印刷の入稿データで失敗しないために|塗り足し・解像度・フォントの確認
ネット印刷に自分でデータを入稿すると、費用はぐっと抑えられます。その代わり、データの不備は自分の責任になります。刷り上がったチラシの端に白い線が出ている、写真がぼやけている、文字が別の書体になっている。どれも、入稿前の確認で防げる失敗です。
この記事では、入稿データで起きやすい失敗を項目ごとに説明し、最後に入稿前のチェックリストにまとめます。数値の目安は大手のネット印刷の公開している入稿ガイドをもとにしていますが、細かな条件は印刷会社ごとに違います。最終的には、入稿する印刷会社のガイドとテンプレートに従ってください。
まず、印刷会社のテンプレートを使う
失敗を減らす一番の近道は、印刷会社が配っているテンプレートの上でデータを作ることです。大手のネット印刷のテンプレートには、次の3本のガイド線が入っています。
| 線 | 意味 | この線に対してすること |
|---|---|---|
| 塗り足し線 | 断裁で切り落とされる部分の外側の端 | 背景の色や写真はここまで伸ばす |
| 仕上がり線 | 断裁されて残る紙の端 | 刷り上がりの大きさ |
| 印刷保証線(安全線) | 断裁のずれで切れない内側の範囲 | 文字やロゴはこの内側に置く |
大きさを自分で設定して作ると、塗り足しが足りない、仕上がりの寸法がずれている、といった失敗が起きやすくなります。紙の大きさの規格(A列・B列)は、日本では JIS P 0138「紙加工仕上寸法」で定められており、印刷会社のテンプレートもこれに沿って作られています。
塗り足しとは:紙の端の白い線を防ぐ
印刷物は、大きな紙に刷ってから所定の大きさに断裁します。刃の重みなどで、断裁の位置はわずかにずれることがあります。背景の色を仕上がりの線ぴったりで止めていると、ずれた分だけ紙の端に白い線が出ます。
これを防ぐのが塗り足しです。背景の色や写真を、仕上がりの線より外側まで伸ばしておきます。ラクスルの入稿ガイドでは、紙の端まで印刷したい場合は仕上がり位置の外側に3mmの塗り足しを作り、切れては困る文字やデザインは仕上がり位置より3mm以上内側に置くよう案内されています。
よくある失敗は次のとおりです。
- 背景は伸ばしたが、写真だけ仕上がりの線で止めていた
- 枠線を紙の端ぎりぎりに置き、断裁のずれで幅が不ぞろいになった
- 電話番号やロゴを端に寄せすぎて、一部が切れた
画像の解像度:350ppi が目安
写真やイラストの画像は、細かい点の集まりです。その点の細かさを表すのが解像度で、1インチあたりの点の数(ppi や dpi)で表します。ラクスルのガイドでは、印刷に適した解像度は原寸(拡大縮小しない100%の大きさ)で350〜400ppiとされ、画面向けの例として72ppi が挙げられています。
注意したいのは「原寸で」という点です。350ppi の画像でも、データの上で2倍に拡大して配置すれば、実際の解像度は半分になります。
| よくある状態 | 起きること | 対処 |
|---|---|---|
| ホームページから保存した画像を使った | 粗く、ぼやけて刷り上がる | 元の大きな画像を手に入れる |
| スマートフォンの写真を大きく引き伸ばした | 輪郭がにじむ | 使う大きさを小さくするか、撮り直す |
| 小さな画像の解像度の数字だけを350に書き換えた | 見た目は良くならない | 画素の数そのものが足りているかを見る |
| ロゴを画像で貼った | 輪郭がぎざぎざになる | ベクター形式のロゴを使う(ロゴのデータ形式) |
アウトライン化とは:書体の置き換わりを防ぐ
データの中の文字は、書体のファイルを使って表示されています。印刷会社のパソコンに同じ書体が入っていないと、文字が別の書体に置き換わったり、崩れたりします。
これを防ぐのがアウトライン化で、文字を図形に変換する作業です。変換すると、どの環境で開いても同じ形で表示されます。PDF で入稿する場合は、書体を埋め込んだ PDF を求める印刷会社もあります。どちらの形を求めているかは、印刷会社のガイドで確かめます。
