記事の作成代行の契約で確かめること|著作権・AIの利用・修正
記事の作成を外部に頼むとき、単価や本数は見積もりで決まりますが、トラブルになりやすいのは見積もりに出てこない部分です。納品された記事を自社で書き直してよいのか、外注先が AI で書いていたらどうなるのか、修正は何回まで頼めるのか。これらは契約書や発注書で先に決めておかないと、後から話し合っても決めにくくなります。
この記事では、記事の作成代行を頼むときに契約で決めておく項目を、著作権、AI の利用、修正と検収、支払い、フリーランスに頼む場合の法律の決まりの順に説明します。最後に、契約書の項目の表と、発注前のチェックリストを付けました。単価の相場や頼む先ごとの違いは記事作成代行の費用相場で扱っています。
契約で決めておく項目の一覧
まず、記事の外注の契約で決めておきたい項目を一覧にします。契約書でなくても、発注書と、そこから参照する発注の条件の文書で決めておけば足ります。
| 項目 | 決めること | 決めないと起きやすいこと |
|---|---|---|
| 著作権 | 譲るか、いつ移るか、翻案の権利も含むか | 自社で書き直せない、ほかに転用できない |
| 著作者人格権 | 行使しない約束 | 題名や表現を変えたときに異議が出る |
| AI の利用 | 使ってよいか、申告、人の確認 | 他サイトに似た文章、誤った情報が混ざる |
| 修正 | 回数、修正に含める範囲、追加の料金 | 何度も直させる、または直してもらえない |
| 検収 | 確かめる期間、期間内に連絡がないとき | 支払いの時期がずれる |
| 支払い | 締め日と支払いの期日 | 外注先との関係が悪くなる、法律の義務に反する |
| 再委託 | 別の書き手に回してよいか | 誰が書いたか分からなくなる |
| 秘密の扱い | 渡した資料の扱い、AI に入れてよい情報 | 社外秘の情報が外に出る |
以下で、とくに迷いやすい著作権、AI、修正の3つを詳しく説明します。
著作権は「譲る」と書き、翻案の権利も含める
著作権法では、記事の著作権は原則として書いた人(またはその人が属する会社)が持ちます。お金を払って書いてもらっても、契約で譲ることを決めていなければ、著作権は書き手の側に残ります。
さらに、文化庁の著作権テキスト(令和7年度版)では、著作権を譲る契約で、翻訳や翻案をする権利(著作権法27条)と、書き直したものを利用する権利(28条)を特に書いていないと、これらは譲った人に残ると推定される(61条2項)と説明しています。そのため、テキストでは「すべての著作権(著作権法第27条及び第28条の権利を含む)を譲渡する」のように書く例を示しています。自社のサイトの記事は、情報が古くなれば書き直すので、この書き方は欠かせません。
あわせて決めておきたいのが次の2つです。
- 著作者人格権:記事の題名や内容を勝手に変えられない権利などで、書いた本人だけが持ち、人に譲れません。そのため、契約では「行使しない」と約束してもらう形をとるのが一般的です。
- 権利が移る時期:「納品の時」「検収の時」「代金を払い終えた時」のどれにするかを決めます。書き手の側は、代金を受け取るまでは権利を手元に置きたいと考えることが多いので、話し合って決めます。
書き手の名前を記事に出すかどうかも、ここで決めておきます。名前を出す場合は、プロフィールの文や写真の扱いも含めて決めます。ほかのサイトの文章を参考にするときの線引きはホームページの文章の著作権で説明しています。
AI の利用は「可否・申告・人の確認」を決める
生成 AI で文章を作る外注先は増えています。AI を使うこと自体は禁じられていませんが、発注する側が知らないまま使われると、困ることがいくつかあります。
文化庁の「AIと著作権に関する考え方について」(2024年3月15日)では、主に次のように整理しています。
- AI で作った文章が既存の文章に似ていて(類似性)、既存の文章をもとにしたと言える(依拠性)場合は、人が書いた場合と同じく、著作権の侵害になり得る
- 指示がアイデアにとどまり、AI がほぼそのまま出した文章には、著作物として認められない場合がある
- 人が創作的に手を加えた部分は、通常どおり著作物になり得る
2つ目の点は、契約にも関わります。「著作権を譲る」と約束しても、AI がほぼそのまま出した部分にはもともと著作権が生じないことがあり、その部分を他社に使われても、著作権で止めることは難しくなります。
そこで、契約や発注の条件では次の4点を決めておきます。
- AI を使ってよいか(使わない、下書きや構成案だけ、本文にも使う、のどれか)
- 使った場合は、どの工程で使ったかを納品時に申告してもらう
- 事実、数字、固有名詞は、人が一次資料で確かめてから納品する
- 社外秘の資料や個人の情報を、AI のサービスに入力しない
