AIで作ったロゴの著作権と商標登録|使う前に確かめること
画像生成AIを使えば、ロゴの案を数分で何十個も作れます。開業の準備で費用を抑えたい人や、デザインの方向を探るためにAIを試す人も増えました。ただ、AIで作ったロゴを会社の顔として何年も使うなら、使い始める前に確かめておきたいことがあります。そのロゴに自分の権利はあるのか、他人の権利を侵していないか、商標として守れるのかの3つです。
この記事では、文化庁が公表している「AIと著作権に関する考え方について」と、特許庁の商標制度の説明をもとに、AIで作ったロゴの権利の考え方と、使う前の確認手順を整理します。ここで説明するのは一般的な考え方です。個別のロゴについての判断は、弁理士や弁護士に相談してください。
3つの権利を分けて考える
ロゴに関わる権利は、主に次の3つです。
| 権利 | 何を守るか | AIで作ったロゴで問題になること |
|---|---|---|
| 著作権(自分の権利) | 思想や感情を創作的に表現したもの | AIの生成物に、自分の著作権が生まれるか |
| 他人の著作権 | 既存の作品 | 生成物が既存の作品に似ていて、侵害にならないか |
| 商標権 | 商品やサービスの目印 | 登録できるか。他人の登録商標とぶつからないか |
この3つは別々の制度です。「AIで作ったから著作権は無いが、商標登録はできる」ということもあれば、「自分で描いたが、他人の登録商標に似ていて使えない」ということもあります。
AIの生成物に著作権は生まれるか
文化庁の文化審議会著作権分科会法制度小委員会が令和6年3月にまとめた「AIと著作権に関する考え方について」では、AI生成物の著作物性について、次のように整理されています。
- AIへの指示が、表現に至らないアイデアにとどまる場合には、生成物に著作物性は認められないと考えられる
- 著作物性は個々の生成物ごとに判断され、人の創作的寄与がどの程度積み重なっているかなどを総合的に考慮して判断される
- 判断の要素として、指示の分量と内容、生成の試行回数、複数の生成物からの選択が挙げられている
- 人が生成物に創作的表現といえる加筆・修正を加えた部分には、通常、著作物性が認められると考えられる
同じ資料では、試行回数が多いこと自体や、単に選ぶこと自体は、創作的寄与の判断に影響しないと考えられるとしています。一方で、生成物を確かめながら指示を直して試行を重ねる場合には、著作物性が認められることも考えられるとしています。
「シンプルでモダンな、青いカフェのロゴ」のような指示で出てきたものを選んだだけ、という作り方では、著作物性が認められにくいと考えておくのが無難です。
そもそもロゴは著作物になりにくい
もう一つ知っておきたいのは、AIに限らず、ロゴそのものが著作物と認められにくいことがある点です。文字を並べただけのロゴや、単純な図形の組み合わせは、創作性が認められないことがあります。ロゴを守る手段として、著作権よりも商標権が重視されるのはこのためです(ロゴの著作権は誰のものか)。
他人の権利を侵害するおそれ
自分の権利以上に気をつけたいのが、生成されたロゴが既存の作品や他社のロゴに似ている場合です。
文化庁の資料では、AIを使った場合でも、著作権侵害になるかどうかは、人がAIを使わずに作った場合と同じく、既存の作品との類似性(創作的な表現が似ているか)と依拠性(既存の作品をもとにしたか)で判断されると整理されています。特定の作家の作品群の創作的表現が生成物から直接感じ取れるような場合には、生成と利用が著作権侵害に当たり得るとも書かれています。
ロゴの場合、とくに次のような作り方は避けます。
- 有名な会社やブランドの名前を指示に入れて「〇〇風のロゴ」を作る
- 既存のロゴの画像をAIに読み込ませて、似たものを作らせる
- 特定のデザイナーやイラストレーターの名前を指示に入れる
また、著作権とは別に、他社の登録商標と似たロゴを同じ分野で使うと、商標権の侵害になることがあります。こちらはAIを使ったかどうかに関係なく問題になります。
AIで作ったロゴの商標登録
特許庁の商標制度の説明では、商標は自分の商品やサービスをほかと区別するための目印で、登録によって商標権が生まれます。審査では、ほかと見分ける力があるか、先に登録された似た商標が無いかなどが見られます。ロゴをどう作ったかは、審査の基準に入っていません。
