酒蔵・酒販店のホームページ|酒類の表示とネットで売るときの決まり
酒蔵や酒販店のホームページは、ほかの業種のホームページと比べて、決まりの多い分野です。お酒を売るには免許が要り、ネットで売る場合は売り方と売れるお酒の範囲に条件が付き、注文の画面や納品書に載せる文言まで国税庁の告示で決まっています。紹介のページだけのつもりで作り始め、あとから「ネットでも売りたい」となったときに、作り直しになることもあります。
この記事では、酒蔵と酒販店のホームページに載せる中身を整理したうえで、ネットでお酒を売るときの免許と表示の決まりを、国税庁の手引と告示にそってまとめます。最終的な判断は所轄の税務署(酒類の担当)が行うので、この記事は、相談の前に全体をつかむための材料として使ってください。
酒蔵と酒販店で、ホームページの役割が違う
| 酒蔵 | 酒販店 | |
|---|---|---|
| 主な読み手 | 銘柄を知って調べる人、取扱店を探す人、飲食店や酒販店の仕入れの担当、蔵見学に来る人 | 近くでお酒を買いたい人、贈り物を探す人、飲食店 |
| 伝えること | 蔵の歴史と造り、銘柄ごとの特徴、どこで買えるか | 品揃えの傾向、店の人の選び方、試飲やイベント |
| 売り方 | 取扱店への案内が中心。蔵からの直販を行うこともある | 店頭が中心。取り寄せや配達、ネットでの販売を行うこともある |
酒蔵のホームページで、意外に読まれるのが取扱店の一覧です。銘柄の名前で調べた人の多くは、「どこで買えるか」を知りたがっています。直販をしない蔵でも、取扱店の一覧を地域ごとに載せておけば、ホームページが売り場への案内になります。
酒蔵のホームページに載せるページ
| ページ | 載せること |
|---|---|
| トップ | 蔵の名前と代表する銘柄、取扱店への入口、蔵見学や直売所の案内 |
| 蔵について | 創業、土地と水、造りの考え方、杜氏(造りの責任者)と蔵人 |
| 銘柄・商品 | 銘柄ごとのページ。品目、特定名称、原料米、精米歩合、アルコール分、容量、味の特徴、合う料理 |
| 造り | 仕込みの季節ごとの作業、写真 |
| 取扱店 | 地域ごとの酒販店・飲食店の一覧(掲載の了解を得たもの) |
| 蔵見学・直売所 | 受付の方法、日時、所要時間、交通、試飲の扱い |
| 取引先の方へ | 取引の窓口、商品の規格、出荷の単位 |
| 会社の情報 | 会社名、所在地、代表者、製造免許の区分(載せる場合) |
取引先向けの情報を一般向けとどう分けるかは、食品メーカーのホームページの考え方がそのまま使えます。
銘柄・商品のページに書くこと
商品のページは、ラベルに書いてあることと食い違わないようにするのが基本です。
- 品目:清酒、果実酒、リキュールなど
- 特定名称:吟醸酒、純米酒、本醸造酒など。国税庁の「清酒の製法品質表示基準」で、原料や造り方の要件を満たした清酒だけが名乗れる名称と定められています。ラベルで名乗っていない名称を、ホームページで書き足さないようにします
- 精米歩合:白米の、もとの玄米に対する重さの割合。特定名称を表示する清酒では、容器に原材料名と近い場所に書くことが決まっています
- 原料米・アルコール分・容量
- 価格:消費者に向けた価格は税込の総額で書く(国税庁の総額表示の説明では、表示の媒体は問わないとされています)
- 味と飲み方:甘口・辛口の傾向、温度、合う料理
製法品質表示基準は、容器や包装の表示の決まりです。ただ、ホームページの説明がラベルと違っていると、どちらが正しいのか分からなくなります。商品のページを作るときは、ラベルの写真か原稿を制作会社に渡し、その表記に合わせてもらいます。
酒販店のホームページに載せるページ
酒販店では、店に来てもらうことが主な目的になります。
| ページ | 載せること |
|---|---|