AI の利用を全面的に禁じると、単価が上がることがあります。「下書きには使ってよいが、事実の確認と仕上げは人がする」のように、工程で分けて決めると、費用と品質の釣り合いをとりやすくなります。
修正の回数は「何を修正に含めるか」と一緒に決める
修正の回数に法律の決まりはなく、契約で決めます。回数だけを決めると、「誤字を直してほしい」と「構成から変えてほしい」が同じ1回に数えられ、どちらの側にも不満が残ります。そこで、修正の種類を分けて決めるのが実務的です。
| 修正の種類 | 例 | 扱いの例 |
|---|---|---|
| 誤りの直し | 事実の誤り、誤字、指示した語が入っていない | 回数に数えず、無料で直す |
| 表現の調整 | 言い回し、見出しの言葉、段落の順番 | 2回まで無料、それを超えたら追加の料金 |
| 方針の変更 | 狙う読者や検索語を発注後に変える、構成から作り直す | 新しい発注として見積もる |
検収の期間(たとえば納品から7日以内)と、その期間内に連絡がないときに検収が済んだものとみなすかどうかも、あわせて決めます。修正の回数の決め方の考え方は、デザインの制作の例ですがデザインの修正は何回まででも説明しています。
フリーランスに頼むときの法律の決まり
書き手が従業員のいない個人(フリーランス)の場合は、2024年11月1日に施行されたフリーランス・事業者間取引適正化等法(フリーランス法)の決まりがかかります。公正取引委員会のリーフレット(令和8年1月改訂)では、発注する側の主な義務を次のように説明しています。
- 業務の内容、報酬の額、支払期日などの取引の条件を、書面かメールなどで、発注のときにすぐ示す(従業員がいない発注者にもかかる)
- 従業員を使っている発注者は、記事を受け取った日から60日以内のできるだけ早い日に支払期日を決めて払う
- 従業員を使っている発注者が1か月以上続けて委託する場合は、受け取りの拒否、報酬の減額、不当なやり直しなどの7つの行為が禁止される
「不当なやり直し」の禁止は、修正の決まりと関わります。発注した後に方針を変えて書き直してもらう場合に、追加の費用を払わずに何度も直させることは、この禁止に当たるおそれがあります。上の表のように、方針の変更を新しい発注として扱っておくと、こうした問題を避けやすくなります。
制作会社など、従業員のいる会社に頼む場合は、この法律ではなく、ほかの法律や契約の一般の決まりによります。いずれにしても、条件を書面で残しておくことは、後の行き違いを防ぎます。秘密の扱いを別の契約で結ぶ場合は、秘密保持契約(NDA)を結ぶときの項目も参考になります。
発注前のチェックリスト
- 著作権を譲ることと、27条・28条の権利を含むことを書いた
- 著作者人格権を行使しない約束を入れた
- 権利が移る時期(納品・検収・支払い完了)を決めた
- AI の利用の可否と、使った場合の申告を決めた
- 事実と数字を人が一次資料で確かめることを条件にした
- 修正の種類ごとの扱いと、追加の料金を決めた
- 検収の期間と、期間内に連絡がないときの扱いを決めた
- 支払期日を決めた(フリーランスに頼むなら受け取りから60日以内)
- 再委託してよいかと、社外秘の資料の扱いを決めた
SEO の会社に記事の作成をまとめて頼む場合は、記事の権利が契約の終了後にどう残るかも確かめます。その点はSEO会社の選び方で説明しています。Lapisデザインラボの SEO の月額の支援にも記事の作成が含まれており、中身は運用・集客サポートに載せています。
よくある質問
外注した記事の著作権を自社のものにするには、どう書けばよいですか。
著作権は原則として書いた人が持つので、契約書に譲ることを書きます。文化庁の著作権テキストでは、翻案などの権利(著作権法27条・28条)は特に書かないと譲った側に残ると推定されるため、「すべての著作権(著作権法第27条及び第28条の権利を含む)を譲渡する」と書く例を示しています。あわせて、著作者人格権を行使しない約束も入れておくのが一般的です。
外注先が AI で記事を書くのは、問題がありますか。
AI を使うこと自体が禁じられているわけではありません。ただ、文化庁の考え方では、AI で作った文章が既存の文章に似ていて、元の文章をもとにしたと言える場合は、通常と同じく著作権の侵害になり得ます。また、指示がアイデアにとどまり AI がほぼそのまま出した文章には、著作権が生じない場合があります。契約で AI の利用の可否、使う場合の申告と人による確認を決めておきます。
記事の修正は何回までと決めればよいですか。
法律で決まった回数はありません。回数よりも、何を修正に含めるかを決めることが大切です。誤りや指示との食い違いの直しは回数に数えず、発注した後に方針を変えた場合の書き直しは別料金、という分け方がよく使われます。検収の期間と、期間内に連絡がないときの扱いもあわせて決めます。