パン屋・洋菓子店のロゴと包装|開業前に決めることと表示の決まり
パン屋や洋菓子店は、お客様が商品を持ち帰る店です。店を出たあとも、紙袋やケーキの箱、焼き菓子の袋に貼ったシールが、家や職場で人の目に触れます。ロゴや包装は、店の外で店を思い出してもらう手がかりになります。
一方で、包装や値札には、見た目のほかに決まりがあります。値札は税込の総額で示すこと、包装した食品には食品表示が要る場合があることです。店で作ってその場で売るパン屋や洋菓子店には、表示の特例もあり、どこまで要るのかで迷いやすいところです。
この記事では、持ち帰り中心のパン屋・洋菓子店が開業前に決めておくロゴの版、袋や箱、シール、値札の作り方と、店で作って売るときの食品表示の扱いを、消費者庁と国税庁の資料にそって整理します。店内で食べるカフェの看板やメニューの作り方はカフェ・飲食店のロゴとメニューデザインで説明しているので、ここでは持ち帰りの包装と値札、表示に絞ります。制度の内容は2026年10月時点のものです。
開業までに作るものの一覧
| 作るもの | 使う場面 | 決めておくこと |
|---|---|---|
| ロゴ | すべての基になる | 横長・縦長・マークだけ・1色の版 |
| 紙袋・ポリ袋 | パンの持ち帰り | 既製品にスタンプやシールか、名入れ印刷か |
| ケーキの箱・ギフト箱 | 生菓子、贈り物 | 箱の大きさの種類、シールやリボンの色 |
| シール・ラベル | 袋の封、焼き菓子の表示 | 大きさ、表示の欄の有無 |
| 値札・プライスカード | 店頭の商品棚 | 大きさ、書く項目、差し替え方 |
| ショップカード | 会計のとき | 住所、営業時間、予約の受け方 |
| ホームページ・地図の写真 | 店を探す人 | 商品の写真、焼き上がりの時間 |
順番は、ロゴを最初に決め、次に包装と値札です。包装は数を多く作るほど1枚あたりが安くなる一方、在庫を抱えることになるので、最初は既製品とロゴの組み合わせから始める店が多くあります。
パン屋・洋菓子店のロゴで考えること
小さく、1色で使う場面が多い
持ち帰りの店のロゴは、看板よりも、紙袋、シール、スタンプ、値札といった小さく単色で使う場面のほうがずっと多くなります。ロゴを頼むときは、次の版がほしいと伝えておきます。
- 1色で刷っても形が分かる版(紙袋の1色印刷、スタンプ用)
- 直径の小さな丸いシールに収まる、マークだけの版
- 茶色のクラフト紙の上でも読める色の組み合わせ
- 値札に小さく入れられる横長の版
細い線や小さな文字が多いロゴは、スタンプやクラフト紙の上ではにじんだり見えにくくなったりします。デザインの案を見る段階で、実際の紙袋やシールの大きさに印刷して確かめると、開業後の作り直しを防げます。ロゴを頼むときに伝える情報はロゴを依頼する前に決めることにまとめています。
店名は商標を確かめてから
焼き菓子を通信販売したり、ほかの店に卸したりする計画があるなら、店名とロゴが商品の名前としても使われることになります。似た名前がすでに登録されていないかを、ロゴを作る前に確かめておきます。考え方はロゴの商標登録は必要かで説明しています。
袋・箱・シールの作り方
| 方法 | 向く場面 | 気をつけること |
|---|---|---|
| 既製の袋にスタンプを押す | 開業直後、数が読めないとき | 押す手間がかかる。にじみにくいロゴの版が要る |
| 既製の袋や箱にシールを貼る | 洋菓子店の箱、焼き菓子の袋 | シールの大きさを2〜3種類に絞る |
| 袋に名入れ印刷をする | 数が安定してから | 最低の注文数と納期を先に確かめる |
| 箱やギフト箱を作る | 贈り物の需要が多い店 | 型から作ると費用と期間が大きくなる |
シールは、封をするだけのロゴのシールと、表示の欄があるラベルを分けて考えます。焼き菓子を袋で売る店は、ロゴと表示の欄を1枚にまとめたラベルにしておくと、貼る手間が1回で済みます。表示の欄の大きさは、後で説明する表示の要否が決まってから決めます。
