会計事務所「潮見」のブランドづくり|堅実さと先を読む姿勢を形にする

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この記事で取り上げる会計事務所「潮見(しおみ)」は、実在しない架空の事務所です。Lapisデザインラボが、士業の事務所のブランドを作る流れを示すために自主制作しました。できあがったロゴ・名刺・ウェブページと、決めた色と書体の一覧は制作事例「潮見」の詳細ページに載せています。

ここでは、その一覧を繰り返すのではなく、なぜそう決めたのか、同じ判断を自分の事務所でするときに何を考えればよいのかを説明します。税理士や会計事務所だけでなく、社労士、行政書士、司法書士など、事務所の見た目を見直したい士業の方が、自分の事務所に置き換えて読めるように書いています。

想定した事務所と、最初に言葉にしたこと

想定したのは、中小企業を主なお客様とする会計事務所です。記帳や決算、申告を正確にこなすのは当然として、その数字をもとに、社長と一緒に次の一手を考えることを仕事の中心に置いている事務所、という設定にしました。

デザインに入る前に、次のことを言葉にしました。

  • 主なお客様:中小企業の社長
  • お客様にとって何をする事務所か:決算の数字を、次の一手に変える
  • 事務所の雰囲気を3つの言葉で:堅実、明快、先を読む
  • ほかの事務所との違い:数字を出して終わりではなく、その先の相談まで

最後の「違い」が、この事務所のブランドの核です。見た目の案で迷ったときは、「数字を出すだけの事務所に見えないか」と問い直しました。

課題:信頼感を出そうとするほど似てしまう

士業の見た目には、ある種の定番があります。紺色、明朝体、天秤やペン、あるいは事務所名の文字だけを落ち着いて並べたロゴ。どれも信頼感を出すための正しい選択ですが、同じ地域の事務所が同じ選択をするため、並べると見分けがつきにくくなります。

もう一つの課題は、事務所名に所長の名字を使うことが多い点です。名字だけの事務所名は、個人の信頼で選ばれる強みがある一方、名前だけでは印象が残りにくくなります。

そこで、信頼感は整った見た目で守りつつ、違いを見た目で示すことを方針にしました。

事務所名と仕事の姿勢を重ねて印を起こす

「潮見」という名前から、潮の満ち引きを表す波の形を印にしました。潮位のグラフのような波形に、会計の数字も波のように動くもので、その先を読むのが仕事だ、という意味を重ねています。

この考え方の良い点は、次のとおりです。

  • 事務所名と印が結びつくので、覚えてもらいやすい
  • 天秤やペンのような定番の図を使わないので、ほかの事務所と重なりにくい
  • 事務所の仕事の姿勢(先を読む)が、形に込められている
  • グラフを思わせる形なので、数字を扱う仕事であることも自然に伝わる

名字の事務所名で意味から形を起こしにくい場合は、事務所が大切にしている仕事の姿勢や、地域の特徴から考える方法もあります。

自分の事務所で考えるときの問い

  • 事務所名に、どんな意味や由来があるか
  • お客様にとって、自分の事務所は何をする存在か
  • その姿勢を、定番の図を使わずに形にできるか

落ち着いた色に、一点だけ強調を置く

色は、堅実さを表す落ち着いた色を主にし、現在の数字を表す明るい色を添え、「先を読む」姿勢を表す強調の色を、印の右上の小さな丸に一点だけ置きました(ほかは、ロゴを置いた面の下の帯の端に細く添えるだけです)。色の値は詳細ページに載せています。

強調の色を一点に絞ったのは、全体の落ち着きを崩さないためです。士業の見た目で色を増やすと、親しみは出ても、軽く見えるおそれがあります。一点だけなら、落ち着きを保ったまま、その一点に目が集まり、事務所の姿勢を印象に残せます。

自分の事務所で考えるときの問い

  • 主な色は、事務所の雰囲気の言葉に合っているか
  • ほかの事務所と違いを出す差し色を、一つだけ選べるか
  • その差し色を、どこに、どれだけ使うか

言い切る書体を選ぶ

見出しには、明朝体ではなく、太めの角ゴシック体を選びました。明朝体で品よくまとめる選び方もありますが、この事務所は「決算の数字を、次の一手に変える」と言い切る事務所です。その主張を弱めないよう、はっきりと言い切る字面を選びました。

書体は、事務所の話し方を表します。控えめで丁寧な事務所なら明朝体、明快に提案する事務所ならゴシック体、というように、事務所がお客様にどう話しかけたいかで選びます。

