製造業の会社案内とホームページ|技術を伝える見せ方
「うちの技術は、見てもらえれば分かるのに、ホームページではうまく伝わらない」。町工場や中小のメーカーの経営者から、よく聞く言葉です。ホームページを開くと、会社概要と設備の一覧、それに古い工場の写真が数枚。これでは、初めて見た人には、何が得意な会社なのかが分かりません。
製造業の会社案内とホームページは、主に二種類の人が見ます。新しい仕事を頼めるかを確かめに来る取引先と、働く場所を探している求職者です。この記事では、それぞれに向けて技術をどう伝えるか、何を載せて何を載せないか、会社案内とホームページをどう分担するかをまとめます。
取引先と求職者が見る所
| 取引先(購買・設計の担当) | 求職者 | |
|---|---|---|
| 知りたいこと | 頼みたい加工ができるか。品質と納期は大丈夫か | どんな仕事か。未経験でも大丈夫か。働きやすいか |
| よく見る所 | 加工の内容、材料、大きさ、精度、設備、事例、品質の管理 | 仕事の内容、働く人、一日の流れ、教え方、待遇 |
| 問い合わせの形 | 図面を添えた見積もりの依頼 | 見学の申し込み、応募 |
同じページで両方に話しかけようとすると、どちらにも中途半端になります。ホームページでは、取引先向けのページと、採用のページを分け、トップから両方への入口を用意します。
設備の一覧だけで終わらせない
製造業のホームページでよく見るのが、設備の名前と台数を並べた一覧です。取引先の担当者にとって設備の一覧は大切な情報ですが、それだけでは「その設備で何ができるのか」が伝わりません。技術を伝えるには、次のように「できること」の言葉に言い換えます。
| 設備の一覧だけ | できることに言い換えると |
|---|---|
| マシニングセンタ 〇台 | アルミやステンレスの複雑な形の部品を、試作の1個から量産まで |
| 三次元測定機 | 全数の寸法を測って、測定の記録を添えて納品 |
| 溶接機 〇台 | 薄い板の溶接で、ゆがみを抑えた仕上げ |
そのうえで、対応できる材料、大きさの範囲、精度の目安、ロットの大きさ、短い納期への対応を、一覧の表にまとめます。取引先の担当者は、この表を見て、自社の案件が頼めるかどうかを最初に判断します。
加工の事例の載せ方
技術を最もよく伝えるのは、実際に作ったものの事例です。事例を載せるときは、次の形にまとめると、取引先が自社の案件に置き換えて考えやすくなります。
- どんな業界の、どんな部品か
- 何が難しかったか(材料、形、精度、数量、納期)
- どう解決したか(工程の組み方、治具の工夫、測定の方法)
- 結果(精度、納期、費用の面で、取引先に何が良かったか)
ただし、取引先の図面や製品は、取引先の情報です。秘密を守る契約を結んでいることも多いので、載せる前に取引先の了解を取ります。了解が取れない場合は、自社で作った見本や試作品の写真を使い、「〇〇業界向けの部品」のように取引先が特定されない書き方にします。
載せることと、守ることの線引き
技術を伝えたい一方で、ノウハウをまねされたくない、という心配もあると思います。経済産業省の説明では、不正競争防止法の営業秘密は、「有用性」「秘密管理性」「非公知性」の3つの要件を満たす情報とされています。ホームページや会社案内で公開した情報は、誰でも見られる状態になります。
そこで、社内で次のような線を引いておきます。
- 載せる:何ができるか(加工の種類、精度の目安、材料、大きさ、事例の結果)
- 載せない:どうやっているか(加工の条件、治具の細部、工程の順序の詳しい中身)
写真を撮るときも、治具や工程表、図面、ほかの取引先の製品が写り込んでいないかを確かめます。工場の中の写真は、公開する前に現場の責任者に見てもらうと安心です。
写真の撮り方
製造業のホームページは、写真で印象が大きく変わります。暗く、散らかった工場の写真では、品質の良さが伝わりません。
- 工場の中:整理された状態で、明るく撮る。人が働いている様子を入れる
- 加工の瞬間:切削、溶接、組み立ての手元。技術が伝わる近い写真
- 製品と部品:背景を揃えて、形と仕上げが分かるように撮る
- 働く人:顔が見える写真。求職者は、どんな人と働くかを知りたい
- 測定と検査:品質の管理をしている様子
