システム開発会社のホームページ|実績を出せないときの見せ方
システム開発の会社のホームページで、いちばん悩ましいのが「実績」のページです。受託開発では、取引先との契約に守秘義務があったり、元請けの会社の下で開発していたり、作ったシステムが社内向けで外から見えなかったりして、取引先の名前も画面も出せないことがよくあります。それでも、発注を考える人が知りたいのは「この会社に頼んで大丈夫か」です。
この記事では、受託開発の会社が、実績を自由に出せない中でホームページをどう組み立てるかを説明します。載せるページの構成、実績を出せない理由の確かめ方、匿名の事例の書き方と出してよい情報の段階、開発の進め方や体制の見せ方、プライバシーマークなどの認証の載せ方の順にまとめ、最後にチェックリストを付けました。
システム開発会社のホームページの構成
まず、載せるページの全体です。発注を考える人は、「自社の困りごとに合う会社か」「進め方が信頼できるか」「いくらくらいかかりそうか」の順に確かめていきます。
| ページ | 載せること |
|---|---|
| 事業の内容 | 受託開発、保守・運用、自社のサービスなど。何を主にしているか |
| 得意な領域と技術 | 業種(物流、医療の周辺、製造など)、システムの種類(業務システム、スマホのアプリ、ウェブのサービス)、使う言語や基盤 |
| 事例 | 出せる範囲の事例。匿名の事例を含む |
| 開発の進め方 | 相談から要件の整理、設計、開発、テスト、引き渡し、保守までの流れ |
| 体制 | 人数、役割、自社で開発するか外部と組むか |
| 料金と契約の形 | 料金の決まり方、契約の形、概算の出し方 |
| 会社概要 | 所在地、設立、取得している認証 |
| 問い合わせ | 相談の窓口、守秘の約束をしてから話を聞けるか |
実績を多く出せない会社ほど、「開発の進め方」と「体制」のページが大切になります。事例の数で見せられない分を、どう仕事をするかの具体さで補います。サービスのページの書き方の基本はサービス紹介ページの書き方、会社概要の項目はホームページの会社概要の書き方で説明しています。
実績を出せない理由を確かめる
「実績は出せない」と思い込んでいても、確かめると出せる範囲が見つかることがあります。まず、案件ごとに出せない理由を整理します。
| 出せない理由 | 確かめること |
|---|---|
| 契約に秘密保持の条項がある | 秘密の範囲は何か。取引があること自体も秘密か、中身だけか。実績として公表してよい条件が書かれているか |
| 元請けの会社の下で開発した | 元請けとの契約で、最終の取引先の名前を出せるか。元請けの名前なら出せるか |
| 社内向けのシステムで外から見えない | 画面を出せなくても、業種と課題と結果なら書けるか |
| 取引先の営業上の秘密に関わる | 仕組みや数字が、取引先の競争力に関わる情報か |
経済産業省の説明では、不正競争防止法の「営業秘密」は、有用性・秘密管理性・非公知性の3つの要件を満たす情報です。取引先から預かった仕様や業務の流れには、この営業秘密にあたるものが含まれていることがあります。事例を書くときは、取引先の業務の中身に踏み込みすぎないことが、信頼を守ることにもつながります。
新しく契約を結ぶときは、「取引先の名前を伏せた形での事例の公表」を認めてもらえるかを、最初の段階で相談しておくと、後から事例を作りやすくなります。秘密保持契約の条項の読み方は、制作会社との契約の例ですが秘密保持契約(NDA)を結ぶときが参考になります。
匿名の事例の書き方
取引先の名前を出せない場合でも、次の項目を書けば、発注を考える人には十分に判断の材料になります。
- 業種と規模:「従業員300名ほどの物流会社」のように
- 期間と体制:「要件の整理から6か月、5名で担当」
- 課題:システムを作る前に何に困っていたか
- 自社が受け持った範囲:要件の整理から担当したのか、開発の一部だけか
- 使った技術:言語、基盤、つないだ外部のサービス
- 結果:作業の時間が減った、ミスが減ったなど、取引先の了解を得た範囲で
出してよい情報の段階
取引先ごとに、どこまで出してよいかの段階を決めておくと、社内で判断がぶれません。
| 段階 | 出す情報 | 必要な了解 |
|---|---|---|
| 1 | 社名、ロゴ、画面、担当者の言葉 | 取引先の書面での了解 |
| 2 | 社名と概要(画面は出さない) | 取引先の了解 |
| 3 | 業種・規模・課題・技術・結果(社名なし) | 文面を見せての了解が望ましい |
| 4 | 技術と自社の役割だけ | 契約の秘密の範囲に入らないかの確認 |
