イラストを頼むときの費用と著作権|商用で使う前に決めること
ホームページの挿絵、パンフレットの図解、店頭のポスター。写真や素材では伝えきれないことを、描いてもらったイラストで伝えたい場面があります。ただ、初めて頼むときは「いくらくらいかかるのか」「描いてもらった絵を、どこまで自由に使ってよいのか」が分かりにくいものです。
この記事では、会社のサイトや販促物に使うイラストを外部に頼むときに、費用が何で決まるか、依頼先の選び方と頼み方の流れ、著作権を譲り受けるか、使うことの許しにとどめるかの決め方、発注のときに書面で残す項目をまとめます。権利の説明は文化庁の資料に、発注の決まりは公正取引委員会の案内に沿っています。個別の契約の判断は弁護士に相談してください。
費用は何で決まるか
イラストの料金は、描く人の経験や作風、依頼先の形によって幅が大きく、同じ「挿絵1点」でも見積もりは大きく変わります。この記事では金額の幅は示さず、見積もりを比べるための見方をまとめます。
文化庁の「文化芸術分野の適正な契約関係構築に向けたガイドライン」は、報酬について、業務内容や専門性、著作権等の権利の利用許諾・譲渡・二次利用の有無、経費負担等に応じた適正な金額となるよう、発注者と受注者が十分に協議して決めるべきだとしています。実際の見積もりも、次のような要素で変わります。
| 要素 | 費用が上がりやすい場合 |
|---|---|
| 点数と大きさ | 点数が多い、大きく刷る、細かく描き込む |
| 描く内容 | 人物が多い、背景まで描く、建物や商品を正確に描く |
| 作風 | 写実的な絵、手間のかかる画材の表現 |
| 使う範囲 | 広告・商品・看板など、目立つ場所や長い期間で使う |
| 権利の扱い | 利用の許諾より著作権の譲渡、二次利用(ほかの媒体への転用)を含む |
| 修正の回数 | ラフ(下書き)や清書の段階での修正が多い |
| 納期 | 急ぎで頼む |
見積もりを比べるときは、金額だけでなく、どこまでの使い方と権利が含まれているかを横に並べて見ます。安い見積もりが、実は「ホームページだけで使ってよい」という条件だった、ということもあります。
依頼先の選び方
| 依頼先 | 特徴 | 向いている場合 |
|---|---|---|
| 個人のイラストレーターに直接 | 作風で選べる。やり取りが直接で早い | 作風がはっきり決まっている |
| 仲介のサイト・スキルの売り買いのサイト | 料金の目安が出ていて比べやすい。規約で権利の扱いが決まっていることが多い | 点数が少なく、条件が単純 |
| デザイン会社・制作会社 | 誌面やサイトの設計とあわせて頼める。描く人を選んでもらえる | サイトやパンフレット全体と見た目をそろえたい |
選ぶときは、過去の作品集(ポートフォリオ)で、自社の使い方に近い作品があるかを見ます。かわいらしい絵が得意な人に、正確な図解を頼むと、どちらにとっても負担になります。仲介のサイトを使う場合は、権利の扱いがサイトの規約で決まっていることが多いので、申し込む前に規約のその部分を読みます。
頼み方の流れ
- 使う場面と点数を決める:どこに、どの大きさで、何点使うか。将来ほかの媒体に使う可能性も書き出す
- 依頼先を探して、作品集で絞る:作風が合う人を2〜3人に絞る
- 見積もりを頼む:使う場面・点数・大きさ・納期・権利の希望・修正の回数を伝える
- 条件を書面で決める:報酬・支払期日・納期・権利の扱い・修正の回数を、契約書や発注書、メールで残す
- ラフ(下書き)を確かめる:構図や人物の配置は、この段階で直す
- 清書と修正:色や細部を詰める
- 納品:受け取るデータの形式と大きさ、使い方の条件を確かめる
修正は、ラフの段階で伝えるほど負担が小さく済みます。清書のあとで構図を変えると、描き直しに近くなります。
著作権:譲り受けるか、使うことの許しにとどめるか
文化庁のガイドラインは、創作の過程で生じた著作権は、創作した芸術家等に自動的に帰属すると説明しています。発注した側が使うには、利用の許諾を受けるか、著作権の譲渡を受けるかを、契約の段階で協議して明確にしておく必要があります。
| 決め方 | 中身 | 向いている場合 | 決めておくこと |
|---|---|---|---|
| 利用の許諾 | 著作権は描いた人に残し、決めた範囲で使わせてもらう | ホームページの挿絵など、使う範囲が限られる | 使う媒体・期間・地域、手直ししてよいか、取引先に渡してよいか |
