社会保険労務士事務所のホームページに載せる項目と構成
社会保険労務士(社労士)の事務所を開くとき、最初の顧問先は紹介で決まることが多いものです。それでも、紹介された経営者は、会う前に事務所の名前を検索し、どんな業務を頼めるのか、料金はどのくらいか、どんな人が担当するのかを確かめます。ホームページは、この「会う前の確認」に答えるための場所です。
この記事では、社労士事務所のホームページに載せる項目とページの構成、業務の案内と料金表の書き方、名称の使い方や広告で気をつけることをまとめます。事務所のロゴや名刺の考え方は士業事務所のロゴと名刺で説明しているので、ここではホームページの中身に絞ります。広告の表現の細かな決まりは、所属する都道府県の社会保険労務士会の会則や指針で確かめてください。
社労士事務所のホームページを見る人
社労士事務所のホームページを見るのは、主に次のような人です。見る人によって、確かめたいことが違います。
| 見る人 | 確かめたいこと |
|---|---|
| 顧問の社労士を探している経営者 | 自社の規模や業種に慣れているか、月額の料金、やり取りの方法 |
| 手続きを急いでいる総務の担当 | 単発で頼めるか、どのくらいで終わるか、料金 |
| 開業したばかりの経営者 | 従業員を雇うときに何をすればよいか、まとめて頼めるか |
| ほかの士業(税理士など) | 顧問先を紹介してよい相手か、得意な分野 |
顧問を探している経営者は、一つの事務所だけを見て決めることは少なく、何か所かを比べています。比べるときに、料金が分からない、担当者の顔が見えない、どこまで頼めるのかが曖昧、という事務所は、問い合わせの候補から外れやすくなります。
載せる項目とページの構成
開業したばかりの事務所なら、次の構成で始められます。
| ページ | 載せること |
|---|---|
| トップ | 事務所の名前、得意な業種や規模、主な業務、対応する地域、問い合わせの入口 |
| 業務の案内 | 手続きの代行、帳簿書類の作成、給与計算、労務の相談、就業規則の作成など。業務ごとに対象と進め方 |
| 料金 | 顧問料、単発の業務の料金、含まれるものと含まれないもの |
| 事務所と社労士の紹介 | 代表の氏名と写真、所属する社会保険労務士会、登録番号、経歴、事務所の所在地 |
| 相談の流れ | 問い合わせから初回の面談、契約、業務の開始までの流れ |
| よくある質問 | 電子申請への対応、訪問の可否、顧問の途中で解約するときの扱い |
| 問い合わせ | 電話とフォーム。返事までの日数 |
| プライバシーポリシー | 問い合わせで受け取る情報の扱い |
所属する社会保険労務士会や登録番号を載せておくと、比べている経営者やほかの士業が、資格を確かめやすくなります。事務所のある場所から遠い会社の依頼も受けるなら、オンラインの面談や電子申請で対応できる範囲を「対応する地域」として書いておきます。
業務の案内の書き方
困りごとの単位で分ける
社会保険労務士法の第2条には、社労士の業務として、労働社会保険の諸法令にもとづく書類の作成と提出の代行、帳簿書類の作成、労務管理などについての相談と指導が定められています。ただ、依頼する側は条文の区分で考えているわけではありません。業務の案内は、次のように依頼する側の困りごとの単位で分けると伝わりやすくなります。
- 従業員を初めて雇う(労働保険・社会保険の加入の手続き)
- 入社や退職のたびの手続きを任せたい
- 毎月の給与計算を任せたい
- 就業規則を作りたい、見直したい
- 労務のトラブルを相談したい
それぞれのページには、対象になる会社、事務所が行うこと、会社に用意してもらうもの、期間の目安、料金を書きます。書き方の型はサービス紹介ページの書き方で説明しています。
2025年の改正で明記されたこと
2025年6月25日に公布された改正社会保険労務士法では、社労士の使命の規定が設けられ、労務管理などについての「法令並びに労働協約、就業規則及び労働契約の遵守の状況を監査すること」(いわゆる労務監査)が、社労士の業務に含まれることが明記されました。厚生労働省の通知では、これは従前から行われてきた労務監査が相談・指導の業務に含まれることを明記したもので、業務の範囲を広げたり狭めたりしたものではないとされています。労務監査を案内する場合も、「新しくできるようになった業務」とは書かず、何を確かめ、どんな報告を出すのかを具体的に書きます。
特定社会保険労務士の業務
紛争解決手続代理業務試験に合格し、名簿に付記を受けた特定社会保険労務士は、労働局などで行われる個別の労働紛争のあっせんなどで、代理の業務ができます。全国社会保険労務士会連合会の説明では、厚生労働大臣の指定する団体が行う裁判外の紛争解決の手続きで代理できるのは、紛争の目的の価額が120万円までとされています。付記を受けている場合は、紹介のページにそのことを書き、どんな場面で代理ができるのかを業務の案内に分けて書きます。
