社名を英字のロゴにするとき|ローマ字の表記と読みやすさの決め方
日本語の社名や店名を英字のロゴにするとき、まず迷いやすいのが「どう綴るか」です。ローマ字の綴り方には歴史的にいくつかの方式があり、長音(のばす音)や撥音(はねる音)の書き方にも決まりごとがあります。さらに、個人名を含める場合は、姓と名をどちらを先に書くかという問題もついてきます。
この記事では、国が示しているローマ字の綴り方の考え方と、姓名の表記順についての政府の方針を確かめたうえで、ロゴとして読みやすく仕上げるための具体的な工夫を整理します。
綴り方の基準:国が示す「ローマ字のつづり方」
現代の国語をローマ字で書き表すときのよりどころとして、内閣告示で定められた「ローマ字のつづり方」があります。もともとは昭和29年の内閣告示でしたが、現在はこれを廃止し新たに定め直した内閣告示(令和7年12月22日内閣告示第四号)が、法令・公用文書・新聞・雑誌・放送など一般の社会生活での綴り方のよりどころとされています。
この告示の本表では、かつて「訓令式」「ヘボン式」と分けて示されていた綴りが一つの表にまとめられ、「し」は shi、「ち」は chi、「つ」は tsu、「ふ」は fu のように示されています。
告示の「添え書き」には、ロゴの表記を考えるうえで参考になる項目がいくつかあります。主なものを表にまとめます。
| 項目 | 内容 | 例 |
|---|---|---|
| 撥音「ん」 | n と書く | 新聞 shinbun |
| 促音「っ」 | 次の子音字を重ねる | 雑誌 zasshi |
| 長音 | 母音字の上に符号(ˉ。必要な場合は ^ でもよい)を付けるか、母音字を並べて書く | 東北 Tōhoku/Touhoku |
| 音の切れ目 | 撥音の n と次の母音・y を切り離すときなど、音の切れ目を示すときはアポストロフィを使う | 問屋 ton’ya |
| 複数の語の区切り | ハイフンを使ってよい | 田中さん Tanaka-san |
| 固有名詞 | 語頭を大文字で書く | — |
| 個人の姓名・団体名 | この告示を参考にしつつ、当事者の意思を尊重する | — |
とくに最後の項目は重要で、会社名や店名のローマ字表記は、この告示を「参考」にしながらも、当事者である会社・店の意思を尊重するよう配慮するものとされています。読みやすさや見た目のバランスを優先して、告示どおりの綴りから調整することも可能です。
姓と名、どちらを先に書くか
社名ではなく、代表者名や職人の名前をロゴに含める場合は、姓と名の順番も決める必要があります。政府は令和元年10月25日の関係府省庁申合せ「公用文等における日本人の姓名のローマ字表記について」で、各府省庁が作成する外国語のウェブサイトや文書などにおいて、日本人の姓名をローマ字表記する際は、原則として「姓-名」の順で表記することとしました。姓と名を明確に区別させたい場合は、姓をすべて大文字にする書き方(YAMADA Haruo)も示されています。
この申合せは、地方公共団体や民間に対しても同じ順番を使うよう配慮を求めるものですが、民間の会社やロゴの表記を法的に縛るものではありません。長く「名-姓」の順(Haruo Yamada)で通用してきた屋号や個人名もあり、どちらの順にするかは最終的に会社・店の判断になります。大切なのは、名刺・ホームページ・ロゴなど複数の媒体で表記をそろえることです。名刺における英語表記の考え方は英語の名刺の作り方|氏名・肩書き・住所の英語表記でまとめているので、ロゴと名刺の表記を決めるときはあわせて確認してください。
ロゴとして読みやすくするための工夫
告示の綴り方をそのまま当てはめると、文字として見たときに読みにくくなる場合があります。ロゴのデザインでは、次のような調整をすることがあります。
- 長音の符号は使わない:告示では母音字の上に符号を付ける書き方も認められていますが、ロゴの書体によっては符号が潰れて読みにくくなります。母音字を並べて書く方法(Tōhoku ではなく Touhoku、または単に Tohoku と符号を省く)のほうが、看板やロゴでは扱いやすいことがあります
