのか分からなくなります。
この記事では、コンペの全体の流れ、条件のそろえ方、提案料とデザイン案の扱い、採点表の作り方、提案の場の進め方、決め方、結果の伝え方を説明します。各社に渡す依頼の文書はホームページ制作の提案依頼書(RFP)の書き方に、見積もりの比べ方はホームページの相見積もりの取り方にまとめているので、ここではコンペ全体の進め方に絞ります。
コンペが向く場合、向かない場合
| コンペが向く | 見積もりの比較で足りる | |
|---|---|---|
| サイトの規模 | ページが多い、機能がある | 数ページの小さなサイト |
| 決めたいこと | 構成や見せ方の考え方まで比べたい | 作るものがほぼ決まっていて、費用と条件を比べたい |
| 社内の決め方 | 複数の人が関わり、選んだ理由を説明する必要がある | 社長が1人で決める |
| かけられる時間 | 提案の準備と比べる時間を、数週間単位で取れる | すぐに依頼先を決めたい |
作るものがほぼ決まっているなら、コンペまでせず、同じ条件で見積もりを取って比べるほうが早く済みます。
コンペの全体の流れ
| 段階 | やること | 気をつけること |
|---|---|---|
| 1. 準備 | 目的と条件を決め、採点表を作る | 採点表は依頼を出す前に作る |
| 2. 声をかける | 候補を2〜3社に絞り、参加を打診する | 提案料の有無を最初に伝える |
| 3. 依頼を渡す | 提案依頼書を同じ日に渡す。説明の場を設けることも | 全社に同じ情報を同じ形で |
| 4. 質問を受ける | 締め切りまでに質問を受け、答えを全社に共有する | 1社だけに答えない |
| 5. 提案を受け取る | 締め切りの日に、決めた形で受け取る | 遅れた提案の扱いを決めておく |
| 6. 提案の場 | 各社に説明してもらい、質問する | 時間と出る人を全社でそろえる |
| 7. 採点と決定 | 採点表で比べ、社内で決める | 足切りの条件を先に確かめる |
| 8. 結果を伝える | 選んだ会社と条件を詰め、他社に結果を伝える | 約束した日までに |
提案の準備には時間がかかります。依頼を渡してから提案の締め切りまでは、各社が無理なく準備できる日数を取ります。日数は、参加を打診するときに相手の都合を聞いて決めると無理がありません。
条件をそろえる
コンペでいちばん大事なのは、各社が同じ条件で提案できるようにすることです。提案の差が、会社の力の差なのか、渡した情報の差なのか分からなくなると、比べる意味がなくなります。
- 提案依頼書は、全社に同じものを同じ日に渡す
- 説明の場(依頼の内容を説明する場)を設けるなら、全社を同じ回に集めるか、同じ内容を同じ時間で個別に話す
- 質問は締め切りを決めて受け、1社から受けた質問と答えは、全社に同じ形で共有する
- 予算の幅、公開したい時期、提案に含めてほしい項目を書いておく
- 提案書の形(ページ数の目安、見積もりの欄の分け方)を指定する
途中で条件が変わったときは、全社に同時に知らせ、必要なら締め切りを延ばします。
提案料と、デザイン案の扱い
コンペでは、提案を無料で出してもらうことが多いですが、何をどこまで求めるかで、相手の負担は大きく変わります。
| 求めるもの | 負担 | 扱いの例 |
|---|---|---|
| 進め方、構成案、見積もり | 中くらい | 無料で頼むことが多い |
| デザインの方向性の説明(参考や言葉で) | 中くらい | 無料の範囲にとどめることが多い |
| トップページなどのデザイン案 | 大きい | 提案料を払うか、求めない |
デザイン案まで求めるなら、提案料を払うと先に示すのが誠実です。どちらの場合も、提案料の有無と金額は、参加を打診する時点で書面で示します。後から伝えると、選ばなかった会社とのあいだで行き違いになります。
提案書やデザイン案は、それを作った会社の著作物です。著作権法では、著作権の享有には登録などの手続きが要らないとされています(第17条第2項)。選ばなかった会社の提案を、選んだ会社に渡して「この感じで」と頼むことはしません。選ばなかった会社への連絡と、預かった提案の扱いは制作会社の提案を断るときで説明しています。
参加する相手が個人で仕事を受けるフリーランスで、有料で提案やデザインの作業を頼む場合は、フリーランス・事業者間取引適正化等法により、仕事の内容、報酬の額、支払期日などを、書面かメールなどで明示する必要があります。
採点表を作る
採点表は、提案を受け取る前に作ります。提案を見てから観点を決めると、印象のよかった会社に合わせた観点になりがちです。
観点と重みを決める
| 観点 | 重み | 見ること |
|---|---|---|
| 目的の理解 | 3 | 自社の困りごとと目的を、自分の言葉で言い直せているか |
| 構成と見せ方の提案 | 3 | 見てほしい人に合っているか。理由が示されているか |
| 公開後の運用 | 2 | 社内で更新できる範囲、保守の中身 |
| 体制と日程 | 2 | 担当者が明確か。無理のない日程か |
| 費用 | 2 | 制作費と月額の合計。含まれるもの・含まれないもの |
| 進めやすさ | 1 | 質問への答えの早さと分かりやすさ |
重みは、自社が何を重く見るかで決めます。上の表は形の例です。観点を増やしすぎず、上の表くらいの数に絞ると、採点する人が迷いません。
点の付け方をそろえる
