社名に似たドメインを取られたとき|よく似た URL の偽サイトへの備え
自社のドメインとよく似たURLを他人が持っている、取引先から「御社のサイトにしては様子がおかしい」と連絡が来た。こうした「類似ドメイン」の問題は、気づいたときにはすでに使われてしまっている場合もあり、予防と早期発見が対応の中心になります。
この記事では、自社のドメインに似たURLを先に押さえておく考え方、すでに似たドメインが使われているのを見つけたときの対応の順番、そしてJP-DRP・UDRPという紛争処理の仕組みをまとめます。ドメインそのものの名義の整え方はドメインの登録者を会社に変える、会社のドメインの取り方は会社のドメインの取り方で説明しています。
類似ドメインの典型的な形
自社のドメインに似せる方法には、いくつかの型があります。
| 型 | 例(自社ドメインが example.co.jp の場合) |
|---|---|
| ハイフンの有無・区切りの違い | example-corp.com |
| 文字の置き換え(紛らわしい文字) | examp1e.com(l を 1 に)、exarnple.com(m を rn に) |
| 綴りの間違いを狙う | exmaple.com、examle.com |
| 別のTLD(トップレベルドメイン) | 本来 .co.jp のところを .com や .net で取得 |
| ローマ字・カタカナ・英語表記の違い | 社名のローマ字表記違い(長音の有無など)でのドメイン取得 |
これらは、検索結果や名刺・メールのアドレスをうっかり見間違えることを狙ったものがあり、フィッシング(偽の問い合わせフォームやログイン画面でID・パスワードやカード情報を盗む手口)やなりすましメールの送信元として使われることがあります。
先に押さえておくドメインの優先順位
すべての組み合わせを取得するのは現実的ではないため、優先順位をつけて検討します。
| 優先度 | 対象 | 理由 |
|---|---|---|
| 高 | 自社が実際に使っているTLD以外の主要なTLD(.co.jpの会社なら.com・.netなど) | 検索や名刺で見間違えられることがある |
| 高 | ハイフンの有無違い | 社名にハイフンや中点があるとき、表記ゆれが起きやすい |
| 中 | よくある綴り間違い | 社名が英語・ローマ字で、間違えられやすい綴りがある場合 |
| 低〜中 | 旧社名・旧ブランド名のドメイン | 社名変更をした場合、旧名義での類似ドメインが悪用されることがある |
取得したドメインは、サイトを作らずに自社の正規ドメインへ転送するだけでも、見間違いによる被害を減らせます。
すでに似たドメインがないか調べる方法
- 自社の社名・ブランド名で、よくある表記ゆれを組み合わせてWhois検索やドメイン検索サービスで調べる
- 取引先や問い合わせ窓口に、不審なメールやサイトに心当たりがないか定期的に確認する
- 検索エンジンで社名を検索し、公式サイトのほかに似た名前のサイトが出てこないか、ときどき確認する
見つけたときの対応の順番
- 事実を記録する:似たドメインのスクリーンショット、表示されている内容、分かる範囲での運営者情報を残しておく
- 目的を見極める:単に第三者が偶然似た名前で別の事業をしているのか、自社になりすましている(ロゴや文章を真似る、フィッシングサイトになっている、高額での買い取りを持ちかけてくる等)のかを確認する
- なりすまし・フィッシングが疑われる場合は、通報する:サイトを置いているホスティング事業者や、ブラウザの安全対策窓口(Google セーフ ブラウジングの報告フォームなど)に通報する
- 取引先・顧客に注意喚起する:なりすましメールが出回っている場合は、正しい連絡先をあらためて案内する
- 不正の目的が強く疑われる場合は、紛争処理や法的手段を検討する:次の章のJP-DRP・UDRPや、弁護士への相談を検討する
