名刺・チラシ・サイトの見た目を揃える方法|ばらばらになる原因
名刺はある印刷会社で、チラシは別のデザイナーに、ホームページは知り合いの紹介で、看板は看板屋さんの提案で。こうして少しずつ作ってきた販促物を並べてみると、ロゴの色が微妙に違う、書体がばらばら、写真の雰囲気もそろっていない。多くの会社やお店で見かける状態です。
見た目がばらばらだと、お客様は「同じ会社のものだ」と気づきにくくなり、せっかく何度も目に触れているのに印象が積み重なりません。この記事では、ばらばらになる原因と、統一感を取り戻すための手順を説明します。よく聞く「トンマナ」という言葉の意味も、あわせて整理します。
トンマナとは
トンマナは「トーン&マナー」の略で、制作物の見た目と語り口の決まりごとを指す言葉です。色・書体・写真の雰囲気・余白の取り方・言葉づかいなど、全体の「らしさ」を形づくる要素をまとめて呼びます。
「トンマナを揃える」とは、名刺・チラシ・ホームページのように形や大きさが違うものでも、見た人が同じ会社のものだと感じられるよう、これらの要素を一貫させることです。専門用語のように聞こえますが、中身は「会社の見た目の決まりを作って守る」ということです。
見た目がばらばらになる5つの原因
1. 決まりが言葉になっていない
ロゴはあっても、色の番号や使う書体が決まっていないと、依頼先ごとに「それらしい色」「それらしい書体」が選ばれます。決まりが頭の中にしか無い状態です。
2. 依頼先がそのたびに違う
依頼先を変えること自体は問題ありません。問題は、依頼先に渡す資料が毎回違う、あるいは何も渡していないことです。
3. ロゴのデータが手元に無い
ホームページから保存した小さなロゴ画像を印刷物に使う、名刺の写真からロゴを描き直してもらう。こうした作業のたびに、形や色が少しずつずれていきます(データの種類はロゴのデータ形式)。
4. 媒体ごとの色の違いを知らない
画面の色(RGB)と印刷の色(CMYK)は仕組みが違います。同じ色の番号を決めていないと、名刺とホームページで色が違って見えます。
5. 担当者の好みで作られている
チラシは営業の担当、ホームページは若手の社員、と作る人が違うと、それぞれの好みが反映されます。好みの問題ではなく、決まりの問題です。
揃えるべき5つの要素
統一感は、次の5つの要素でほぼ決まります。すべてを細かく決める必要はなく、それぞれ最低限の決まりがあれば十分です。
| 要素 | 最低限決めること | よくあるずれ |
|---|---|---|
| ロゴ | 使う版(カラー・白黒・白抜き)、周りの余白、最小の大きさ | 縦横比が変わる、影や縁取りが付く |
| 色 | メインの色と補助の色の番号(印刷用と画面用) | 媒体ごとに微妙に違う色になる |
| 書体 | 見出し用と本文用の2〜3種類 | 依頼先ごとに違う書体が使われる |
| 写真 | 明るさ・色味・人物の撮り方の方向 | 明るい写真と暗い写真が混ざる |
| 言葉づかい | 会社の呼び方、敬体か常体か、よく使う言い回し | 媒体ごとに口調が違う |
色の決め方はコーポレートカラーの決め方で、写真の扱いは素材写真の使い方と注意点で詳しく説明しています。
統一感を取り戻す手順
手順1:今ある販促物を棚卸しする
名刺・封筒・チラシ・パンフレット・看板・のぼり・ホームページ・SNS のアイコン・Googleマップの店舗情報の写真・見積書や請求書の書式など、お客様の目に触れるものをすべて集めて並べます。写真に撮って1枚の資料にまとめると、ずれが一目で分かります。
手順2:基準にするものを決める
並べた中から、いちばん「うちらしい」と思えるものを基準に選びます。多くの場合はロゴと、その色です。基準が決まれば、ほかのものをそれに合わせればよくなります。
手順3:決まりを1枚にまとめる
上の表の5つの要素について、決まりを書き出します。最初はA4で1〜2枚で十分です。これが社内と依頼先に渡す「見た目の決まり」の資料になります。本格的なものを作るなら、ブランドガイドラインとはで説明している項目を参考にしてください。
手順4:直す順番を決める