| 著作権の譲渡 | 著作権を自社に移す | 看板・商品・パッケージ、長く使う会社の顔になる絵 | 第27条・第28条の権利を含むこと、移る時期、著作者人格権の扱い |
譲渡を受けるときに見落としやすいのが、著作権法第61条第2項です。文化庁の著作権テキスト(令和8年度版)も、翻案などの権利(第27条)と二次的著作物の利用に関する権利(第28条)は、契約で特に書かれていなければ譲渡した側に残ると推定されるため、「第27条及び第28条の権利を含む」と書いておく必要があると説明しています。詳しくはロゴの著作権は誰のものかで条文に沿って説明しています。
著作者人格権(作者の名前を表示するか、意に反して変えられないかなどの権利)は譲渡できません。契約で「行使しない」と決める例がありますが、文化庁の著作権テキストは、これが描いた側の不利益にもなると注意を促しています。作者の名前をどこに表示するか、どこまで手直ししてよいかを、具体的に決めておくほうが、双方にとって分かりやすくなります。
発注のときに書面で残す項目
個人のフリーランスに事業として仕事を頼む場合、フリーランス法の対象になります。公正取引委員会の特設サイトでは、発注した側に、給付の内容・報酬の額・支払期日など9つの取引条件を、書面かメールなどの電磁的な方法で直ちに明示する義務があり、口頭での明示は認められないと説明しています。報酬の支払期日は、受け取った日から数えて60日以内のできる限り短い期間内で定めます。
フリーランス法の明示事項に加えて、イラストでは次の項目も残しておきます。
- 描く内容・点数・大きさ・作風の参考
- 報酬の額と、支払期日・支払方法
- 納品の日と、受け取るデータの形式(大きさ・解像度・背景を透過するか)
- 修正の回数と、回数を超えたときの扱い
- 権利の扱い(利用の許諾の範囲か、第27条・第28条を含む譲渡か)
- 作者の名前の表示と、作品集やSNSで実績として公開してよい時期
- 生成AIを使うかどうか(使う場合の扱い。注意点はAIで作った画像を会社のサイトや販促物に使うときの注意点)
公正取引委員会の案内では、1か月以上の業務を頼む場合、費用を負担せずに注文の内容を変えたり、受け取ったあとにやり直しをさせたりすることなど7つの行為が禁止されています。依頼の内容を最初に具体的にしておくことは、描く人を守るだけでなく、頼む側が思わぬ違反を避けることにもつながります。
素材のイラストで足りる場面・頼んだほうがよい場面
すべてのイラストを描いてもらう必要はありません。
- 素材で足りる:社内資料の挿絵、期間限定の告知、汎用的なアイコン
- 頼んだほうがよい:会社の顔になる絵、商品のパッケージ、ほかの会社と同じ絵が使われると困る場面
素材を使う場合のライセンスの読み方は素材写真の使い方と注意点が参考になります。
まとめ
- イラストの費用は、点数・描く内容・作風・使う範囲・権利の扱い・修正の回数・納期で変わる。見積もりは権利と使い方の範囲まで並べて比べる
- 著作権は描いた人に自動的に生じる。利用の許諾か譲渡かを、使う場面に合わせて契約で決める
- 譲渡なら第27条・第28条の権利を含むことを書き、作者の名前の表示や手直しの範囲も決める
- フリーランスに頼むときは、取引条件を書面やメールですぐに明示し、報酬は受け取りから60日以内に払う
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よくある質問
お金を払って描いてもらったイラストの著作権は、こちらのものになりますか。
自動的にはなりません。文化庁のガイドラインでも、創作の過程で生じた著作権は創作した人に自動的に帰属すると説明されています。発注した側が使うには、利用の許諾を受けるか、著作権の譲渡を受けるかを、契約で決めておく必要があります。
著作権の譲渡と利用の許諾は、どちらにすべきですか。
使う範囲がはっきりしていて限られるなら利用の許諾、看板や商品、長く使う会社の顔になる絵なら譲渡が向いています。譲渡を受ける場合は、著作権法第27条・第28条の権利を含むことを契約に書き、著作者人格権の扱いも決めておきます。権利の範囲が広いほど、報酬にも反映されるのが一般的な考え方です。
個人のイラストレーターに頼むとき、発注する側に決まりはありますか。
事業者として個人のフリーランスに仕事を頼む場合は、フリーランス法(特定受託事業者に係る取引の適正化等に関する法律)の対象になります。公正取引委員会の案内では、給付の内容・報酬の額・支払期日など9つの取引条件を、書面かメールなどですぐに明示する義務があり、報酬は受け取った日から60日以内のできる限り短い期間内に支払うとされています。