- アポストロフィの要否を確認する:「ton’ya」のような区切りの記号は、ロゴタイプの書体によっては装飾のように見えてしまうことがあります。読み違いが起きにくい語であれば、省く判断もできます
- ハイフンで複合語を区切る:複数の言葉からなる社名は、ハイフンでつなぐと区切りが伝わりやすくなります
- 全部大文字にするか、頭文字だけ大文字にするか:ロゴタイプは全部大文字(デザインとして)にすることもあり、その場合は姓と名の区別を大文字でつける必要が薄れます。ロゴと名刺・公式文書で表記のルールが変わる場合は、使い分けを決めておきます
ロゴの文字そのものの種類(シンボルマークと組み合わせるか、文字だけで構成するか)については、ロゴの種類|シンボルマーク・ロゴタイプ・エンブレムの違いで整理しています。英字のロゴタイプを検討する際の参考にしてください。
表記を決めるときのチェックリスト
英字のロゴを作る前に、次の項目を決めておくと、制作の打ち合わせがスムーズに進みます。
- 社名・店名のどの部分をローマ字にするか(全部か、一部だけか)
- 長音・促音・撥音の綴りをどう書くか(符号を使うか、母音を並べるか)
- 代表者名や職人名を含める場合、姓・名の順番をどうするか
- 名刺・ホームページ・看板など、他の媒体の表記とそろっているか
- すでに使っているローマ字表記(ドメイン名、登記上の英語表記など)と矛盾しないか
- 海外の取引先が読んだときに、発音のイメージが大きく変わらないか
とくに、すでにドメイン名や法人の英語表記がある場合は、ロゴだけ違う綴りにすると、検索や問い合わせの場面で混乱のもとになります。ロゴを作る前に、既存の表記を一度洗い出しておくことをおすすめします。
まとめ
- ローマ字の綴り方は、内閣告示「ローマ字のつづり方」が社会生活でのよりどころとされている
- 告示は、個人名・団体名については告示を参考にしつつ当事者の意思を尊重するとしており、ロゴの表記は会社・店の判断で調整できる
- 姓名を含める場合、政府は公用文で「姓-名」の順を原則としているが、民間を法的に縛るものではなく、他の媒体との統一が優先される
- 長音の符号やアポストロフィは、ロゴの書体の読みやすさに応じて省く判断もできる
- 名刺・ホームページ・既存のドメイン名など、他の表記とそろえておくことが大切
Lapisデザインラボでは、英字のロゴタイプの表記の検討から、名刺やホームページとの表記のすり合わせまであわせて進めています。内容はサービスと料金をご覧ください。
よくある質問
ロゴの英字表記は、ヘボン式・訓令式のどちらで作ればよいですか。
令和7年12月22日の内閣告示「ローマ字のつづり方」により、以前は訓令式・ヘボン式に分かれていた綴りが一つの表にまとめられ、「し」shi、「ち」chi、「つ」tsu、「ふ」fu のように示されています。告示は各種専門分野や個々人の表記にまで及ぼそうとするものではないとし、個人の姓名や団体名等は告示を参考にしつつ当事者の意思を尊重するよう配慮するとしています。ロゴの綴りも、この表を参考に決めておくと無難です。
社名や代表者名は、必ず「姓-名」の順で書かないといけませんか。
政府は令和元年の関係府省庁申合せで、公用文における日本人の姓名のローマ字表記を原則「姓-名」の順としていますが、これは各府省庁の文書や、地方公共団体・民間への配慮の要請であり、民間のロゴや名刺の表記を法的に縛るものではありません。他の媒体との統一を優先して決めてください。
長音(のばす音)はロゴでどう書けばよいですか。
内閣告示では、母音字の上に符号を付ける書き方(Tōhoku)と、母音字を並べて書く書き方(Touhoku)の両方が認められています。符号はロゴの書体によって潰れて読みにくくなることがあるため、看板やロゴでは母音を並べる書き方のほうが扱いやすい場合があります。