伝統工芸・工房のホームページ|作り手と直販の見せ方
工房や作家のホームページを見に来る人は、品物を買いたい人だけではありません。贈り物を探している人、店で扱いたい取引先、体験や見学をしたい人、海外から産地を調べている人もいます。どの人にも共通して伝えたいのは、「誰が、どんな手間をかけて作っているか」と「どうすれば手に入るか」の2つです。
この記事では、工房・作家・伝統工芸の事業者のホームページに載せるページと、作り手と工程の見せ方、ネットで直接売るときの書き方を説明します。あわせて、「伝統的工芸品」という言葉や伝統証紙、伝統工芸士を書くときの決まりを、経済産業省と伝統的工芸品産業振興協会の資料をもとにまとめました。最後に、制作を頼む前のチェックリストを付けています。
工房のホームページに載せるページ
見に来る人ごとに、知りたいことが違います。まず、ページの全体を整理します。
| ページ | 載せること | 主に見る人 |
|---|---|---|
| 作り手の紹介 | 名前、修業や経歴、ものづくりの考え、顔や手元の写真 | 買う人、取引先、取材 |
| 工程と素材 | 作り方の流れ、使う素材、1つにかかる日数 | 買う人、取引先 |
| 作品・商品 | 写真、大きさ、素材、価格、在庫か受注生産か | 買う人 |
| 買い方 | ネットショップ、工房での販売、取扱店の一覧 | 買う人 |
| 手入れと修理 | 使い方、手入れの方法、修理を受けるか | 買った人 |
| 体験・見学 | 内容、所要時間、料金、予約の方法 | 体験したい人、旅行者 |
| 取引のご相談 | 卸や別注、名入れの相談の窓口 | 店、法人 |
| 工房の案内 | 住所、開いている日、地図、駐車場 | 来たい人 |
すべてを最初からそろえる必要はありません。売り方の中心がネットなら「作品・商品」と「買い方」、取引先との仕事が中心なら「工程と素材」と「取引のご相談」から作ると、手間に見合う効果が出やすくなります。
作り手と工程の見せ方
工芸品は、見た目が似た量産品と並べられることが多い品物です。ホームページでは、量産品にはない「手間」と「人」を、写真と言葉で具体的に見せます。
- 工程を順番に写真で見せる:素材の下ごしらえから仕上げまで、5〜8枚ほどの写真に短い説明を付ける。「なぜこの工程が要るのか」を一言添える
- かかる時間を書く:「1つの器に約3週間」のように、日数や工程の数を事実どおりに書く
- 素材の出どころを書く:どこの土、どこの木、どの糸かを、分かる範囲で書く
- 作り手の言葉で書く:飾った言葉より、作り手が普段話している言葉の方が伝わる
- 手元の写真を入れる:顔を出したくない場合でも、手元や道具の写真で人の仕事であることは伝わる
写真はホームページの印象を大きく左右します。工程や作品をプロのカメラマンに撮ってもらう場合は、プロのカメラマンに撮影を頼むときの準備で撮影のリストの作り方を説明しています。
「伝統的工芸品」と証紙・資格を書くときの決まり
伝統工芸の事業者がホームページで使う言葉には、法律や制度で意味が決まっているものがあります。
「伝統的工芸品」は指定された品目の言葉
経済産業省の説明では、「伝統的工芸品」とは、次の5つの項目をすべて満たし、伝統的工芸品産業の振興に関する法律(伝産法)にもとづいて経済産業大臣の指定を受けた工芸品のことです。
- 主として日常生活に使われるもの
- 作る過程の主な部分が手工業的なもの
- 伝統的な技術や技法で作られるもの
- 伝統的に使われてきた原材料を主な原材料とするもの
- 一定の地域で、少なくない数の人が作っているもの
伝統的工芸品産業振興協会の説明では、ここでいう「伝統的」とは、およそ100年以上続いていることを意味します。経済産業省のページでは、2025年10月27日時点で244品目が指定されています。
自分の品が指定の品目にあたる場合は、品目の名前(たとえば京都の西陣織や京友禅のような名前)とともに書けます。あたらない場合に「伝統的工芸品」と書くと、見る人に誤解を与えるおそれがあります。その場合は「〇〇の技法で、一つずつ手で作っています」のように、事実を具体的に書く方が、かえって伝わります。
伝統証紙は検査に合格した品に貼るもの
伝統的工芸品産業振興協会の説明では、伝統証紙は、産地の組合など(特定製造協同組合等)が、決められた規程にもとづいて品物を検査し、基準に合格したものに貼るものです。工房が自分の判断で付けるものではありません。