| トップ | 店の特徴(地酒が多い、ワインに強いなど)、営業日と時間、地図 |
| 品揃え | 扱う蔵や産地、季節の入荷の知らせ |
| 選び方の相談 | 贈り物の相談、予算と好みでの選び方、名入れやのしの対応 |
| 試飲・イベント | 日時、参加の方法、20歳以上であることの確認 |
| 飲食店の方へ | 配達の範囲、取引の窓口 |
| 店の情報 | 所在地、駐車場、酒類販売管理者の標識の内容 |
ネットでお酒を売るときの免許
2都道府県以上に売るなら「通信販売酒類小売業免許」
お酒の販売業を行うには、販売場ごとに、その所在地の所轄の税務署長から販売業免許を受ける必要があります。そのうち、2都道府県以上の広い地域の消費者に向けて、商品の内容や価格をネットやカタログで示し、郵便や電話、ネットなどで申し込みを受けて売る形(通信販売)でお酒を小売りできるのが、通信販売酒類小売業免許です。
| 売り方 | 必要な免許(国税庁の手引の整理) |
|---|---|
| 店頭で売る | 一般酒類小売業免許 |
| 販売場のある都道府県の中の消費者だけに、ネットや電話で売る | 一般酒類小売業免許 |
| 2都道府県以上の広い地域の消費者に、ネットやカタログで売る | 通信販売酒類小売業免許 |
通信販売酒類小売業免許では、店頭での小売りや、1つの都道府県の消費者だけを対象にした小売りはできません。また、「通信販売を除く小売に限る」という条件の付いた一般酒類小売業免許を持つ店が、新たに広い地域への通信販売を始めるときは、条件の緩和の手続きが必要です。手引には、免許を受けずに販売業を行った場合は、酒税法により1年以下の拘禁刑または50万円以下の罰金に処されると書かれています。
通信販売で売れるお酒の範囲
通信販売酒類小売業免許で売れるお酒には、範囲の決まりがあります。
- 国産のお酒:カタログ等の発行の日が属する会計年度の前の年度に、品目ごとの課税移出数量(蔵から出荷して酒税がかかった量)がすべて3,000キロリットル未満である製造者(特定製造者)が造り、販売するお酒。または、地方の特産品などを原料に、特定製造者以外の製造者に造ってもらうお酒で、委託の数量の合計が3,000キロリットル未満のもの
- 輸入のお酒:品目や数量の制限はありません
つまり、ネットの通信販売で扱える国産のお酒は、主に中小の蔵のお酒です。売れるお酒かどうかは、申請のときに製造者が発行する証明書で示します。品揃えのページを作る前に、扱いたい銘柄が対象かを確かめておくと、作り直しを防げます。
酒蔵が自分の蔵のお酒を売る場合
国税庁の通達では、製造者が、製造免許を受けた製造場で、現に免許を受けている品目と同じ品目のお酒を継続して売ることを「製造場においてする酒類の販売業」とし、酒税法第9条で販売業免許の対象から外しています。一方で、製造場から出荷していないお酒(たとえば仕入れた輸入酒)を売る場合や、製造場以外の決まった場所で売る場合は、販売業免許が要ると書かれています。
蔵のホームページで注文を受けて届ける形が、どの扱いになるかは、売り方によって変わります。ネットでの直販を始める前に、所轄の税務署に売り方を説明して確かめ、その答えに合わせて注文の画面を作ります。
ネットショップに載せる表示
20歳未満の飲酒防止の表示
国税庁の「二十歳未満の者の飲酒防止に関する表示基準」では、お酒の通信販売を行う場合に、次の表示を求めています。
| 場所 | 表示すること |
|---|---|
| 広告やカタログ等(ネットを含む) | 「20歳未満の者の飲酒は法律で禁止されている」または「20歳未満の者に対しては酒類を販売しない」旨 |
| 申し込みの書類(ネットでは申し込みの画面) | 申込者の年齢を書く欄を設け、その近くに上と同じ趣旨の文言 |
| 納品書など(ネットでの通知を含む) | 「20歳未満の者の飲酒は法律で禁止されている」旨 |