名刺の端の色で見分けてもらう

名刺の左端に、色の帯を入れました。取引先の社長の名刺入れの中で、たくさんの名刺と重なった状態でも、端の色だけでこの事務所の名刺だと分かるようにするためです。

士業の名刺は、似た色と似た書体のものが多く、名刺入れの中で埋もれがちです。名刺を受け取った後、どんな場面で見返されるかを考えて、見分けてもらう工夫を一つ入れると、覚えてもらいやすくなります。名刺の作り方は名刺デザインで決めることで説明しています。

ウェブページで最初に見せるもの

ウェブページのトップでは、事務所の名前や所長の経歴より先に、「決算の数字を、次の一手に変える」という事務所の姿勢を、大きな言葉で見せる構成を想定しました。会計事務所を探している社長は、どこも記帳と申告はできるだろうと思っています。知りたいのは、自分の会社にとって、その事務所が何をしてくれるかです。

そのため、トップの最初の画面では、次の3つだけに絞りました。

  • 事務所の姿勢を表す一文(決算の数字を、次の一手に変える)
  • どんな相談に乗るか(月次の数字をもとに、資金繰りと投資の判断まで)
  • 毎月どう付き合うか(月次レポートは毎月10日、オンライン面談は月1回)

見本はトップの上半分までなので描いていませんが、実際のサイトでは、この3つのすぐ下に相談の申し込みの入口を置きます。

所長の経歴や料金、事務所の案内は、その下や別のページで詳しく見てもらいます。最初の画面に情報を詰め込みすぎると、事務所の姿勢が埋もれてしまいます。

判断の分かれ目

分かれ目この例で選んだ道別の道が合う事務所
印の元にするもの事務所名の意味と仕事の姿勢名字の事務所名で、個人の信頼を前に出したい事務所は、文字だけのロゴも
色落ち着いた色に一点の強調相続や家族の相談が多い事務所は、温かみのある色を添える
書体言い切る角ゴシック控えめで丁寧な印象を大切にする事務所は明朝体
名刺の工夫端の色の帯手触りで印象を残したい事務所は、紙や加工で

実際の依頼で加わるもの

この自主制作では、ロゴ、名刺、ウェブページのトップの上半分までを作りました。実際の事務所では、ここに封筒、報告書の表紙、料金表、請求書や見積書のひな形、セミナーの資料などが加わります。士業の事務所は書類が多いので、ひな形まで同じ見た目で揃えると、お客様が受け取るすべての書類で事務所の印象が揃います。

士業の事務所のロゴと名刺の考え方は士業事務所のロゴと名刺で、税理士・会計事務所のホームページの作り方は税理士・会計事務所のホームページで説明しています。

士業のブランドづくりで大切なこと

  1. お客様にとって何をする事務所かを言葉にする:正確さか、相談の相手か
  2. 信頼感と違いを分けて考える:信頼感は整った見た目で、違いは事務所だけの手がかりで
  3. 受け取られた後の場面を想像する:名刺入れの中、書類の束の中で、どう見分けてもらうか

できあがったロゴ・名刺・ウェブページは、制作事例「潮見」の詳細ページで見られます。Lapisデザインラボのブランドづくりのプランの内容と料金はサービスと料金に、ほかの制作事例は制作事例に載せています。

よくある質問

税理士・会計事務所のロゴは、どう作ればほかの事務所と違いが出ますか。

紺色と明朝体、天秤やペンの図のような、士業らしさを表す定番の組み合わせは信頼感を出しやすい一方、どの事務所も似た見た目になります。この記事の例では、事務所名の意味と、事務所が大切にしている仕事の姿勢を重ねて印を起こし、色は落ち着いたものを主にしながら一点だけ強調の色を置きました。信頼感は整った見た目で守り、違いは事務所だけの手がかりで出す、という分け方です。

士業のブランドづくりは、何から始めればよいですか。

お客様にとって、自分の事務所が何をしてくれる存在なのかを言葉にするところから始めます。記帳や申告を正確にこなすことか、数字をもとに経営の相談に乗ることか。その言葉が、ロゴの形や色、ホームページの言葉を選ぶときの物差しになります。

この「潮見」は実在する事務所ですか。

実在しません。Lapisデザインラボが、士業のブランドづくりの進め方を示すために作った架空の会計事務所です。実在する事務所や人物とは関係がありません。

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