証紙の付いた品を売っている場合は、商品のページに「伝統証紙付き」と書くと、見る人が本物かどうかを判断する手がかりになります。証紙のマークの画像をサイトで使う場合は、産地の組合に使い方を確かめてからにします。
伝統工芸士は認定を受けた人の呼び名
協会の説明では、伝統工芸士は協会が認定するもので、伝統的工芸品の産地での製造の実務の経験を満12年以上積んだうえで、実技・知識・面接の試験に合格する必要があります。認定の後も5年ごとに技量などの確認があります。認定を受けている作り手は、プロフィールに認定の品目と部門を書いておくと、取引先や取材の人にも伝わりやすくなります。認定を受けていない人の紹介に、この言葉を使わないよう気をつけます。
ネットで直接売るときの書き方
工芸品をホームページから直接売る場合、量産品のネットショップとは違う書き方が要ります。
| 項目 | 書くこと |
|---|---|
| 価格 | 税込の価格(消費者に表示する価格は税込で示す義務がある) |
| 在庫か受注生産か | 在庫の品はすぐに送れるか。受注生産なら作り始めてからの日数 |
| 一点もの | 同じ品はないこと。写真の品そのものが届くか |
| 色と形の違い | 手仕事のため、色や形、大きさに個体差があること |
| 送料と梱包 | 割れ物や大きな品の送料、贈り物の包装の有無 |
| 返品と取り消し | 返品を受けるか、受注生産の品の取り消しの期限 |
| 手入れ | 使い始めの手入れ、使ってはいけない洗い方 |
消費税法では、事業者が消費者に対してあらかじめ表示する価格は、税込で示すことが義務付けられています。国税庁の説明では、ホームページを含め、表示の媒体は問いません。
ネットで売るときは、特定商取引法にもとづく表記(販売者の名前、住所、価格、送料、支払いの方法、届ける時期、返品の条件など)も必要です。載せる項目は特定商取引法に基づく表記の書き方で説明しています。ネットショップを自社のホームページに付けるか、ネットショップの作成サービスを使うかの費用の違いは、ネットショップ制作の費用の相場にまとめています。
体験・見学と海外からの人
体験や見学を受けている工房では、そのページが入口になることもあります。内容、所要時間、料金(税込)、持ち帰りの方法、予約の方法と取り消しの期限を書きます。
海外から産地や工房を調べる人もいます。英語のページを用意する場合は、全部を訳すより、作り手の紹介、工程、買い方、体験の案内に絞ると、更新の手間を抑えられます。進め方はホームページの多言語化の費用と進め方で説明しています。京都の工房や作家のホームページの作り方は、京都の事業者向けのページにもまとめています。
制作を頼む前のチェックリスト
- 見てほしい人(買う人・取引先・体験の人)の順番を決めた
- 工程の写真と、1つにかかる日数の説明を用意した
- 指定の品目にあたるかを確かめ、「伝統的工芸品」の言葉の使い方を決めた
- 伝統証紙や伝統工芸士の記載が事実どおりかを確かめた
- 価格は税込、在庫か受注生産か、納期を商品ごとに書ける
- 個体差、返品と取り消しの条件を書いた
- 特定商取引法にもとづく表記の内容を用意した
Lapisデザインラボのホームページ制作の内容は、サービスと料金に載せています。
よくある質問
自分の工房の品を、ホームページで「伝統的工芸品」と書いてもよいですか。
「伝統的工芸品」は、伝統的工芸品産業の振興に関する法律にもとづいて経済産業大臣が指定した工芸品を指す言葉です。経済産業省のページでは、2025年10月27日時点で244品目が指定されています。自分の品が指定の品目にあたるかを確かめ、あたらない場合は「手仕事の」「〇〇の技法で作った」のように、事実どおりの言葉で書きます。
伝統証紙や伝統マークは、自分で付けられますか。
伝統的工芸品産業振興協会の説明では、伝統証紙は、産地の組合など(特定製造協同組合等)が決められた規程にもとづいて検査し、合格した品に貼るものです。工房が自分の判断で付けるものではありません。証紙の付いた品を扱っている場合は、そのことを商品のページに書き、マークの画像をサイトで使うときは産地の組合に確かめます。
工芸品をネットで売るとき、ホームページに何を書けばよいですか。
税込の価格と送料、支払いの方法と時期、届けるまでの期間、返品の条件などを、特定商取引法にもとづく表記として載せます。一点ものや受注生産の品は、写真と実物の違い、作り始めてからの納期、注文後に取り消せるかを、商品のページにも書いておくと行き違いが減ります。