そのため、AIで作ったことだけを理由に登録できないわけではありません。むしろ、著作権での保護が期待しにくいAIのロゴこそ、商標登録で守る意味が大きいと言えます。
注意したいのは、AIの生成物はよく見かける形になりやすいことです。似たロゴがすでに登録されていれば、登録できないだけでなく、使うこと自体が問題になるおそれがあります。出願の前に、特許情報プラットフォーム(J-PlatPat)で似た商標を調べます。商標登録の流れと費用はロゴの商標登録で説明しています。
商用に使う前の確認手順
- AIのサービスの利用規約を読む:生成物を商用に使ってよいか、権利が誰に帰属するとされているか、有料の契約が必要か。規約は変わることがあるので、使った時点の規約を保存しておきます
- 指示の履歴を残す:どんな指示で、何回作り直し、どこを人が直したか。後で権利を説明するときの材料になります
- 似たロゴが無いか調べる:画像検索、同じ業種の会社のロゴ、J-PlatPat の図形商標の検索で確かめます
- 人の手で仕上げる:色、形のバランス、文字の組み方を人が整えます。AIの出力は、小さく表示したときに潰れる、白黒で見分けにくい、といった実用上の弱点があることが多いからです
- 印刷や看板で使えるデータにする:AIの出力は画像(ピクセルの集まり)なので、拡大すると荒れます。ベクター形式に描き起こします(ロゴのデータ形式)
- 商標登録を検討する:長く使う、店舗を増やす、商品に付けるなら、出願を考えます
AIで作るのが向いている場面、向いていない場面
| 向いている場面 | 向いていない場面 |
|---|---|
| デザインの方向性を探る(色、雰囲気、形の候補) | 何年も使う会社の正式なロゴを、そのまま決める |
| 社内の打ち合わせで、イメージを共有する | 商品に付けて販売する、全国に展開する |
| 期間限定のイベントの仮の目印 | 他社と明確に区別したい、商標で守りたい |
AIは、デザイナーに依頼するときの「参考のイメージ」を作る道具としても役立ちます。AIで作った案を見せて「この色の雰囲気」「この形の方向」と伝えると、依頼の意図が伝わりやすくなります。ロゴを依頼するときの伝え方はロゴ制作の依頼書の書き方で説明しています。
デザイナーに依頼する場合との違い
デザイナーに依頼して作ったロゴは、制作の過程で人が表現を決めているため、著作物と認められる可能性がAIの生成物より高くなります。そのうえで、契約で著作権の譲渡を受けておけば、自社で自由に使い、改変できます。安いロゴの落とし穴と、確かめておくべき契約の条件は格安ロゴの注意点で説明しています。
Lapisデザインラボのロゴ制作では、代金のお支払い完了をもって著作権を譲渡し、ロゴのデータ一式をお渡ししています。詳しくはサービスと料金をご覧ください。
よくある質問
AIで作ったロゴに著作権はありますか。
一律には決まりません。文化庁の「AIと著作権に関する考え方について」では、AIへの指示が表現に至らないアイデアにとどまる場合は、生成物に著作物性は認められないと考えられる一方、人が生成物に創作的な加筆・修正を加えた部分には、通常、著作物性が認められると整理されています。そもそもロゴは、文字や単純な図形が中心のものが多く、人が作ったものでも著作物と認められにくいことがあります。
AIで作ったロゴは商標登録できますか。
商標登録の審査では、ロゴをどのように作ったかではなく、ほかの商品やサービスと見分ける力があるか、先に登録された似た商標が無いかなどが見られます。AIで作ったこと自体が、登録できない理由になるわけではありません。ただし、似た商標がすでに登録されていれば登録できないので、出願の前に調べることが大切です。
AIで作ったロゴを商用に使ってもよいですか。
使うAIのサービスの利用規約が、生成物の商用利用を認めているかをまず確かめます。そのうえで、生成されたロゴが既存のロゴや作品に似ていないかを確かめます。似ている場合、既存の作品の権利を侵害するおそれがあります。判断に迷う場合は、弁理士や弁護士に個別に相談してください。