一度に全部を直すと費用がかさみます。お客様の目に触れる回数が多く、直す費用が比較的小さいものから手を付けます。
| 優先度 | 対象 | 理由 |
|---|---|---|
| 高い | ホームページ・SNS のアイコン・Googleマップの写真 | 目に触れる回数が多く、直す費用が比較的小さい |
| 高い | 名刺 | 刷り直しの単位が小さく、渡すたびに印象に残る |
| 中くらい | チラシ・パンフレット | 次に刷る時期に合わせて直す |
| 低い | 看板・車両 | 費用が大きいので、傷んだ時期や移転に合わせる |
| 随時 | 封筒・伝票・書類の書式 | 在庫がなくなった時に新しい決まりで作る |
手順5:依頼先に同じ資料を渡す
次に何かを作るとき、依頼先に必ず、ロゴのデータ一式と見た目の決まりの資料を渡します。これだけで、依頼先が変わってもずれにくくなります。
事業や店舗が複数あるときの揃え方
事業が複数ある会社や、店舗ごとに雰囲気を変えたいお店では、「全部同じにする」と「全部ばらばら」のあいだの設計が必要になります。考え方は大きく3つです。
| 考え方 | 揃えるもの | 変えてよいもの | 向いている場合 |
|---|---|---|---|
| ひとつの顔にまとめる | ロゴ・色・書体のすべて | 写真や言葉の中身だけ | 事業どうしの関係が深く、同じお客様に売る |
| 共通の骨格に、事業ごとの色 | ロゴの形・書体・余白の取り方 | 事業ごとのアクセントの色 | 事業ごとにお客様が違うが、会社の信用を共有したい |
| 事業ごとに別の顔 | 会社としての最低限の表記(会社名・所在地の書き方) | ロゴ・色・書体 | 事業どうしの印象を分けたほうがよい |
迷ったときは、真ん中の「共通の骨格に、事業ごとの色」から考えると、会社としてのまとまりと事業ごとの違いを両立させやすくなります。書体と余白の取り方を共通にするだけでも、並べたときに同じ会社のものだと伝わります。複数の事業を一つの顔にまとめた例として、伎冶商事のコーポレートサイトの解説も参考にしてください。
社内で崩さないための工夫
決まりを作っても、社内で守られなければ元に戻ります。守りやすくするための工夫を挙げます。
- 共有のフォルダにロゴとひな形を置く:ロゴのデータ、名刺やチラシのひな形、使う書体の案内を1か所にまとめ、ほかの場所に古いデータを残さない
- ひな形を用意する:社員が自分で作る資料(見積書・案内文・社内掲示)の書式を用意しておく
- 確認する人を決める:新しい印刷物を作るとき、決まりに沿っているかを一人が確かめる
- 書体の確認も一緒に:社内で使う書体は、商用利用やロゴへの使用の条件を確かめたうえで決めておく(フォントのライセンスで注意すること)
揃えることは、覚えてもらうこと
お客様が会社を覚えるのは、ロゴを一度見たときではなく、名刺・チラシ・ホームページ・看板で同じ印象に何度も出会ったときです。見た目を揃えることは、デザインの好みの話ではなく、これまでの販促の積み重ねを無駄にしないための工夫だと考えてください。
Lapisデザインラボのロゴ・名刺・販促物のプランには、色・書体・写真の使い方をまとめたブランドガイドが含まれています。内容はサービスと料金をご覧ください。
よくある質問
トンマナとは何ですか。
「トーン&マナー」の略で、色・書体・写真・言葉づかいなど、見た目と語り口の決まりごとの全体を指す言葉です。デザインの現場では「トンマナを揃える」のように、複数の制作物の雰囲気を一貫させる意味で使われます。
販促物を全部作り直さないと、統一感は出ませんか。
全部を一度に作り直す必要はありません。まず色・書体・ロゴの使い方の決まりを作り、次に作る印刷物から順に合わせていけば、1〜2年で自然に揃っていきます。お客様の目に触れる回数が多いもの(名刺・ホームページ・看板)から先に直すと効果が早く出ます。
別々の会社に頼んでも見た目は揃えられますか。
揃えられます。そのためには、ロゴのデータ、色の番号、使う書体、写真の雰囲気をまとめた資料を、すべての依頼先に同じように渡すことが大切です。資料が無いと、依頼先ごとに解釈が変わり、ばらばらになります。