点の付け方を採点する人のあいだでそろえておかないと、同じ提案でも人によって点が大きくずれます。
| 点 | 意味 |
|---|---|
| 5 | 期待を超える。具体的で、自社の事情に合わせてある |
| 3 | 求めたことに、過不足なく答えている |
| 1 | 答えていない、または一般論にとどまる |
4と2は、その間とします。
記入例
| 観点 | 重み | 候補1 | 候補2 | 候補3 |
|---|---|---|---|---|
| 目的の理解 | 3 | 〇 | 〇 | 〇 |
| 構成と見せ方の提案 | 3 | 〇 | 〇 | 〇 |
| 公開後の運用 | 2 | 〇 | 〇 | 〇 |
| 体制と日程 | 2 | 〇 | 〇 | 〇 |
| 費用 | 2 | 〇 | 〇 | 〇 |
| 進めやすさ | 1 | 〇 | 〇 | 〇 |
| 合計(点×重み) | 〇〇 | 〇〇 | 〇〇 | |
| 気になった点 | 〇〇 | 〇〇 | 〇〇 |
各欄に1〜5の点を入れ、重みを掛けて合計します。採点する人ごとに1枚ずつ記入し、合議の前に見せ合わないようにすると、声の大きい人の意見に引っぱられにくくなります。点数のほかに、「気になった点」を言葉で書いておくと、合議で話がかみ合います。
足切りの条件は点数の外に置く
次のような、外せない条件は点数に混ぜず、先に満たしているかを確かめます。
- 予算の上限に収まっているか(範囲を絞れば収まるか)
- ドメインとサーバーを自社の名義で持てるか
- 完成したサイトのデザインや文章を、自社で使い続け、直していける契約か
- 公開したい日に間に合うか
満たしていない会社は、点数が高くても、条件を変えられるかを確かめてから判断します。
提案の場(プレゼン)の進め方
各社に提案を説明してもらう場を設ける場合は、次のことをそろえます。
- 時間を同じにする:説明と質疑の時間を決め、全社に同じ時間を取る
- 出る人を同じにする:採点する人は、全社の提案の場に出る。決める人も出る
- 質問を先に用意する:全社に同じ質問をし、そのうえで提案ごとの質問をする
- 担当する人に来てもらう:営業の担当だけでなく、実際に制作を担当する人の話を聞く
- 採点はその日のうちに:記憶が新しいうちに、各自が採点表に記入する
全社に聞く質問の例です。
- この提案で、いちばん大事にしたことは何か
- 当社の担当は誰で、途中で代わることはあるか
- 原稿と写真は、どこまでを当社が用意する前提か
- 予算を超えそうなときは、何を後回しにする提案か
- 公開した後、当社で直せる範囲はどこまでか
決め方
採点表の合計は、比べるための材料です。合計の差が小さいときは、点数だけで決めず、「気になった点」の欄と、提案の場での答えを見直します。
社内で意見が割れたら、最初に決めた目的に戻ります。「この提案は、いちばん大事な目的にどう効くか」を比べると、好みの話から離れられます。点数と違う会社を選ぶ場合は、その理由を言葉にして記録しておくと、後から社内で説明できます。
結果の伝え方
- 選んだ会社に先に伝える:発注の意思を伝え、範囲、費用、日程、名義などの条件を詰める
- 条件が固まったら、選ばなかった会社に伝える:約束した日を過ぎないようにする。決まるのが遅れるなら、先にその旨を知らせる
- 伝えるのは結果とお礼、決め手を一言:他社の金額や提案の中身は伝えない
- 提案料を払う約束があれば、選ばなかった会社にも払う
断りの連絡の例文は制作会社の提案を断るときにまとめています。
よくある失敗
- 採点表を提案の後に作る:印象のよかった会社に合わせた観点になる
- 1社だけに追加の情報を伝える:比べる前提が崩れる
- 無料でデザイン案まで求める:参加を断られたり、提案の質が下がったりする
- 提案の場に決める人が出ない:後から覆り、やり直しになる
- 結果を伝えないまま放っておく:相手は予定を空けて待ち続ける
コンペを始める前のチェックリスト
- コンペにするか、見積もりの比較で足りるかを決めた
- 声をかける会社を2〜3社に絞った
- 提案料の有無と、求める提案の範囲を書面にした
- 提案依頼書と採点表を、依頼を出す前に作った
- 質問の締め切りと、答えを全社に共有する方法を決めた
- 提案の場の時間、出る人、全社に聞く質問を決めた
- 足切りの条件を決めた
- 結果を伝える日を決め、各社に伝えた
Lapisデザインラボでも、提案依頼書をお送りいただければ、それに沿ってご提案します。料金の目安はプランと料金に載せています。
よくある質問
ホームページ制作のコンペには、何社に声をかければよいですか。
2〜3社が扱いやすい数です。提案の準備には制作会社の手間が大きくかかり、こちらも提案を読み込み、提案の場に立ち会う時間が要ります。声をかける前に、実績や対応の範囲で候補を絞っておきます。
コンペでデザイン案まで出してもらってよいですか。
デザイン案まで求めると、制作会社の負担は大きくなります。求めるなら、提案料を払うことを先に示すか、無料の範囲を構成案やデザインの方向性の説明までにとどめます。どちらにするかは、提案を頼む前に書面で示しておきます。
採点表の点数がいちばん高い会社に決めなければいけませんか。
点数は、社内の意見をそろえて比べるための道具で、点数だけで機械的に決める必要はありません。ただし、決め手が点数と違う場合は、その理由を社内で言葉にしておきます。名義や著作権、予算の上限など、外せない条件は先に足切りとして確かめておくと、点数で迷う場面が減ります。