プロのカメラマンに一日で工場全体を撮ってもらうと、ホームページ、会社案内、展示会の資料、求人の原稿に同じ写真を使えます。撮影の頼み方はプロのカメラマンに撮影を頼むときの準備で説明しています。
採用のページの作り方
製造業では、若い人の採用に悩む会社が多くあります。求職者は、工場の仕事を「きつい、汚い」と思い込んでいることもあります。採用のページでは、実際の仕事の様子を正直に見せ、不安を一つずつ解きます。
- 一日の仕事の流れ(朝礼から終業まで)
- 未経験の人への教え方と、一人で任されるまでの期間の目安
- 働く人の声(入社のきっかけ、やりがい、大変なこと)
- 休み、残業、待遇
- 工場の見学の申し込みの方法
工場の見学は、求職者にとって大きな安心になります。ホームページから見学を申し込めるようにしておくと、応募の前の一歩を踏み出しやすくなります。
会社の歩みと、代表の言葉
長く続く町工場やメーカーでは、会社の歩みそのものが信頼の裏付けになります。創業の年、どんな仕事から始まり、どんな技術を積み重ねてきたか、主な出来事を年表にまとめて載せます。取引先の担当者は、長く続いていることを、取引を続けられる会社かどうかの手がかりにします。
代表の言葉では、会社が大切にしていること(品質、納期、相談への向き合い方)と、これから力を入れたいことを、代表自身の言葉で書きます。技術の話だけでなく、働く人への思いを書くと、求職者にも会社の人柄が伝わります。書き方はホームページの代表挨拶の書き方で説明しています。
英語のページ
海外の取引先や、日本にある外資系の会社から仕事を受けたい場合は、英語のページを用意します。全部を訳す必要はなく、会社の概要、できる加工と材料、設備、品質の管理、問い合わせの方法に絞っても役に立ちます。自動の翻訳だけに頼らず、加工や材料の専門の言葉は、確かめた訳を使います。
会社案内とホームページの分担
| 会社案内(印刷物) | ホームページ | |
|---|---|---|
| 使う場面 | 展示会、商談、工場の見学、学校への訪問 | 検索、紹介の後の確認、応募の前 |
| 載せること | 会社の強み、主な加工、設備の概要、会社の歩み | 詳しい加工の一覧、事例、設備の一覧、採用の情報、問い合わせ |
| 更新 | 数年に一度 | 必要なときにすぐ |
会社案内は、商談や展示会で手渡し、会社の強みをひと目で伝える道具です。細かな設備の一覧や事例はホームページに任せ、会社案内には二次元コードを載せて、詳しくはホームページで見てもらう形にします。会社案内の作り方は会社案内パンフレットの作り方で説明しています。
図面を受け付ける問い合わせ
取引先からの問い合わせは、図面を添えた見積もりの依頼が多くなります。問い合わせのフォームで図面のファイルを受け付けられるようにし、対応できるファイルの形式と大きさを書いておきます。秘密を守る契約を先に結びたい取引先のために、その相談の窓口も書いておくと安心です。項目の決め方は問い合わせフォームの項目の決め方にまとめています。
Lapisデザインラボの会社案内とホームページの制作の内容と料金は、サービスと料金に載せています。
よくある質問
製造業のホームページには、何を載せればよいですか。
取引先に向けては、できる加工や製品、対応できる材料と大きさ、精度、ロットの大きさ、設備、品質の管理、短い納期への対応、加工の事例を載せます。求職者に向けては、仕事の内容、一日の流れ、働く人、教え方、休みや待遇を載せます。どちらの人も、会社の所在地と連絡先、会社の歩みを確かめに来ます。
加工の事例を載せたいのですが、取引先の製品を載せてもよいですか。
取引先の図面や製品は、取引先の情報です。契約で秘密を守る約束をしていることも多いので、載せる前に取引先の了解を取ります。了解が取れない場合は、形や用途を変えた試作品や、自社で作った見本の写真を使い、「〇〇業界向けの部品」のように取引先が特定されない書き方にします。
技術をホームページに載せると、まねされませんか。
ノウハウの細かな中身まで載せる必要はありません。経済産業省の説明では、不正競争防止法の営業秘密は「有用性」「秘密管理性」「非公知性」の3つの要件を満たす情報とされています。ホームページで公開した情報は、公知になります。何ができるか(結果)は載せ、どうやっているか(条件や手順の細部)は載せない、という線を社内で決めておくと、伝えることと守ることを両立できます。