袋やシール、ショップカードなど小さなロットの印刷物は、ネット印刷と地元の印刷会社で得意な範囲が違います。数量と納期、紙の手ざわりをどこまで確かめたいかで発注先を選びます。
値札・プライスカードの作り方
値札に書くこと
値札は、商品名、価格、ひとことの説明が基本です。ロゴや色を全部の値札でそろえ、大きさを1〜2種類に決めておくと、売り場がまとまって見えます。商品の入れ替えが多い店は、印刷した台紙に手書きや差し込みで商品名と価格を入れる形にすると、作り直しが減ります。
価格は税込の総額で
国税庁の案内では、事業者が消費者に対してあらかじめ価格を表示する場合は、消費税を含めた価格(税込価格)を表示することが義務付けられていて、店頭表示やチラシなど表示の媒体は問わないとされています。値札は「〇〇円(税込)」のように、税込の総額で書きます。
イートインの席がある店
店内で食べる席がある店では、店内飲食と持ち帰りで消費税率が異なります。国税庁の軽減税率制度のQ&A(問121)は、関係省庁の資料を引いて、値札の示し方として次の例を挙げています。
- 持ち帰りと店内飲食の両方の税込価格を書く(例:「総菜パン 〇〇円(店内飲食 〇〇円)」)
- 片方の税込価格だけを書き、店内の目立つ場所に「店内飲食される場合、税率が異なりますので、別価格となります」と掲示する
- 税抜価格を調整して、両方の税込価格を同じにする
片方の価格だけを書く場合に、店内飲食のほうが高いのにその旨をはっきり示さないと、景品表示法の有利誤認(実際より有利だと誤解させる表示)に当たるおそれがあるとも書かれています。
税率の変更に備える
国税庁のタックスアンサー(2026年10月時点)には、2027年4月1日から2029年3月31日までの2年間、飲食料品の消費税率が引き下げられ、飲食料品の総額表示の特例が設けられると書かれています。値札は、価格の部分だけを差し替えられる形にしておくと、税率や価格が変わるときの手間が少なくて済みます。細かい扱いは国税庁の案内で確かめてください。
店で作って売るときの食品表示
食品表示基準は、容器包装に入れられた加工食品を販売するときに、名称や原材料名などの表示を求めています(第3条)。パン屋や洋菓子店では、売り方によって扱いが分かれます。
| 売り方 | 表示の扱い | 根拠 |
|---|---|---|
| 包まずに並べ、買うときに袋や箱に入れる | 表示の対象外とみなされる | 消費者庁 アレルゲンのQ&A(C-1) |
| 混雑を見込み、その日の販売見込み数だけ先に包んで並べる | 表示をしなくても差し支えない。要冷蔵などは販売のときに伝える | 消費者庁 Q&A(加工-192) |
| 同じ店の中で作り、袋や箱に入れて並べる | 一部の表示事項が不要になる(下で説明) | 食品表示基準第5条、Q&A(加工-191) |
| マルシェ、ほかの店への卸、通信販売 | 一般の義務表示が要る | 第5条の場合に当たらない |
「製造し、又は加工した場所で販売する場合」
消費者庁のQ&A(加工-191)は、この場合を「製造者と販売者が同一で、同一の施設内、敷地内で製造販売すること」と説明し、例として洋菓子店・和菓子店などの菓子の製造小売や、パン店の製造小売を挙げています。
この場合、食品表示基準第5条により、原材料名、内容量、栄養成分の量と熱量、食品関連事業者の氏名と住所、原産国名、原料原産地名などの表示は要りません。一方、名称、保存の方法、消費期限または賞味期限、添加物、アレルゲン、製造所の所在地と製造者の氏名などは、第5条の省略の対象に挙がっていません。袋に入れて並べる焼き菓子のラベルを作るときは、これらを載せる欄を確保し、文案を事業所のある地域の保健所に見てもらってから印刷に回すと安心です。
店の外で売るときは一般の表示
マルシェへの出店、カフェやほかの店への卸、ネットでの通信販売は、作った場所で売る場合に当たりません。この場合は、原材料名や内容量、栄養成分なども含めた一般の義務表示が要ります。義務表示の項目と文字の大きさは商品パッケージのデザインを頼むときにまとめています。