文字は、10ポイントの活字(ネットの場合は、お酒の価格の表示に使っている文字)以上の大きさで、明瞭に表示します。民法の成年年齢は18歳に引き下げられましたが、お酒の年齢の制限は20歳のままです。
通信販売酒類小売業免許には、購入を申し込む人が20歳未満でないことを確かめる手段をとる、という条件も付きます。年齢を書く欄だけでなく、どのように確かめるかを決めて、注文の流れに組み込みます。
酒類販売管理者の標識
お酒の小売業者は、販売場ごとに酒類販売管理者を選び、その氏名や研修の受講の事績を記した標識を掲げます。手引では、ネットを含むカタログ等で通信販売を行う場合も、次の内容を見やすい場所に表示するよう求めています。
- 販売場の名称と所在地
- 酒類販売管理者の氏名
- 酒類販売管理研修の受講年月日
- 次回の研修の受講期限(受講日の3年後の前日)
- 研修を行った団体の名前
小売業者は、酒類販売管理者に、前回の受講から3年を超えない期間ごとに研修を受けさせるよう努めることとされています。受講のたびに③と④が変わるので、標識の内容は数年おきに書き換えが要ります。ネットショップのどこに置き、誰が直すかを決めておきます。
特定商取引法の表記と税込の価格
ネットで売るときは、特定商取引法に基づく表記も必要です。手引にも、販売方法が特定商取引法の消費者保護の規定に沿っていることが免許の要件として挙げられています。載せる項目は特定商取引法に基づく表記の書き方にまとめています。価格は税込で書き、送料も税込で示します。
蔵見学・試飲・イベントの案内
蔵見学や試飲会の案内では、試飲は20歳以上であることを確かめたうえで行うこと、車で来る人には試飲を勧めないことを書いておきます。予約の方法、所要時間、見学できない時期(仕込みの最中など)、靴や服装の注意も添えます。海外から来る人が多い蔵では、見学の案内だけでも英語のページを用意すると役に立ちます(ホームページの多言語化)。
制作会社に伝えることのチェックリスト
- 紹介だけのホームページか、ネットで売るか。売るなら、持っている免許の種類と条件
- 扱う銘柄と、ラベルの表記(品目・特定名称・精米歩合・アルコール分・容量)
- 取扱店の一覧と、掲載の了解の状況
- 20歳未満の飲酒防止の表示を置く場所(商品ページ、申し込みの画面、注文の確認のメール、納品書)
- 年齢を確かめる方法
- 酒類販売管理者の標識の内容と、更新の担当
- 特定商取引法に基づく表記の内容
ネットショップの作り方と費用の考え方はネットショップ制作の費用の相場で説明しています。Lapisデザインラボのホームページ制作の内容はプランと料金に載せています。
よくある質問
お酒をネットで売るには、どんな免許が要りますか。
2都道府県以上の広い地域の消費者に向けてネットやカタログで売る場合は、販売場ごとに通信販売酒類小売業免許が要ります。販売場のある都道府県の中だけの消費者に売る場合は、一般酒類小売業免許の範囲とされています。どちらに当たるかは、販売場の所在地の税務署に確かめます。
ネットショップには、どんな表示が必要ですか。
国税庁の告示では、広告やカタログ(ネットを含む)に「20歳未満の者の飲酒は法律で禁止されている」などの文言、申し込みの画面に年齢を書く欄とその近くに同じ趣旨の文言、納品書などに「20歳未満の者の飲酒は法律で禁止されている」旨を表示するよう定めています。あわせて、酒類販売管理者の氏名や研修の受講の事績などを記した標識を、カタログ等の見やすい場所に表示します。
酒蔵が自分の蔵の酒をホームページで紹介するだけでも、表示の決まりはかかりますか。
注文を受けずに紹介するだけなら、通信販売の表示の決まりの対象ではありません。ただし、ページから注文を受け付けて届ける形にすると通信販売になります。そのときに必要な免許と表示は、所轄の税務署に確かめてから作ります。