士業事務所のロゴと名刺|信頼感を出すデザインの考え方
行政書士、社会保険労務士、司法書士などの事務所を開くとき、名刺とロゴをどうするかで悩む方は多いと思います。士業は信頼が第一の仕事なので、派手なデザインは避けたい。一方で、同じ資格の事務所は地域にいくつもあり、どこも紺色の名刺に明朝体の事務所名、という似た見た目になりがちです。
この記事では、士業の事務所が、ロゴと名刺で信頼感とほかの事務所との違いを両立させるための考え方をまとめます。
士業の見た目で大切なこと
士業の事務所を選ぶお客様は、次のようなことを気にしています。
- この人に任せて大丈夫か(誠実さ、確かさ)
- 自分の相談を分かってくれるか(得意な分野、話しやすさ)
- 料金や進め方がはっきりしているか
ロゴや名刺は、このうち「誠実さ」と「得意な分野」を、会う前や会った瞬間に伝える道具です。信頼感は、奇抜さを避け、整った見た目にすることで生まれます。違いは、主なお客様と得意な分野に合わせて、色や形を選ぶことで生まれます。
事務所の名前を決める
ロゴの前に、事務所の名前を決めます。士業の事務所の名前は、大きく次の形があります。
| 名前の形 | 例 | 向いている事務所 |
|---|---|---|
| 個人の名字 | 〇〇行政書士事務所 | 個人の信頼で選ばれたい |
| 地域の名前 | 〇〇(地名)社労士事務所 | 地域のお客様が中心 |
| 考え方を表す言葉 | 〇〇(言葉)司法書士事務所 | 事務所の考え方を伝えたい。将来、人を増やしたい |
資格の名前は、その資格を持ち、登録している人だけが使えます。行政書士法19条の2、社会保険労務士法26条、司法書士法73条3項では、資格を持たない人が、その名称や紛らわしい名称を使うことを禁じています。事務所の名前の付け方や表示について、所属する会の会則などに決まりがある場合もあるので、決める前に確かめます。
名前を決めたら、同じ地域に似た名前の事務所が無いか、ドメインが取れるかも確かめておきます。ドメインの取り方は会社のドメインの取り方で説明しています。
士業のロゴでよく使われる形
| 形 | 印象 | 気をつけること |
|---|---|---|
| 事務所名の文字だけ(ロゴタイプ) | 落ち着いた、確かな印象 | 書体の選び方で印象が大きく変わる |
| 頭文字を図形にしたマーク | 覚えてもらいやすい | よくある形にならないよう工夫が要る |
| 天秤、盾、ペンなどの図 | 仕事の内容が伝わる | 同じ図を使う事務所が多い |
| 植物、家、手などの図 | 温かみ、寄り添う印象 | 士業らしい落ち着きと両立させる |
天秤やペンのような、仕事をそのまま表す図は分かりやすい一方、同じ図を使う事務所が多く、違いが出にくくなります。事務所の考え方や、主なお客様に近い形から考えると、覚えてもらいやすいロゴになります。
資格の団体が使っているマークやバッジの図柄を、自分の事務所のロゴにそのまま使うことは避けます。団体の印と誤解されるおそれがあり、使い方に決まりがある場合もあります。
色と書体の選び方
士業でよく使われるのは、紺、深い緑、灰色、えんじなどの落ち着いた色です。誠実さや堅実さの印象を与えやすい一方、同じ色の事務所が多くなります。違いを出すには、次のように考えます。
- 主なお客様から考える:相続や家族の相談が多いなら、温かみのある色を添える。会社の労務が多いなら、落ち着いた色を主にする
- 得意な分野から考える:起業の支援が多いなら、明るい色を差し色にする
- 差し色を一つ決める:落ち着いた主な色に、事務所だけの差し色を一つ加える
書体は、明朝体なら伝統や格式、ゴシック体なら親しみや分かりやすさの印象になります。高齢のお客様が多い事務所では、名刺や書類の文字を小さくしすぎないことも大切です。色の決め方はコーポレートカラーの決め方で説明しています。
名刺に載せる項目
| 項目 | 書き方の注意 |
|---|---|
| 事務所の名前とロゴ | ロゴの決まりどおりに |
| 氏名と資格の名称 | 資格者本人だけ。職員の名刺では資格者と誤解されない書き方に |
| 登録番号・所属する会 | 載せる場合は、所属する会の決まりを確かめる |
| 取り扱う分野 | 主なものを3つほどに絞る |
| 住所、電話、メール | 事務所の連絡先 |