店頭用と外で売る用でラベルを分けるか、最初から一般の表示を全部載せた1種類にそろえるかは、品目の数と手間で決めます。外で売る予定が少しでもあるなら、ラベルの表示の欄は一般の表示が入る大きさで作っておくと、刷り直しが要りません。
「国産小麦使用」のような書き方
食品表示基準第7条は、容器包装に「国産××使用」のような特色のある原材料を書くとき、使った割合が100%でなければ割合をあわせて書くよう定めています。作った場所で売る場合はこの条の対象から外れていますが、外で売る商品のラベルには当てはまります。どちらの場合も、書いたことが事実であることが前提です。
アレルゲンの伝え方
アレルゲンの表示が義務になっている特定原材料は、消費者庁の資料では、えび、カシューナッツ、かに、くるみ、小麦、そば、卵、乳、落花生(ピーナッツ)の9品目です。アーモンドなど20品目は、表示が推奨されています。パンや洋菓子では、小麦・卵・乳・くるみ・カシューナッツ・アーモンドなど、多くの品目が関わります。
包まずに売る商品には表示の義務がかかりませんが、消費者庁の資料は、対面販売や量り売りでも、事業者が規模や業態に応じて自主的にアレルゲンの情報を伝える取り組みを進める考えを示しています。値札やカードに使っている特定原材料を小さく書いておくと、お客様が店員に聞く手間が減ります。
ただし、同じ作業台や型で別の商品を作る店では、「卵を使っていません」と言い切れるかを慎重に確かめます。言い切れないときは、使っている原材料を示すにとどめ、詳しくは店員に聞いてもらう形にします。品目は見直しが続いているので、表示を作るときは消費者庁の案内で確かめてください。
開業前のチェックリスト
- ロゴに、1色の版と小さなシール用の版がある
- 紙袋やシールの実物大で、ロゴが読めるかを確かめた
- 袋・箱・シールの種類を絞り、最初の数を決めた
- 値札を税込の総額で書き、価格だけを差し替えられる形にした
- イートインの席があるなら、値札の示し方を決めた
- 商品ごとに、包まずに売るか、包んで並べるか、店の外でも売るかを分けた
- 包んで並べる商品のラベルの文案を、保健所に確かめた
- 店の外で売る商品は、一般の義務表示が入る大きさのラベルにした
- アレルゲンの伝え方を決めた
Lapisデザインラボでは、ロゴと名刺から、販促物、ウェブページまでを同じ見た目でそろえるプランを用意しています。内容はサービスと料金をご覧ください。
よくある質問
店で焼いたパンを、包まずに並べて売るときも食品表示は要りますか。
食品表示基準の義務表示は、容器包装に入れられた加工食品を販売するときにかかります。消費者庁の資料では、店頭で量り売りする加工食品を、持ち帰りのために販売のたびに袋や箱に入れる場合や、混雑を見込んでその日の販売数に限って包装しておく場合は、表示の対象外とみなすとされています。ただし、要冷蔵のものは販売のときにその旨を正確に伝える必要があり、扱いに迷うときは保健所に確かめてください。
焼き菓子を袋に入れて店頭に並べる場合は、何を表示しますか。
消費者庁のQ&Aでは、パン店や洋菓子店が同じ施設の中で作って売る場合は「食品を製造し、又は加工した場所で販売する場合」に当たり、食品表示基準第5条により、原材料名、内容量、栄養成分の量と熱量、食品関連事業者の氏名と住所、原料原産地名などの表示が要らないとされています。名称、保存の方法、期限、添加物、アレルゲン、製造所の所在地と製造者などはこの省略の対象に挙がっていないので、文案は保健所に確かめてから作ります。
パン屋のロゴは、どんな版を用意すればよいですか。
持ち帰りの店では、紙袋の1色刷り、シール、スタンプ、値札など、ロゴを小さく単色で使う場面が多くなります。横長と縦長の版に加えて、1色で刷っても形が分かる版と、小さなシールでもつぶれないマークだけの版を用意しておくと、包装や値札にそのまま使えます。