第三者が偶然似た名前を使っているだけで、なりすましの意図が無さそうな場合は、無理に権利を主張せず、まずは状況の記録と注意喚起にとどめるのが現実的です。
JP-DRP・UDRPという紛争処理の仕組み
.jpドメイン名については、JPNIC(日本ネットワークインフォメーションセンター)が「JPドメイン名紛争処理方針(JP-DRP)」を定めています。権利者からの申立てに基づいて審理され、ドメイン名が不正の目的で登録・使用されていると認められると、そのドメイン名の取消しまたは移転が実現できる仕組みです。
.comなどのgTLDには、ICANNの認定レジストラが従う「UDRP(統一ドメイン名紛争処理方針)」があります。商標権者が申立人となり、サイバースクワッティング(他人の商標等に似せた不正な登録)のような濫用的な登録について、裁判よりも迅速な手続きで扱われます。申立てが認められた場合の救済は、ドメイン名の取消しか、申立人への移転に限られます。
不正競争防止法にも、不正の利益を得る目的や他人に損害を加える目的で、他人の氏名・商号・商標などと同一または類似のドメイン名を取得・保有・使用する行為を規制する規定があります。JP-DRP・UDRPの審理でも、「不正の目的」の有無が重要な判断要素になっています。実際に法的手段を取るかどうかは、ケースごとの事情によるため、弁護士など専門家に相談することをおすすめします。
押さえたドメインの運用で気をつけること
予防のために取得した類似ドメインは、放置すると逆にリスクになります。次の点に気をつけて運用します。
- 更新を切らさない:使っていないドメインほど更新を忘れがちです。自社の正規ドメインと同じ管理表に入れ、有効期限を一緒に管理する
- 転送先を正しく設定する:自社の正規サイトへ転送しておくと、見間違えて来たアクセスを取りこぼさずに済む
- 譲渡や売却の話には慎重に応じる:取得していない類似ドメインについて、第三者から「買い取ってほしい」という連絡が来ることがあります。相場より高い金額を提示された場合は、無理な相手取引の可能性も含めて慎重に検討します
- 社内の担当者を決めておく:類似ドメインの監視や更新を、特定の担当者任せにせず、引き継ぎ資料に残しておく
まとめ
- 類似ドメインには、ハイフンの有無・紛らわしい文字・綴り間違い・別TLD・表記違いなどの型がある
- 主要なTLD違いやハイフンの有無違いなど、見間違いが起きやすいものから優先して自社で押さえておくと、被害を減らしやすい
- 見つけたときは、事実の記録→目的の見極め→通報・注意喚起→必要に応じて紛争処理や法的手段、の順で対応する
- .jpドメインのJP-DRP、gTLDのUDRPは、いずれも不正の目的などの要件を満たした場合に、取消しや移転が認められる仕組み
ドメインまわりの管理体制の整え方に迷う場合は、運用・集客サポートでご相談いただけます。
よくある質問
社名に似たドメインを、先に全部取っておくべきですか。
すべての組み合わせを取る必要はありませんが、主力のTLD(.co.jpや.comなど)に加えて、使う可能性のある表記ゆれ(ハイフンの有無、よく間違えられる綴り)は、取得費用が小さいうちに押さえておくと安心です。優先順位の考え方は本文の表にまとめています。
似たドメインで偽サイトが見つかったら、まず何をすればよいですか。
まず画面の保存など事実の記録を行い、不正の目的(なりすまし・フィッシング・高額での買い取り要求など)がありそうかを見極めます。不正の目的が疑われる場合は、.jpドメインならJP-DRP、.comなどのgTLDならUDRPという紛争処理手続きや、弁護士への相談を検討します。
JP-DRPやUDRPを使うと、必ずドメインを取り戻せますか。
必ず移転されるわけではありません。JP-DRP・UDRPとも、商標など自社の表示と同一・類似であること、相手にそのドメインを使う正当な利益がないこと、不正の目的があることなど、複数の要件を満たしていると判断された場合に、取消しや移転が認められる仕組みです。