アウトライン化したデータは、文字の修正ができません。変換前のデータを別の名前で必ず保存しておくのが鉄則です。また、使っている書体が印刷物への利用を許しているかも確かめておきます(フォントのライセンスで注意すること)。
色の設定:CMYK で作る
一般的な印刷は、シアン・マゼンタ・イエロー・ブラックの4色のインキ(CMYK)で色を表します。画面の色(RGB)で作ったデータは、印刷用に変換されるときに色がくすむことがあります。とくに鮮やかな青や緑、蛍光色のような色は、画面と同じには出ません。
- データは最初から CMYK で作る
- 写真も CMYK に変換して、色の変化を画面で確かめておく
- 黒い文字は、4色を重ねた黒ではなく、ブラック1色の黒にする(細い文字が4色の重なりのずれでにじむのを防ぐ)
- ロゴの色は、決められた CMYK の値を使う
細い線と小さな文字
画面では見えていても、印刷するとかすれるものがあります。ラクスルの名刺のガイドでは、文字の大きさは6pt 以上、線の太さは0.3pt(0.1mm)以上で作るよう案内されています。
- 名刺の住所やメールアドレスを小さくしすぎない
- 薄い色の細い線や、白抜きの細い文字は、さらにかすれやすい
- 地図の細い道路の線は太めに描き直す
入稿前のチェックリスト
入稿の直前に、次の項目を一つずつ確かめます。
- 印刷会社のテンプレートで作ったか。仕上がりの大きさは正しいか
- 背景の色や写真は、塗り足し線まで伸ばしてあるか
- 文字やロゴは、印刷保証線(仕上がりから3mm程度)の内側にあるか
- 画像は原寸で350ppi 程度あるか。拡大して配置していないか
- 文字はアウトライン化したか(または書体を埋め込んだ PDF か)。変換前のデータを残したか
- データの色は CMYK か。黒い文字はブラック1色か
- 文字は小さすぎないか。線は細すぎないか
- 電話番号・住所・日付・金額の誤りは無いか(複数の人で読み合わせる)
- 両面の場合、表と裏の向きは合っているか
- 折る印刷物の場合、面の順番と折り方の指定は正しいか(三つ折りパンフレットの作り方)
- 不要な下書きの図形や、隠したレイヤーが残っていないか
- ファイルの形式と名前は、印刷会社の指定どおりか
とくに8番は、データの形式よりも大きな損失につながります。刷り直しになるのは、ほとんどが内容の誤りです。印刷会社のデータチェックは形式の確認であって、中身の正しさまでは見てくれません。
入稿後の確認
入稿したあとも、確認の機会があります。
- 印刷会社のデータチェックの結果の連絡を見落とさない
- 仕上がりの画面の見本(プレビュー)が出る場合は、端の切れと文字の置き換わりを確かめる
- 部数の多いものや色が大事なものは、本番の前に試し刷りを頼むことも考える
ネット印刷と印刷会社の使い分けはネット印刷と印刷会社の使い分けで説明しています。Lapisデザインラボでは、印刷会社にそのまま入稿できるデータをお渡しし、印刷の手配もオプションでお引き受けしています(サービスと料金)。
よくある質問
塗り足しとは何ですか。何ミリ必要ですか。
紙の端まで色や写真を印刷するときに、仕上がりの線より外側まで絵柄をはみ出させておく部分のことです。断裁のわずかなずれで紙の端に白い線が出るのを防ぎます。大手のネット印刷の入稿ガイドでは、仕上がり位置の外側に3mmの塗り足しを作るよう案内されています。必要な幅は印刷会社の指定に従ってください。
印刷に使う画像の解像度はどれくらい必要ですか。
大手のネット印刷の入稿ガイドでは、原寸(実際に印刷する大きさ)で350〜400ppiが適しているとされています。ホームページから保存した画像は、多くが画面向けの解像度で作られており、印刷すると粗く見えることがあります。
アウトライン化とは何ですか。
文字のデータを図形に変換することです。印刷会社のパソコンに同じ書体が入っていなくても、文字の形が崩れたり別の書体に置き換わったりしなくなります。変換すると文字の修正ができなくなるので、変換前のデータも必ず残しておきます。