料金表の載せ方
社労士事務所の料金は、月々の顧問料と、単発の業務の料金に分けて載せるのが一般的です。顧問料は、従業員の人数で段階を分けると、自社がどこに当たるかがすぐに分かります。
| 従業員の人数 | 月額の顧問料(手続きと相談) | 給与計算を加える場合 |
|---|---|---|
| 〇人まで | 〇〇円 | 〇〇円 |
| 〇〜〇人 | 〇〇円 | 〇〇円 |
| 〇人以上 | 個別にお見積もり | 個別にお見積もり |
表のほかに、次のことを同じページに書きます。
- 月額に含まれる業務:入社や退職の手続き、労務の相談の回数や方法など
- 別に料金がかかる業務:就業規則の作成、年に一度の手続き(労働保険の年度更新など)、調査への立ち会い
- 税込か税抜か:国税庁の説明では、消費税を含めた総額の表示(総額表示)の義務は、事業者が消費者に対してあらかじめ価格を表示する場合が対象です。顧問先が事業者だけなら税抜で書く事務所もありますが、その場合も「税抜」と必ず書きます。個人から年金の相談などを受けて料金を示すなら、税込の総額で書きます
- 最低の契約期間と解約の申し出の時期
「〇〇円〜」とだけ書くと、問い合わせのあとで金額の差に驚かれます。いちばん安い金額だけを大きく見せず、何人の会社でどの業務を頼むといくらか、という条件と一緒に書きます。
名称の使い方と広告で気をつけること
名称の使用の制限
社会保険労務士法の第26条では、社会保険労務士でない者が、社会保険労務士やこれに類似する名称を使うことが禁じられています。2025年の改正では、類似する名称に「社労士」が含まれること、社会保険労務士法人に類似する名称に「社労士法人」が含まれることが明記されました。事務所の名前を決めるときは、個人の事務所なのに「社労士法人」と読める名前にしないなど、事務所の形と名前を合わせます。
広告の表現
広告の表現について、弁護士のように細かな規程を公表している士業もあります(法律事務所の例は法律事務所のホームページの作り方で紹介しています)。社労士の場合は、所属する都道府県の社会保険労務士会の会則や指針を、公開の前に確かめます。厚生労働省は2025年の改正の通知の中で、不適切な情報発信を行っている旨の情報に接した場合は、都道府県の社会保険労務士会とも連携して必要な措置をとるよう、労働局などに求めています。
一般的な会社のホームページでよく見る次のような表現は、根拠を示せない限り使わないと考えておきます。
- 「必ず」「絶対」のように結果を約束する言葉
- 根拠の無い「地域No.1」「業界最安」
- ほかの事務所を名指しして比べる表現
- 事実と違う、または大きく見せた顧問先の数や経歴
問い合わせの入口をつくる
社労士への相談には、従業員の名前や健康の状態、トラブルの内容など、扱いに注意が要る情報が含まれやすくなります。最初のフォームでは、会社の名前、連絡先、従業員の人数、相談したい業務の種類、希望の連絡方法にとどめ、詳しい事情は面談で聞く形にします。フォームの項目の決め方は問い合わせフォームの項目の決め方にまとめています。
制作会社に伝えること
社労士事務所のホームページを頼むときは、次のことを決めてから相談すると、やり取りが早く進みます。
- 得意な業種と、主な顧問先の規模
- 業務の一覧と、それぞれの料金(顧問料の段階、単発の料金)
- 対応する地域と、オンラインでの対応の範囲
- 所属する社会保険労務士会と、紹介のページに載せる経歴
- 公開前に表現を確かめる人(文章の最終の確認は事務所が行う)
文章の下書きを制作会社に頼む場合も、表現が会則や指針に合っているかを確かめる責任は事務所にあります。Lapisデザインラボのホームページ制作の内容は、サービスと料金に載せています。
よくある質問
社労士事務所のホームページには、何ページくらい要りますか。
開業したばかりの事務所なら、トップ、業務の案内、料金、事務所と社労士の紹介、相談の流れ、よくある質問、問い合わせの7ページ前後で始められます。業務の案内は、手続き、給与計算、労務の相談のように、依頼する側の困りごとの単位で分けると読みやすくなります。
顧問料の料金表は、ホームページに載せたほうがよいですか。
載せておくと、問い合わせの前に予算が合うかを確かめてもらえます。顧問料は従業員の人数で段階を分け、月額に含まれる業務と、別に料金がかかる業務を同じ表の近くに書きます。税込か税抜かも必ず書きます。
社労士の広告には、どんな決まりがありますか。
社会保険労務士法では、社会保険労務士でない者が社会保険労務士やこれに類似する名称を使うことが禁じられており、2025年の改正で「社労士」が類似する名称に含まれることが明記されました。広告の表現そのものについては、所属する都道府県の社会保険労務士会の会則や指針を確かめてください。厚生労働省は改正の通知で、不適切な情報発信の情報に接した場合は都道府県の社会保険労務士会と連携して対応するよう、労働局などに求めています。