制作会社が外部に再委託するとき|確かめることと契約の書き方
ホームページ制作を依頼すると、見積書や契約書に名前が載っている制作会社が、実際の作業をすべて自社内で行うとは限りません。デザインだけ、コーディングだけ、問い合わせフォームや予約システムの開発だけを、別の会社やフリーランスに再委託(外注)していることがあります。再委託そのものは、専門分野ごとに得意な作り手へ任せる分業の形で、必ずしも問題ではありません。
ただし、発注した側が再委託の事実を知らないまま進めると、連絡の行き違いが起きたときに誰が責任を持つのかが分からなくなったり、品質や納期の管理が制作会社の手を離れたところで決まってしまったりすることがあります。この記事では、再委託が起きる典型的な形、契約の前に確認しておきたいこと、契約書への書き方、再委託先の品質・納期を管理してもらう方法をまとめます。
制作会社が外部に再委託する典型的な形
ホームページ制作の工程は、企画・デザイン・コーディング(組み立て)・システム開発・写真撮影・原稿作成など、性質の異なる作業に分かれています。制作会社がすべてを自社の社員でまかなっているとは限らず、次のような形で外部に任せることがあります。
| 再委託の形 | 具体例 |
|---|---|
| 専門工程だけを外部に任せる | デザインは自社、コーディングやシステム開発はパートナー会社に依頼する |
| 繁忙期の応援を頼む | 受注が集中する時期だけ、フリーランスのデザイナーやエンジニアに手伝ってもらう |
| 窓口と実務を分ける | 営業・進行管理は制作会社、実際の制作はグループ会社や提携先が担う |
| ほぼすべてを委ねる | 企画以外の工程をまとめて別の会社に任せ、制作会社は取りまとめだけを行う |
上の3つは、専門性を活かした分業の形です。問題になりやすいのは4つ目のように、発注者からは見えないところで作業のほとんどが委ねられ、しかもその事実が伝えられていない場合です。
「丸投げ」との違いをどう見分けるか
「外注」と「丸投げ」の境目は、再委託そのものの有無ではなく、元の制作会社が進行や品質に責任を持って関わっているかにあります。次のような兆候が重なる場合は、丸投げに近い状態を疑ってよいでしょう。
- 打ち合わせの場に、実際にデザインやコーディングを行う担当者が一度も同席しない
- 修正依頼を伝えても、折り返しの返答に時間がかかり、内容もかみ合わない
- 契約時に提示された体制表やスケジュールと、実際の進み方が食い違う
- 誰が最終的な品質を確認しているのか、尋ねても明確な答えが返ってこない
逆に、再委託先が明確で、元の制作会社の担当者が進行管理や品質チェックに関わり続けているのであれば、分業として健全な形といえます。
契約前に確認したいこと
契約を結ぶ前の打ち合わせで、次の点を確認しておくと、後から「聞いていなかった」という食い違いを避けやすくなります。
- 体制:デザイン・コーディング・システム開発のそれぞれを、誰(自社か、外部の会社・個人か)が担当するか
- 連絡の窓口:進行中に質問や修正依頼をする相手は誰か。実際の作業者と直接やり取りできるのか、窓口担当者を経由するのか
- 再委託の範囲:契約後に新たに別の会社へ再委託する可能性があるか。ある場合、事前に知らせてもらえるか
- 責任の所在:再委託先の作業に問題があったとき、誰が是正や補償の窓口になるか
- 守秘義務:事業内容や顧客情報など、発注者が渡す情報を再委託先にも適切に扱ってもらえるか
契約書に書く再委託の条項
口頭での確認だけでなく、契約書や業務委託契約の基本条項に再委託の扱いを明記しておくと、トラブルになったときの拠り所になります。たとえば、次のような内容を盛り込みます。
- 再委託を行う場合は、事前に発注者へ書面(メールなど記録に残る方法を含む)で通知し、承諾を得ること
- 再委託先に対しても、本契約と同等の守秘義務・情報管理の義務を課すこと
- 再委託先の行為について、委託先の制作会社が自己の行為と同様の責任を負うこと
- 再委託の有無にかかわらず、成果物の品質・納期に関する責任は元の制作会社が負うこと