| ホームページのアドレス、二次元コード | 詳しい情報へつなぐ |
取り扱う分野を名刺の裏にたくさん並べる事務所もありますが、何でもできますという印象になり、かえって得意が伝わりにくくなります。主な分野を絞って書き、詳しくはホームページで見てもらう形にすると、名刺がすっきりします。名刺の作り方は名刺デザインで決めることにまとめています。
名刺の紙と印刷
士業の名刺は、手に取ったときの感触も印象を左右します。薄い紙より、少し厚みのある紙の方が、しっかりした印象になります。ロゴや事務所名に箔押しや浮き出しの加工を入れる方法もありますが、控えめな加工にとどめる方が、士業らしい落ち着きを保てます。紙と加工の選び方は紙と加工の選び方で説明しています。
ホームページと書類を揃える
士業の事務所では、名刺のほかに、ホームページ、封筒、請求書、見積書、契約書のひな形、セミナーの資料など、事務所の名前を出す書類がたくさんあります。ロゴと色、書体を決めたら、これらも同じ見た目で揃えます。
- ホームページ:取り扱う分野、料金の目安、相談の流れ、代表の紹介
- 封筒と書類のひな形:ロゴの位置、書体、色を揃える
- メールの署名:事務所の名前、資格者の氏名、連絡先を名刺と同じ表記で
- セミナーの資料:表紙と各ページのひな形を作っておく
開業したばかりの事務所では、全部を一度に作る必要はありません。まずロゴ、名刺、書類のひな形を揃え、ホームページはその後で作る順番でも十分です。士業の事務所のホームページの考え方は税理士・会計事務所のホームページも参考になります。
代表の写真も見た目の一部
士業の事務所では、お客様は「事務所」よりも「その先生」を選ぶことが多くあります。名刺やホームページに代表の写真を載せる事務所も多く、その写真の印象も事務所の見た目の一部です。
写真は、スマートフォンで撮ったものより、プロに撮ってもらう方が、落ち着いた信頼感が出ます。背景の色をロゴの色と合わせる、服装を事務所の雰囲気に合わせる(かっちりしたスーツか、やわらかい色のジャケットか)など、ロゴや名刺と揃えて考えると、全体の印象がまとまります。表情は、硬すぎない、話しかけやすい笑顔のものを一枚は用意しておくと、相談の入口のページで使いやすくなります。
頼むときに伝えること
ロゴと名刺をデザインの依頼先に頼むときは、次のことを伝えます。
- 資格と、取り扱う主な分野
- 主なお客様(個人か会社か、年代、地域)
- 事務所で大切にしていること
- 近くの同じ資格の事務所との違い
- 避けたい見た目(派手すぎる、硬すぎる、など)
- 名刺に載せる項目と、所属する会の決まり
士業の業界の決まりをデザインの依頼先がすべて知っているとは限りません。資格の名称や登録番号の書き方は、事務所の側で確かめてから伝えます。業種ごとの見た目の考え方は業種別・信頼される見た目の定石で説明しています。
Lapisデザインラボでは、ロゴと名刺から始めるプランを用意しています。内容と料金はサービスと料金に載せています。
よくある質問
士業の事務所に、ロゴは必要ですか。
必ず要るわけではありませんが、名刺、ホームページ、封筒、請求書、セミナーの資料など、事務所の名前を出す場面は多くあります。ロゴがあると、どの場面でも同じ印象で事務所を覚えてもらえます。資格のバッジ(徽章)の印象に頼るだけでは、同じ資格のほかの事務所との違いが伝わりにくいため、事務所として何を大切にしているかを表す印を持つ意味があります。
士業のロゴは、どんな色がよいですか。
紺や深い緑、灰色など、落ち着いた色は、誠実さや堅実さの印象を与えやすく、士業でよく使われます。ただ、同じ色の事務所が多いため、違いが出にくくもなります。相続や家族の相談が多いなら温かみのある色を添える、起業の支援が多いなら明るい色を差し色にする、など、主なお客様と得意な分野から考えると、信頼感と違いを両立しやすくなります。
名刺に資格の名前を書くときに、気をつけることはありますか。
資格の名前は、その資格を持ち、登録している人だけが使えます。たとえば行政書士法19条の2、社会保険労務士法26条、司法書士法73条3項では、資格を持たない人がその名称や紛らわしい名称を使うことを禁じています。事務所の職員の名刺では、資格者と誤解されない書き方にします。登録番号や所属する会の書き方は、所属する会の決まりを確かめます。