匿名の事例でも、業種と地域と時期の組み合わせで、取引先が分かってしまうことがあります。とくに地域を限った業種や、規模の大きな会社が少ない業種では注意が要ります。段階3でも、文面を取引先に見せて了解を取るのが安全です。事例のページの型は実績・事例ページの作り方で説明しています。
事例の代わりに「仕事の仕方」を見せる
事例の数が少なくても、次の情報は自社の判断だけで出せます。発注を考える人にとっては、事例と同じくらい判断の材料になります。
- 開発の進め方:要件をどう聞き取り、どの段階で何を確かめてもらうか。打ち合わせの頻度、進み具合の共有の方法
- 品質の守り方:テストの進め方、コードの確認(レビュー)の決まり、引き渡すときの資料
- 引き渡しと保守:引き渡した後に、自社以外の会社でも保守できるよう資料を残すか。保守の契約の形
- 技術の発信:技術の記事、公開しているプログラム、勉強会での発表など、事実としてあるもの
- 自社のサービスや道具:自社で作って使っているもの。画面を自由に見せられる数少ない材料になる
- 得意でないこと:受けていない領域や規模を書いておくと、合わない相談が減り、合う相談の確度が上がる
人数や資格の数を書くときは、事実どおりに書きます。外部の協力者と組んで開発する場合は、そのことも書いておく方が、後の行き違いを防げます。
料金と契約の形の書き方
システム開発は案件ごとに中身が違うため、料金表を載せにくい分野です。それでも、料金の決まり方と契約の形を書いておくと、問い合わせの前の不安が減ります。
- 料金の決まり方:作業の量(人数と期間)で見積もるのか、成果物ごとに決まった額か
- 契約の形:成果物の完成を約束する形(請負)か、作業の時間や体制を約束する形(準委任)か
- 概算の出し方:最初の相談で、どこまでの情報があれば概算を出せるか
- 小さく始める方法:要件の整理だけ、試作だけを先に頼めるか
認証の載せ方
情報の扱いに関する認証は、システム開発の会社では信頼の材料になります。載せるときは、それぞれの制度の決まりに従います。
- プライバシーマーク:JIPDEC の案内では、付与を受けた事業者だけが使えるマークで、マークと登録番号で構成されます。ウェブサイトで使う場合は、プライバシーマーク制度のウェブサイトへ移動できるように設定することになっています。付与を受けていない事業者がマークを使うことは禁じられています
- ISMS 認証:ISO/IEC 27001 にもとづく情報セキュリティの管理の仕組みの認証です。ISMS-AC のサイトでは、認証を受けた組織を検索できます。認証を受けている場合は、どの部署や拠点が認証の対象かも含めて、事実どおりに書きます
認証を受けていない場合に、「認証と同じ水準で管理しています」のような書き方をするのは避けます。代わりに、秘密保持契約を結んでから相談を受けられること、預かった資料の扱いの決まりなど、事実として説明できることを書きます。
制作を頼む前のチェックリスト
- 事業の内容のうち、ホームページで主に案内するものを決めた
- 案件ごとに、出せない理由と出してよい情報の段階を整理した
- 匿名の事例を1〜3件書き、取引先の了解を取った
- 開発の進め方と品質の守り方を、自社の言葉で書いた
- 体制と、外部と組む場合の説明を事実どおりに書いた
- 料金の決まり方と契約の形、概算の出し方を書いた
- 認証の表示が、それぞれの制度の決まりに合っているか確かめた
Lapisデザインラボのホームページ制作の内容は、サービスと料金に載せています。
よくある質問
守秘義務で取引先の名前を出せない場合、実績はどう載せればよいですか。
取引先の名前を出さずに、業種、会社の規模、期間、体制、使った技術、自社が受け持った工程、課題と結果を書く「匿名の事例」にします。匿名でも、業種と地域と時期の組み合わせで取引先が分かることがあるので、載せる前に取引先に文面を見せて了解を取るのが安全です。契約書で実績の公表がどう決まっているかも先に確かめます。
IT企業のホームページには、どんなページが必要ですか。
事業の内容(受託開発、保守、自社のサービスなど)、得意な領域と技術、事例、開発の進め方、体制、料金の決まり方と契約の形、会社概要、問い合わせの8つが基本です。実績を多く出せない会社ほど、開発の進め方と体制のページで、どう仕事をするかを具体的に見せることが大切です。
プライバシーマークをホームページに載せるときの決まりはありますか。
プライバシーマークは、付与を受けた事業者だけが使えるマークで、マークと登録番号で構成されます。JIPDEC の案内では、ウェブサイトで使う場合は、プライバシーマーク制度のウェブサイトへ移動できるように設定することになっています。付与を受けていない事業者がマークを使うことは禁じられています。