再委託を一律に禁止する条項にすることもできますが、専門分野ごとの分業を制限しすぎると、かえって柔軟な制作体制を組みにくくなる場合もあります。禁止するか、通知・承諾を条件に認めるかは、プロジェクトの性質や求める関与の深さに応じて判断します。
下請けに当たるかどうかを確かめる方法
発注者から見て、自社が委託した制作会社が、さらに別の会社に業務を委託している場合、その関係は再委託先にとっての「受託」にあたります。発注者自身が再委託の是非を法律上判定する必要はありませんが、委託する側(制作会社)には、取引条件を書面または電磁的方法(メールなど)で明示する義務や、代金・報酬の支払期日を守る義務など、取適法(旧 下請法。製造委託等に係る中小受託事業者に対する代金の支払の遅延等の防止に関する法律)や、フリーランス・事業者間取引適正化等法に基づく義務が生じることがあります。フリーランス・事業者間取引適正化等法の対象は、従業員を使っていない個人や、代表者 1 人だけで従業員のいない法人に業務委託する場合です。取引条件の明示は委託するすべての事業者にかかり、給付を受け取った日から 60 日以内の支払期日の定めなどは、従業員を使っている事業者などが委託する場合にかかります。
発注者としては、こうした制度の対象になり得る再委託が行われているかどうかを、契約前の体制確認の中で尋ねておくと、制作会社側の対応状況も見えてきます。
再委託先の品質・納期を管理してもらう
再委託を認める場合も、発注者が再委託先と直接やり取りして管理する必要はありません。むしろ、管理の責任は元の制作会社に一本化しておく方が、連絡の経路がすっきりします。
- 進行状況の報告は、再委託先からではなく元の制作会社から受ける
- 修正依頼や仕様変更は、元の制作会社の窓口を通して伝える
- 検収(成果物の確認・合格の判断)は、再委託先ではなく元の制作会社との間で行う
このように窓口を一本化しておくと、再委託先が途中で変わった場合でも、発注者側の進め方を変える必要がなくなります。
まとめ
- 再委託は、専門工程ごとの分業として行われていれば問題はない
- 問題になりやすいのは、元の制作会社が進行や品質への関与を失い、丸投げに近い状態になること
- 契約前に、体制・連絡窓口・再委託の範囲・責任の所在・守秘義務を確認しておく
- 契約書には、再委託の事前通知・承諾、再委託先への責任の帰属を条項として明記する
- 進行管理・修正依頼・検収の窓口は、元の制作会社に一本化しておくと分かりやすい
制作会社の選び方や契約の結び方は失敗しにくい制作会社の選び方、契約書に書いておきたい基本事項はホームページ制作の契約書で確認すること、情報を扱ってもらう前の守秘契約は秘密保持契約(NDA)でまとめています。契約前の相談や見積もりはサービスと料金からご確認いただけます。
よくある質問
見積書に載っている制作会社が、実際には何もせず外部に丸投げしているかどうか、どうすれば分かりますか。
契約前の打ち合わせで、デザイン・コーディング・システム開発のそれぞれを誰が担当するかを具体的に尋ねます。担当者名や会社名まで答えられず、曖昧な返事しか返ってこない場合は、実際の作業者が決まっていないか、答えたくない事情がある可能性があります。契約書に再委託に関する条項を入れ、再委託する場合は事前に通知する義務を明記しておくと、後から経緯を確認しやすくなります。
再委託そのものを禁止する契約にした方がよいのでしょうか。
必ずしもそうとは限りません。専門分野ごとに得意な会社へ再委託する方が、結果として品質が上がることもあります。重要なのは再委託の可否を曖昧にしないことです。再委託を認める場合も、発注者への事前通知・承諾、再委託先に対する責任は元の制作会社が負うこと、情報の守秘義務を再委託先にも及ぼすことを契約書に明記しておきます。
再委託先とのトラブルは、誰が責任を持つのですか。
契約書で特段の定めがない限り、発注者から見た契約の相手方は、あくまで最初に契約を結んだ制作会社です。再委託先の作業に問題があっても、発注者は元の制作会社に是正や損害の賠償を求めるのが基本的な筋道になります。契約書に「再委託先の行為について、委託事業者が自己の行為と同様の責任を負う」といった条項を入れておくと、この点があいまいになりません。